過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアトラシアンへの投資についてコメントします。
会社概要
アトラシアン(Atlassian、TEAM)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:オーストラリア(MSCI:アメリカ)
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:アプリケーション・ソフトウェア
株式時価総額:642億ドル(2021年6月末)
アトラシアンは、オーストラリアに本拠を置く、チームによる作業を効率的にするため、Jira Software(プロジェクト管理)やConfluence(情報共有)、Trello(タスク管理)など、主にソフトウェア開発者支援のためのソフトウェアを、サブスクリプション形態を中心にクラウド上で提供する企業です。
売上高(セグメント別)の推移
FY2021(2020年7月-2021年6月期)の売上高は20.9億ドルと、前年度比+29.4%、過去5年間で年率+35.5%となりました。
2022Q1(2021年7−9月期)の売上高は6.1億ドル(前年同期比+33.6%)と、コンセンサス(5.9億ドル)を上回りました。

2022Q1の1株あたり売上高は前年同期比+31.5%、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は40.2倍となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サブスクリプション:4.4億ドル、前年同期比+57%
・メンテナンス:1.3億ドル、前年同期比+2%
・その他:0.5億ドル、前年同期比+52%
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプションが71%を占め、ライセンスからの切り替えが進みました。

顧客数は21.7万件(前年同期比+18%)となりました。

利益の推移
FY2021の非IFRS 営業利益は5.2億ドルと、前年度比+40.3%、過去5年間で年率+46.4%となりました。
非IFRS 営業利益率は24.8%と、前年度の22.9%から改善しました。
2022Q1の非IFRS 営業利益は1.7億ドル(前年同期比+58.1%)となりました。

FY2021の非IFRS EPSは1.40ドルと、前年度比+21.7%、過去5年間で年率+32.0%となりました。
2022Q1のEPSは▲1.59ドルと、コンセンサス(0.02ドル)を下回りました。
非IFRS EPSは0.46ドル(前年同期比+53.3%)と、コンセンサス(0.40ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは8.4億ドルと、前年度比+46.5%、過去5年間で年率+45.4%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は40.3%と、前年度の35.6%から改善しました。
2022Q1の営業キャッシュフローは0.8億ドル(前年同期比▲1.4%)となりました。

FY2021のフリーキャッシュフローは8.1億ドルと、前年度比+50.0%、過去5年間で年率+53.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は38.7%と、前年度の33.4%から改善しました。
2022Q1のフリーキャッシュフローは0.7億ドル(前年同期比▲0.2%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+5.2%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、12勝です。
非IFRS EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去12半期中、12勝です。
売上高(ドル) | 非IFRS EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 3.0 | 2.9 | ○ | 0.25 | 0.21 | ○ |
2019Q3 | 3.1 | 3.0 | ○ | 0.21 | 0.18 | ○ |
2019Q4 | 3.3 | 3.3 | ○ | 0.20 | 0.16 | ○ |
2020Q1 | 3.6 | 3.5 | ○ | 0.28 | 0.24 | ○ |
2020Q2 | 4.1 | 3.9 | ○ | 0.37 | 0.27 | ○ |
2020Q3 | 4.1 | 4.0 | ○ | 0.25 | 0.21 | ○ |
2020Q4 | 4.3 | 4.1 | ○ | 0.25 | 0.21 | ○ |
2021Q1 | 4.6 | 4.4 | ○ | 0.30 | 0.27 | ○ |
2021Q2 | 5.0 | 4.7 | ○ | 0.37 | 0.32 | ○ |
2021Q3 | 5.7 | 5.3 | ○ | 0.48 | 0.29 | ○ |
2021Q4 | 5.6 | 5.3 | ○ | 0.24 | 0.18 | ○ |
2022Q1 | 6.1 | 5.9 | ○ | 0.46 | 0.40 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+42.5%と、S&P500(+38.6%)を上回りました。
過去5年間(2016年7月から2021年6月末)の株価上昇率は年率+58.2%と、S&P500(年率+15.4%)を大きく上回りました。
2022Q1の株価上昇率は+52.4%と、S&P500(+0.2%)を上回りました。

競合他社(アプリケーション・ソフトウェア)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
アトラシアン(TEAM)の株価上昇率は、2020年の1年間で+94%と、12社平均(+119%)を下回りました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+414%と、9社平均(+393%)を上回りました。

2015年12月から2021年11月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から10%、もしくは20%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
綺麗な上昇トレンドです。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目〜6年目+25%、7年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目〜5年目+30%、6年目〜10年目+25%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+20%、6年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は399ドルとなります。
・メインシナリオ:399ドル
・アップサイドシナリオ:533ドル
・ダウンサイドシナリオ:221ドル
アトラシアン(Atlassian、TEAM)への投資について
2022Q1(2021年7−9月期)の売上高は6.1億ドル(コンセンサス5.9億ドル)、非GAAP EPSは0.46ドル(コンセンサス0.40ドル)と、これまで通り、コンセンサスを上回る実績となりました。
2022Q2のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:6.30〜6.45億ドル(コンセンサス6.21億ドル)
・非GAAP EPS:0.35〜0.38ドル(コンセンサス0.44ドル)
DCF法による目標株価は399ドルのため、2021年11月末時点の株価376ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が7.3倍(年率+22%)、フリーキャッシュフローマージンが10年後に向けて50%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンが増加すればより高い株価上昇が期待できます。
ハイパーグロース株としては安定感があります。











