過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とSAPへの投資についてコメントします。
会社概要
SAP(SAP、SAP.DE、SAP)
ホームページ(IR):リンク先
国:ドイツ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:アプリケーション・ソフトウェア
株式時価総額:1,565億ドル(世界ランキング第73位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:1,370億ドル(2020年12月末、MSCI)
SAPは、ドイツに本拠を置くERP(Enterprise Resource Planning、基幹業務)最大手の企業です。
EPRとは、企業のあらゆるデータをリアルタイムに一元化することで、部署間や業務間の認識のズレをなくし、会社の経営資源の最適化計画を支援します。
(参考)競合他社(情報処理・外注サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アドビ(ADBE) | 2,799 |
セールスフォース(CRM) | 2,262 |
SAP(SAP) | 1,657 |
イントゥイット(INTU) | 1,339 |
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM) | 1,140 |
アトラシアン(TEAM) | 642 |
オートデスク(ADSK) | 642 |
ダッソー・システムズ(DSY.PA) | 636 |
ワークデイ(WDAY) | 590 |
ドキュサイン(DOCU) | 545 |
パランティアテクノロジーズ(PLTR) | 495 |
シノプシス(SNPS) | 421 |
ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS) | 381 |
トレードデスク(TTD) | 368 |
コンステレーション・ソフトウェア(CSU.TO) | 321 |
データドッグ(DDOG) | 321 |
ユニティ・ソフトウェア(U) | 307 |
アンシス(ANSS) | 302 |
ハブスポット(HUBS) | 272 |
リングセントラル(RNG) | 264 |
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は273億ユーロと、前年度比▲0.8%、過去5年間で年率+5.6%となりました。

2021Q1(2021年1−3月期)の売上高は63.5億ユーロ(前年同期比▲2.7%)と、コンセンサス(63.0億ユーロ)を上回りました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・クラウド:21億ユーロ、前年同期比+7%
・ソフトウェアサポート:28億ユーロ、前年同期比▲5%
・ソフトウェアライセンス:5億ユーロ、前年同期比+7%
・サービス:9億ユーロ、前年同期比▲18%

予測可能性の高い売上高(クラウド+ソフトウェアサポート)は49.5億ユーロと、全体の78%を占めます。

クラウド受注残は76.3億ユーロと、前年同月比+15%となりました。

地域別の売上高構成比は、欧州/中東/アフリカが44%、アメリカ大陸が41%、アジアパシフィックが15%を占めます。

利益の推移
2021Q1の非IFRS 営業利益は17億ユーロ(前年同期比+17.5%)、営業利益率は27.4%と、前年同期の22.7%から改善しました。

FY2020の非IFRS EPSは5.41ユーロと、前年度比+5.9%、過去3年間で年率+6.9%となりました。

2021Q1のEPSは0.88ユーロと、コンセンサス(0.64ユーロ)を上回りました。
非IFRS EPSは1.40ユーロと、コンセンサス(0.86ユーロ)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは72億ユーロと、前年度比+105.7%、過去5年間で年率+14.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は26.3%と、前年度の12.7%から改善しました。

2021Q1の営業キャッシュフローは31億ユーロ(前年同期比+3.4%)となりました。

FY2020のフリーキャッシュフローは64億ドルと、前年度比+138.0%、過去5年間で年率+16.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は23.3%と、前年度の9.7%から改善しました。

2021Q1のフリーキャッシュフローは29億ユーロ(前年度比+10.6%)となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去7四半期中、3勝、4敗です。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去7四半期中、4勝、3敗です。

以下のグラフは、非IFRS EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去7四半期中、6勝、1敗です。

株価上昇率
過去1年間(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+1.6%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの株価上昇率+54.9%を大きく下回りました。

競合他社(アプリケーション・ソフトウェア)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
SAP(SAP、ADRドル建て)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲3%と、12社平均(+119%)を下回りました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+16%と、9社平均(+393%)を下回りました。

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
2020年10月に大きなドローダウンが発生したのでネガティブな決算発表によるもので、それ以外だと最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあります。

(参考)過去5年間の株価上昇率(会計年度ベース)
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+7.9%と、VT ETF(年率+9.9%)を下回りました。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.4%、金利が1%上昇した場合は6.3%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+12%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は138ユーロとなります。

SAP(SAP、SAP.DE、SAP)への投資について
2021Q1(2021年1−3月期)の売上高は63.5億ユーロ(コンセンサス63.0億ユーロ)非IFRS EPSは1.40ユーロ(コンセンサス0.86ユーロ)と、コンセンサスを上回りました。
FY2021のガイダンス(非IFRS)は、以下の通りです。
・クラウド売上高:92〜95億ユーロ
・クラウド&ソフトウェア売上高:234〜238億ユーロ
・営業利益:78〜82億ユーロ
・フリーキャッシュフロー:45億ユーロ超
DCF法による目標株価は138ユーロのため、2021年3月末時点の株価104ユーロより高い水準です。
優れたITセクター企業(半導体・半導体製造装置除く)はアメリカに偏っているため、地域分散の観点でメリットがあります。











