過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と三菱UFJフィナンシャル・グループへの投資についてコメントします。
会社概要
三菱UFJフィナンシャル・グループ(Mitsubishi UFJ Financial Group Inc.、8306.T)
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国:日本
セクター:金融
産業グループ:銀行
サブ産業グループ:都市銀行
株式時価総額:6.2兆円(日本ランキング第18位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:646億ドル(2021年4月末、MSCI)
三菱UFJフィナンシャル・グループは、日本に本拠を置く、商業銀行(三菱UFJ銀行)、信託銀行(三菱UFJ信託銀行)、証券会社(三菱UFJ証券ホールディングス)、カード会社(ニコス)、消費者金融(アコム)等の企業を傘下に持つ持株会社です。
2008年にモルガン・スタンレー(アメリカ)の発行済株式の約23%を取得し、持分法適用会社となっています。

都市銀行に占める三菱UFJフィナンシャル・グループの浮動株調整後株式時価総額比率は2%です。

業務粗利益の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の業務粗利益は3兆9,979億円と、前年度比+0.3%、過去5年間で年率▲0.7%となりました。

2021年3月末の融資額は108兆円(前年度末比▲2%)、預金は212兆円(前年度末比+13%)となりました。

融資額のうち、住宅ローンは15兆円(前年度末比+1%)、国内法人貸出は48兆円(前年度末比+8%)、海外貸出は39兆円(前年度末比▲11%)となりました。

2021年3月末の国内預貸金利回りは0.75%、銀行/信託の海外預貸金利回りが1.01%、米州MUFGの純金利収益率は1.98%、アユタヤの純金利収益率は3.14%、バンクダナモンの純金利収益率は7.2%となりました。

2021年3月末の有価証券は77兆円(前年度末比+18%)、うち国内株式が6兆円(前年度末比+21%)、国債が33兆円(前年度末比+54%)、外国債券が22兆円(前年度末比▲14%)となりました。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業費は2兆7,494億円(前年度比▲1.9%)、経費率は68.7%(中長期の経費率目標60%)となりました。

FY2020の与信関連費用は5,155億円、うち銀行と信託は2,232億円となりました。

FY2020の純利益は7,770億円と、前年度比+47.1%、過去5年間で年率▲4%となりました。

セグメント別の営業純益は、以下の通りです。
・国内の個人/中堅・中小企業向け:2,590億円、前年度比▲13%
・日系大企業向け:2,406億円、前年度比+2%
・非日系大企業向け:1,565億円、前年度比+21%
・海外の個人/中堅・中小企業向け:2,742億円、前年度比+18%
・資産運用/管理:834億円、前年度比+17%
・市場:4,008億円、前年度比+17%

セグメント別の営業純益構成比は、市場が28%、海外の個人/中堅・中小企業向けが19%、国内の個人/中堅・中小企業向けが18%を占めます。

会社別の純利益は、以下の通りです。
(FY2019は株式減損、のれん一括償却除く)
・銀行:1,445億円、前年度比▲46%
・信託:964億円、前年度比▲15%
・証券:393億円、前年度比+86%
・ニコス:50億円、前年度比▲92%
・アコム:312億円、前年度比+33%
・米州MUFG:494億円、前年度比▲26%
・アユタヤ:669億円、前年度比▲31%
・バンクダナモン:67億円、前年度比▲70%
・FSI:165億円
・モルガン・スタンレー:2,952億円、前年度比+31%

会社別の純利益構成比は、モルガン・スタンレーが38%、銀行が19%、信託が12%を占めます。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020の自社株買い実施はなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は10.2%と、バリュエーション面で割安感があります。
FY2020の配当利回りは4.2%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向は、40%程度です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは25円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+6.8%となりました。
FY2021のDPSは27円(前年度比+8.0%)の予定です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.5%となりました。

ROEの推移
FY2020のROE(会社定義)は5.6%(2023年度目標7.5%、中長期目標9〜10%)となりました。

株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+46.8%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+54.9%)を下回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+2.6%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく下回りました。

競合他社(都市銀行)の株価上昇率(MUFG、SMFG、Mizuhoは日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
三菱UFJ(MUFG)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲23%と、14社平均(▲13%)を下回り、14社中第12位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では▲15%と、14社平均(▲11%)を下回り、14社中第6位となりました。

過去10年間(2011年5月から2021年4月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場が大きく下落する局面では、より大きなドローダウンが発生しており、下落相場に弱いと言えます。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBRの推移となります。
FY2020のBPSは1,308円と、前年度比+5.0%、過去5年間で年率+3.1%となりました。
過去5年間のPBRは1倍を大きく下回っています。

目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

メインシナリオの予想ROEを5.5%、アップサイドシナリオの予想ROEを7.5%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを4%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は763円となります。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(Mitsubishi UFJ Financial Group Inc.、8306.T)への投資について
FY2020の業務粗利益は3兆9,979億円(前年度比+0.3%)、純利益は7,770億円(前年度比+47%)となりました。
FY2019に計上したのれん一括償却(▲3,433億円)を除いた場合、与信関連費用が大きく増加したこともあり、減益です。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・与信関連費用:▲3,500億円
・純利益:8,500億円
目標株価は763円のため、2021年4月末時点の株価578円より高い水準です。
中期経営計画のROE目標は、2023年度に7.5%、中長期で9〜10%を掲げています。





