過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とウェルズ・ファーゴへの投資についてコメントします。
会社概要
ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo & Company、WFC)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:銀行
サブ産業グループ:都市銀行
株式時価総額:1,913億ドル(世界ランキング第63位、2021年12月末)
ウェルズ・ファーゴは、アメリカに本拠を置く、伝統的な商業銀行ビジネスに注力する、アメリカ4大銀行の1つです。
2002年から2016年にかけて行われた不正営業(顧客に無断で銀行口座の開設等)が2016年に発覚し、2020年に制裁金30億ドルを支払うことをアメリカ当局と合意しました。
この不祥事を受けて、FRBから資産上限が設けられており、解決するまでは業績拡大が困難な状況です。
(参考)競合他社(都市銀行)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM) | 4,680億ドル |
バンク・オブ・アメリカ(BAC) | 3,641億ドル |
中国工商銀行(1398.HK) | 2,437億ドル |
招商銀行(3968.HK) | 1,952億ドル |
ウェルズ・ファーゴ(WFC) | 1,913億ドル |
中国建設銀行(0939.HK) | 1,759億ドル |
中国農業銀行(1288.HK) | 1,571億ドル |
カナダロイヤル銀行(RY) | 1,512億ドル |
トロント・ドミニオン銀行(TD) | 1,397億ドル |
中国銀行(3988.HK) | 1,308億ドル |
オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA.AX) | 1,267億ドル |
HSBC HD(HSBC) | 1,228億ドル |
HDFC銀行(HDB) | 1,202億ドル |
シティグループ(C) | 1,198億ドル |
ナショナルオーストラリア銀行(NAB.AX) | 943億ドル |
バンク・オブ・ノバスコシア(BNS) | 872億ドル |
BNPパリバ(BNP.PA) | 861億ドル |
ズベルバンク・オブ・ロシア(SBER.ME) | 854億ドル |
USバンコープ(USB) | 833億ドル |
三菱UFJ FG(8306.T) | 725億ドル |
中国郵政儲蓄銀行(1658.HK) | 723億ドル |
純収益(セグメント別)の推移
FY2021のEPSは4.95ドルと、前年度比+1,051%、過去5年間で年率+4.4%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の純収益は209億ドル(前年同期比+12.8%)と、コンセンサス(186億ドル)を上回りました。
2021Q4の純金利収入は93億ドル(前年同期比▲0%)となりました。
セグメント別の純収益は、以下の通りです。
・個人向け:87億ドル、前年同期比+1%
・商業銀行:23億ドル、前年同期比+1%
・投資銀行:35億ドル、前年同期比+11%
・富裕層&資産運用:36億ドル、前年同期比+6%
セグメント別の純収益構成比は、個人向けが48%、商業銀行が13%、投資銀行が19%、富裕層&資産運用が20%を占めます。
2021年12月末の融資額は8,954億ドル(前年同期比+1%)、預金は1.48兆ドル(前年同期比+6%)となりました。
2021年12月末の住宅ローンは2,144億ドル(前年同期比▲16%)、自動車ローンは573億ドル(前年同期比+17%)、クレジットカードローンは385億ドル(前年同期比+5%)となりました。
2021Q4の住宅ローン組成額は481億ドル(前年同期比▲11%)、自動車ローン組成額は94億ドル(前年同期比+77%)となりました。
2021Q4の顧客資産額は2.18兆ドル(前年同期比+9%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
2021Q4のEPSは1.38ドル(前年同期比+109%)と、コンセンサス(1.13ドル)を上回りました。
2021年12月末時点の融資向け貸倒引当金は138億ドル(前四半期比▲6%)となりました。
セグメント別の純利益は、以下の通りです。
・個人向け:19億ドル、前年同期比+37%
・商業銀行:10億ドル、前年同期比+102%
・投資銀行:15億ドル、前年同期比+64%
・富裕層&資産運用:6億ドル、前年同期比+11%
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は10.3と、バリュエーション面では割安感があります。
自社株買い利回りは、高い水準です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020を除いた過去5年間の配当性向は、50%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは0.60ドルと、前年度比▲50.8%、過去5年間で年率▲16.9%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲4.3%となりました。
ROEの推移
2021Q4のROEは12.8%です。
(参考)過去5年間のROE
FY2020を除いて、ROEは10%以上と比較的高い水準となりました。
純収益およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
純収益の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、6勝、4敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、5勝、5敗です。
純収益(億ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 220 | 213 | ○ | 0.92 | 1.23 | × |
2019Q4 | 199 | 201 | × | 0.60 | 1.12 | × |
2020Q1 | 177 | 193 | × | 0.01 | 0.53 | × |
2020Q2 | 178 | 183 | × | -0.66 | -0.10 | × |
2020Q3 | 189 | 179 | ○ | 0.42 | 0.45 | × |
2020Q4 | 179 | 180 | × | 0.64 | 0.41 | ○ |
2021Q1 | 181 | 176 | ○ | 1.05 | 0.72 | ○ |
2021Q2 | 203 | 177 | ○ | 1.38 | 0.98 | ○ |
2021Q3 | 188 | 183 | ○ | 1.17 | 1.00 | ○ |
2021Q4 | 209 | 186 | ○ | 1.38 | 1.13 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+59.0%と、S&P500(+26.9%)を上回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率▲2.7%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく下回りました。
2021Q4の株価上昇率は+3.4%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。
競合他社(都市銀行)の株価上昇率(8306.T、8316.T、8411.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ウェルズ・ファーゴ(WFC)の株価上昇率は、2021年の1年間で+59%と、13社平均(+26%)を上回り、13社中第1位となりました。
2019年1月から2021年12月末の3年間では+4%と、13社平均(+32%)を下回り、13社中第11位となりました。
過去10年間(2012年1月から2021年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
▲70%程度のドローダウンが発生しましたが、急速に回復しています。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
BPSとPBRの推移
2021Q4のBPSは前年同期比+9.1%、PBRは1.11倍となりました。
(参考)過去5年間のBPSとPBR
BPSは、過去5年間で年率+4.3%となりました。
目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年12月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.79と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。
メインシナリオの予想ROEを8%、アップサイドシナリオの予想ROEを10%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを5%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は58ドルとなります。
・メインシナリオ:58ドル
・アップサイドシナリオ:80ドル
・ダウンサイドシナリオ:35ドル
ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo & Company、WFC)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の純収益は209億ドル(コンセンサス186億ドル)、EPSは1.38ドル(コンセンサス1.13ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
一方、純金利収入は93億ドル(前年同期比▲0%)となりました。
融資向け貸倒引当金は、5四半期連続で減少し、2021年12月末時点で138億ドル(前四半期比▲6%)です。
目標株価は58ドルのため、2022年2月末時点の株価53ドルより高い水準です。
不祥事を受けてFRBによる資産上限制限が設けられたことから、競合他社と比較して株価は不調でしたが、制限が撤廃された場合に向けて、適正なバリュエーションへの回帰から、2021年には株価が大きく上昇しました。