過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と三井住友フィナンシャルグループへの投資についてコメントします。
会社概要
三井住友フィナンシャルグループ(Sumitomo Mitsui Financial Group Inc.、8316.T)
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国:日本
セクター:金融
産業グループ:銀行
サブ産業グループ:都市銀行
株式時価総額:4.4兆円(日本ランキング第27位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:454億ドル(2021年4月末、MSCI)
三井住友フィナンシャルグループは、日本に本拠を置く、銀行(三井住友銀行)、信託(SMBC信託銀行)、リース(三井住友ファイナンシャル&リース)、証券(SMBC日興証券)、カード(三井住友カード)、消費者金融(SMBCコンシューマーファイナンス)、資産運用会社(三井住友DSアセットマネジメント)等の企業を傘下に持つ持株会社です。
都市銀行に占める三井住友フィナンシャル・グループの浮動株調整後株式時価総額比率は1%です。
粗利益の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の粗利益は2兆8,062億円と、前年度比+1.4%、過去5年間で年率▲0.7%となりました。
2021年3月末の融資額は85兆円(前年度末比+3%)、預金は142兆円(前年度末比+12%)となりました。
融資額のうち、国内大企業は19兆円(前年度末比+18%)、国内中堅・中小は19兆円(前年度末比+2%)、国内個人は12兆円(前年度末比▲3%)となりました。
融資額のうち海外預貸金は2,680億ドル(▲3%)、うちアジアは960億ドル(+3%)、米州は960億ドル(▲13%)、欧州/中東/アフリカは760億ドル(+7%)となりました。
2021年3月末の有価証券は36兆円(前年度末比+35%)、うち株式が4兆円(前年度末比+35%)、債券が18兆円(前年度末比+71%)、その他(外債等)が15兆円(前年度末比+9%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業経費は1兆7,471億円(前年度比+0.4%)、経費率は62.3%(目標60%)となりました。
FY2020の与信関連費用は3,605億円、うち銀行は2,427億円となりました。
FY2020の純利益は5,128億円と、前年度比▲27.1%、過去5年間で年率▲4.5%となりました。
セグメント別の業務純益(粗利益−経費)は、以下の通りです。
・国内個人:2,192億円、前年度比▲10%
・国内法人:3,885億円、前年度比+8%
・海外:3,667億円、前年度比+3%
・市場:4,135億円、前年度比+6%
セグメント別の業務純益構成比は、国内個人が18%、国内法人が27%、海外が26%、市場が29%を占めます。
会社別の純利益は、以下の通りです。
・銀行:3,380億円、前年度比+6%
・証券:926億円、前年度比+163%
・カード:358億円、前年度比▲6%
・消費者金融:541億円、前年度比▲40%
・信託:▲85億円、前年度比赤字幅縮小
・資産運用:▲280億円、前年度比赤字転落
・リース:336億円、前年度比▲45%
会社別の純利益構成比は、銀行が62%、消費者金融が18%、リースが12%を占めます。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020の自社株買い実施はなしです。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は9.3%と、バリュエーション面で割安感があります。
FY2020の配当利回りは4.7%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向は、50%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは190円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+4.8%となりました。
FY2021のDPSは200円(前年度比+5.3%)の予定です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.0%となりました。
ROEの推移
FY2020のROEは5.4%、ROCET1は6.9%(2023年度目標7.5%、中長期目標9〜10%)となりました。
株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+52.8%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+54.9%)を下回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+3.3%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく下回りました。
競合他社(都市銀行)の株価上昇率(MUFG、SMFG、Mizuhoは日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
三井住友(SMFG)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲21%と、14社平均(▲13%)を下回り、14社中第9位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では▲35%と、14社平均(▲11%)を下回り、14社中第11位となりました。
過去10年間(2011年5月から2021年4月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場が大きく下落する局面では、より大きなドローダウンが発生しており、下落相場に弱いと言えます。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBRの推移となります。
FY2020のBPSは8,630円と、前年度比+10.2%、過去5年間で年率+5.8%となりました。
過去5年間のPBRは1倍を大きく下回っています。
目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。
メインシナリオの予想ROEを5.5%、アップサイドシナリオの予想ROEを7.5%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを4%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は5,005円となります。
三井住友フィナンシャルグループ(Sumitomo Mitsui Financial Group Inc.、8316.T)への投資について
FY2020の粗利益は2兆8,062億円(前年度比+1.4%)、与信関連費用の増加(前年度比+1,899億円)を受けて、純利益は5,128億円(前年度比▲27.1%)となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・与信関連費用:▲3,000億円
・純利益:6,000億円
目標株価は5,005円のため、2021年4月末時点の株価3,802円より高い水準です。
2022年度目標として、ROCET1は8.5%以上を掲げています。