S&Pグローバル(SPGI)決算分析と目標株価 信用格付け大手 株価指数等のインデックス算出も手掛ける

取引所およびデータ提供会社

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とS&Pグローバルへの投資についてコメントします。

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会社概要

S&Pグローバル(S&P Global Inc.、SPGI)

ホームページ(SECファイル):リンク先

国:アメリカ

セクター:金融

産業グループ:各種金融

サブ産業グループ:取引所およびデータ提供会社

浮動株調整後株式時価総額:849億ドル(2021年3月末、MSCI)

S&Pグローバルは、アメリカに本拠を置く、信用格付けや株価指数等のインデックス算出、データ分析などを提供する企業です。

格付市場は、S&Pとムーディーズが高いシェアを有し、フィッチを含めた3社で約9割と寡占です。

金融セクターの各種金融で第7位の浮動株調整後株式時価総額で、取引所およびデータ提供会社に占めるS&Pグローバルの浮動株調整後株式時価総額比率は15%です。

 

 

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は74億ドルと、前年度比+11.1%、過去5年間で年率+7.0%となりました。

 

2020Q4(2020年10月-2020年12月期)の売上高は18.7億ドル(前年同期比+7.6%)と、コンセンサス(17.6億ドル)を上回りました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・信用格付け:36億ドル、前年度比+16%

・データ管理・分析ツール:21億ドル、前年度比+8%

・エネルギー関連情報配信:9億ドル、前年度比+4%

・インデックス:10億ドル、前年度比+8%

 

セグメント別の売上高構成比は、信用格付けが48%、データ管理・分析ツールが28%、エネルギー関連情報配信が12%、インデックスが13%を占めます。

 

S&P Global社の指数を用いたETFのAUMは2.0兆ドルと、前年度比+20%、過去5年間で年率+18%となりました。

 

FY2020のAUM増減額のうち、純流出入額が0.08兆ドル、市場変動要因が0.22兆ドルです。

 

地域別の売上高構成比は、アメリカが61%、欧州が24%、アジアが11%、その他が5%を占めます。

 

利益の推移

FY2020の営業利益は36億ドル(前年度比+12.1%)、営業利益率は48.6%と、前年度の48.2%とほぼ同水準となりました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは9.66ドルと、前年度比+12.3%、過去5年間で年率+18.1%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは36億ドルと、前年度比+28.5%、過去5年間で年率+58.6%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は47.9%と、前年度の41.4%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは35億ドルと、前年度比+31.2%、過去5年間で年率+74.3%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は46.9%と、前年度の39.7%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.9%、フリーキャッシュフロー利回りは4.4%です。

過去5年間の配当利回りは1%前後です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに30%を下回りました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは2.68ドルと、前年度比+17.5%、過去5年間で年率+15.2%となりました。

なお、FY2021のDPSは3.08ドル(前年度+15%)の予定です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.5%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは30〜40%と、投資効率は高いです。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、7勝です。

 

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、4勝、3敗です。

 

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、7勝です。

 

株価上昇率

FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+20.4%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+27.2%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。

 

競合他社(取引所およびデータ提供会社)の株価上昇率(HKExは香港ドル建て、JPXは日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

S&Pグローバル(SPGI)の株価上昇率は、2020年の1年間で+20%と、12社平均(+29%)を下回り、12社中第10位となりました。

2018年1月から2020年12月末の3年間では+94%と、11社平均(+86%)を上回り、11社中第4位となりました。

 

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

10〜15%程度のドローダウンが発生することが度々あり、その後は急反発していることから、そのタイミングで投資すると良さそうです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.8%、金利が1%上昇した場合は6.7%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+7%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は398ドルとなります。

 

S&Pグローバル(S&P Global Inc.、SPGI)への投資について

FY2020の売上高は74億ドルと、前年度比+11.1%、過去5年間で年率+7.0%となりました。

営業キャッシュフローは、過去5年間で年率+58.6%、営業キャッシュフローマージンは年々増加を続け、FY2020には48%と高水準です。

過去5年間のROICは30〜40%程度と、投資効率は高いです。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:1桁半ば

・非GAAP EPS:12.25〜12.45ドル

DCF法による目標株価は398ドルのため、2021年3月末時点の株価353ドルより高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.8倍(年率+6%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである48%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

格付機関としては業界最大手の一角であるため、企業等の債券発行の増加の恩恵を受けます。

インデックスについては、株式市場の変動の影響を受けるものの、アクティブからパッシブへの流れは続くと思われ、投資資金の流入は期待できます。

 

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