過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とマーケットアクセス・ホールディングスへの投資についてコメントします。
会社概要
マーケットアクセス・ホールディングス(MarketAxess Holdings Inc.、MKTX)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:各種金融
サブ産業グループ:取引所およびデータ提供会社
株式時価総額:186億ドル(2021年4月末)
マーケットアクセスは、アメリカに本拠を置く、機関投資家向けに、投資適格社債や新興国債券、ハイイールド債などのクレジット商品を取引できる電子取引プラットフォームを提供する企業です。
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は6.9億ドルと、前年度比+34.8%、過去5年間で年率+17.9%となりました。
クレジット売買金額は2.6兆ドルと、前年度比+26%となりました。
クレジット売買金額の構成比は、米国投資適格社債が48%、新興国債券が24%、米国ハイイールド債が15%を占めます。
投資適格社債のシェアは21.6%、ハイイールド債のシェアは14.6%と、前年増加傾向にあります。
利益の推移
FY2020の営業利益は3.7億ドル(前年度比+49.4%)、営業利益率は54.4%と、前年度の49.1%から改善しました。
FY2020のEPSは7.85ドルと、前年度比+45.4%、過去5年間で年率+25.2%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは4.0億ドルと、前年度比+52.1%、過去5年間で年率+26.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は58.7%と、前年度の52.0%から改善しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは3.6億ドルと、前年度比+55.2%、過去5年間で年率+26.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は52.1%と、前年度の45.2%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いには消極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は1.4%、フリーキャッシュフロー利回りは1.6%です。
過去5年間の配当利回りは0.5%前後です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに60%を下回りました。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは2.40ドルと、前年度比+17.6%、過去5年間で年率+24.6%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.3%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは40〜90%前後と、投資効率は高いです。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去9四半期中、7勝、2敗です。
以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去9四半期中、7勝、2敗です。
株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+50.5%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+38.6%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
競合他社(取引所およびデータ提供会社)の株価上昇率(HKExは香港ドル建て、JPXは日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
マーケットアクセス(MKTX)の株価上昇率は、2020年の1年間で+50%と、12社平均(+29%)を上回り、12社中第3位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+183%と、11社平均(+86%)を上回り、11社中第2位となりました。
過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
10〜20%程度のドローダウンが発生することが度々あり、その後は急反発する傾向にあることから、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.6%、金利が1%上昇した場合は7.5%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+20%、4年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は520ドルとなります。
マーケットアクセス・ホールディングス(MarketAxess Holdings Inc.、MKTX)への投資について
FY2020の売上高は6.9億ドルと、前年度比+34.8%、過去5年間で年率+17.9%となりました。
FY2020の営業キャッシュフローは4.0億ドルと、前年度比+52.1%、過去5年間で年率+26.6%となり、営業キャッシュフローマージンは59%と高水準です。
ROICも40%程度と、投資効率は高いです。
DCF法による目標株価は520ドルのため、2021年4月末時点の株価488ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が4.6倍(年率+16%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである52%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ここ数年間株価が急騰し続けたので、過去大きなドローダウンが度々発生したように、株価が急落する局面は出てきますが、社債等クレジット取引のニーズは長期的にみて高まるため、急落時は投資のチャンスです。