過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とファクトセットへの投資についてコメントします。
会社概要
ファクトセット・リサーチ・システムズ(Factset Research Systems Inc.、FDS)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:各種金融
サブ産業グループ:取引所およびデータ提供会社
株式時価総額:127億ドル(2021年4月末)
ファクトセットは、アメリカに本拠を置く、金融情報を提供する企業です。
売上高(地域別)の推移
FY2020(2019年9月-2020年8月期)の売上高は14.9億ドルと、前年度比+4.1%、過去5年間で年率+8.2%となりました。
地域別の売上高は、以下の通りです。
・アメリカ:9.3億ドル、前年度比+4%
・欧州/中東/アフリカ:4.2億ドル、前年度比+3%
・アジアパシフィック:1.4億ドル、前年度比+7%
地域別の売上高構成比は、アメリカが62%、欧州/中東/アフリカが28%、アジアパシフィックが10%を占めます。
利益(地域別)の推移
FY2020の営業利益は4.4億ドル(前年度比+0.4%)、営業利益率は29.4%と、前年度の30.5%から悪化しました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020のEPSは9.65ドルと、前年度比+6.3%、過去5年間で年率+11.1%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは5.1億ドルと、前年度比+18.4%、過去5年間で年率+10.5%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は33.9%と、前年度の29.8%から改善しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは4.3億ドルと、前年度比+16.4%、過去5年間で年率+8.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は28.7%と、前年度の25.6%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.8%、フリーキャッシュフロー利回りは3.2%です。
過去5年間の配当利回りは1%前後です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに40%を下回りました。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは2.98ドルと、前年度比+9.6%、過去5年間で年率+12.4%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.8%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは30%程度と、投資効率は高いです。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去6四半期中、2勝、2敗、2引き分けです。
以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去6四半期中、4勝、2敗です。
以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去6四半期中、5勝、1敗です。
株価上昇率
FY2020(2019年9月から2020年8月末)の株価上昇率は+28.8%と、S&P500(+19.6%)を上回りました。
過去5年間(2015年9月から2020年8月末)の株価上昇率は年率+17.3%と、S&P500(年率+12.2%)を上回りました。
競合他社(取引所およびデータ提供会社)の株価上昇率(HKExは香港ドル建て、JPXは日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
ファクトセット(FDS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+24%と、12社平均(+29%)を下回り、12社中第8位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+72%と、11社平均(+86%)を下回り、11社中第7位となりました。
過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から10〜15%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.3%、金利が1%上昇した場合は6.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は382ドルとなります。
ファクトセット・リサーチ・システムズ(Factset Research Systems Inc.、FDS)への投資について
FY2020の売上高は29億ドルと、前年度比+14.5%、過去5年間で年率+6.8%となりました。
ROICは30%程度と、投資効率は高いです。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:15.70〜15.85億ドル(コンセンサス15.8億ドル)
・非GAAP EPS:10.75〜11.15ドル(コンセンサス11.17ドル)
DCF法による目標株価は382ドルのため、2021年4月末時点の株価336ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.8倍(年率+6%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが32%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ファクトセットは、CMEやムーディーズ、MSCI等に買収される可能性があり、株価は一時急上昇しました。
割高感はあまりないので、狙ってみるのも面白いかもしれません。