ユニオン・パシフィック(UNP)決算分析と目標株価 アメリカの西部から中部の23州をカバーする鉄道会社最大手

ユニオンパシフィック運輸

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とユニオン・パシフィックへの投資についてコメントします。

スポンサーリンク

会社概要

ユニオン・パシフィック(Union Pacific Corporation、UNP)

ホームページ(SECファイル):リンク先

国:アメリカ

セクター:資本財・サービス

産業グループ:運輸

サブ産業グループ:鉄道

株式時価総額:1,403億ドル(世界ランキング第81位、2020年12月末)

ユニオン・パシフィックは、アメリカに本拠を置く、アメリカの西部から中部(23州)をカバーする最大手の鉄道会社です。

アメリカの西部から中部をカバーしている鉄道会社は、ユニオン・パシフィックとバークシャー・ハサウェイの子会社であるBNSF鉄道で、アメリカの東部をカバーしている鉄道会社は、CSXとノーフォーク・サザンで、ミズーリ州のカンザスシティからメキシコ湾までをカバーしている鉄道会社が、カンザスシティ・サザンとなります。

 

(参考)競合他社(鉄道)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
ユニオン・パシフィック(UNP)1,461
カナディアン・ナショナル鉄道(CNI)757
CSX(CSX)733
ノーフォーク・サザン(NSC)664
カナディアン・パシフィック鉄道(CP)513
MTR/香港鉄路 (0066.HK)351
JR東海/東海旅客鉄道(9022.T)299
JR東日本/東日本旅客鉄道(9020.T)269
カンザスシティー・サザン(KSU)258

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は195億ドルと、前年度比▲10.0%、過去5年間で年率▲2.2%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・バルク(穀物、肥料、食料品、石炭等):60億ドル、前年度比▲9%

・工業製品(化学品、金属、森林製品、エネルギー等):16.6億ドル、前年度比▲11%

・プレミアム(自動車/自動車部品、インターモーダル等):15.8億ドル、前年度比▲9%

※インターモーデル・・・鉄道やトラック等複数の輸送機関を組み合わせて運ぶこと

 

貨物量の増加率は前年度比▲7.1%、うちバルク▲8.0%、工業製品▲9.4%、プレミアム▲5.4%となりました。

 

運賃平均の増加率は前年度比▲2.9%、うちバルク▲0.8%、工業製品▲2.2%、プレミアム▲4.0%となりました。

 

利益の推移

FY2020の営業利益は78億ドルと、前年度比▲8.4%、過去5年間で年率▲0.6%となりました。

営業利益率は40.1%と、前年度の39.4%から改善しました。

 

営業経費は117億ドル(前年度比▲11%)、うち人件費は40億ドル(前年度比▲12%)、燃費は13億ドル(前年度比▲38%)、減価償却費22億ドル(前年度比▲0%)となりました。

 

FY2020のEPSは7.88ドルと、前年度比▲6.0%、過去5年間で年率+7.5%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは85億ドルと、前年度比▲0.8%、過去5年間で年率+3.1%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は43.7%と、前年度の39.7%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは56億ドルと、前年度比+8.9%、過去5年間で年率+15.8%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は28.7%と、前年度の23.8%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.8%、フリーキャッシュフロー利回りは4.0%です。

過去5年間の配当利回りは2%前後です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、50%程度です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは3.88ドルと、前年度比+4.9%、過去5年間で年率+12.0%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲4.8%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは10%程度と、投資効率は悪くありません。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去9四半期中、2勝、7敗です。

 

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去9四半期中、3勝、6敗です。

 

株価上昇率

FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+15.2%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+21.6%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。

 

競合他社(鉄道)の株価上昇率(0066.HKは香港ドル建て、9022.T、9020.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

ユニオン・パシフィック(UNP)の株価上昇率は、2020年の1年間で+15%と、9社平均(+9%)を上回り、9社中第6位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+55%と、9社平均(+37%)を上回り、9社中第5位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

運輸セクターは景気感応度が高いため、株式市場全体の下落相場には、より大きなドローダウンになる傾向があります。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.3%、金利が1%上昇した場合は6.2%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+10%、4年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は228ドルとなります。

 

ユニオン・パシフィック(Union Pacific Corporation、UNP)への投資について

FY2020(2020年1−12月期)の売上高は195億ドル(前年度比▲10.0%)、EPSは7.88ドル(前年度比▲6.0%)と、減収減益となりました。

DCF法による目標株価は228ドルのため、2021年5月末時点の株価225ドルとほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンが10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

鉄道会社の業績はアメリカの景気に大きく連動しているため、長期的には株式市場全体のアウトパフォームが期待できそうです。

積極的な自社株買いも好感が持てます。

ユナイテッド・パーセル(UPS)決算分析と目標株価 世界最大の小口貨物輸送会社 アマゾン向け売上高が全体の13%超
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とユナイテッド・パーセルへの投資についてコメントします。 会社概要 ユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service、UPS) ...
タイトルとURLをコピーしました