アストラゼネカ(AZN)決算分析と目標株価 がん治療薬に強み オックスフォード大学で共同でコロナワクチンを開発

アストラゼネカ医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアストラゼネカへの投資についてコメントします。

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会社概要

アストラゼネカ(AstraZeneca PLC、AZN.L、AZN)

ホームページ(IR):リンク先

国:イギリス

セクター:ヘルスケア

産業グループ:医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス

サブ産業グループ:医薬品

株式時価総額:1,573億ドル(世界ランキング第82位、2021年6月末)

アストラゼネカは、イギリスに本拠を置く、1999年にスウェーデンのアストラとイギリスのゼネカが合併して設立された大手医薬品メーカーです。

オックスフォード大学と共同でコロナワクチンを開発しました。

 

(参考)競合他社(医薬品)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)4,338
ロシュHD(ROG.SW)3,257
イーライ・リリー(LLY)2,201
ファイザー(PFE)2,192
ノバルティス(NVS)2,048
メルク&カンパニー(MRK)1,969
ノボ・ノルディスク(NVO)1,923
アストラゼネカ(AZN)1,573
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY)1,492
サノフィ(SNY)1,317
グラクソ・スミスクライン(GSK)1,002
ゾエティス(ZTS)885
メルクKGaA(MRK.DE)811
中外製薬(4519.T)655
バイエル(BAYN.DE)599
武田薬品工業(4502.T)531
第一三共(4568.T)377
アステラス製薬(4503.T)322
エーザイ(4523.T)283

 

売上高の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は266億ドルと、前年度比+9.2%、過去5年間で年率+2.4%となりました。

 

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は82億ドル(前年同期比+31.0%)と、コンセンサス(75億ドル)を上回りました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・がん等の腫瘍:33億ドル、前年同期比+19%

・循環器/腎/代謝:14億ドル、前年同期比+23%

・呼吸器/免疫:14億ドル、前年同期比+27%

・その他医薬品:11億ドル、前年同期比▲4%

・コロナワクチン:9億ドル

セグメント別の売上高構成比は、がん等の腫瘍が41%、循環器/腎/代謝が17%、呼吸器/免疫が17%を占めます。

 

プロダクト別の売上高は、以下の通りです。

・タグリッソ(がん治療薬):13億ドル、前年同期比+26%

・イミフィンジ(がん治療薬):6億ドル、前年同期比+23%

・リンパルザ(がん治療薬):6億ドル、前年同期比+6%

・フォシーガ(2型糖尿病治療薬):7億ドル、前年同期比+65%

・シムビコート(喘息治療薬):7億ドル、前年同期比+4%

・その他:43億ドル、前年同期比+39%

プロダクト別の売上高構成比は、タグリッソ(がん治療薬)が16%、フォシーガ(2型糖尿病治療薬)が9%、シムビコート(喘息治療薬)が8%を占めます。

 

地域別の売上高構成比は、アメリカが34%、欧州先進国が33%、その他先進国が20%、新興国が14%を占めます。

 

利益の推移

FY2020の営業利益は52億ドルと、前年度比+76.5%、過去5年間で年率+4.6%となりました。

営業利益率は19.4%と、前年度の12.0%から改善しました。

 

2021Q2の営業利益は11億ドル(前年同期比▲12.2%)となりました。

 

FY2020の調整後EPS(ADRベース)は2.01ドルと、前年度比+14.9%、過去5年間で年率▲1.2%となりました。

※ADRレシオは2:1のため、発表数値×1/2で表示

 

2021Q2の調整後EPS(ADRベース)は0.45ドル(前年同期比▲6.2%)となりました。

※ADRレシオは2:1のため、発表数値×1/2で表示

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは48億ドルと、前年度比+61.6%、過去5年間で年率+7.6%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は18.0%と、前年度の12.2%から改善しました。

 

2021Q2の営業キャッシュフローは9億ドル(前年同期比▲14.2%)となりました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは22億ドルと、前年度比+330.8%、過去5年間で年率+32.5%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は8.2%と、前年度の2.1%から改善しました。

 

2021Q2のフリーキャッシュフローは5億ドル(前年同期比+755.6%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いの実施はなしです。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の調整後益利回り(PERの逆数)は4.0%、フリーキャッシュフロー利回りは1.7%です。

FY2020の配当利回りは2.8%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向(調整後利益ベース)は、70〜80%程度です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは1.40ドルと、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+0.0%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+0.7%となりました

※ADRレシオは2:1のため、発表数値×2で表示

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、6勝、2敗です。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、8勝です。

調整後EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、6勝、2敗です。

※発表数値(ADRベースの場合、発表数値×1/2)

 
売上高(ドル)EPS(ドル)調整後EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q361610.230.190.990.98
2019Q46768×0.240.100.890.56
2020Q164600.590.231.050.92
2020Q263630.580.200.960.93
2020Q36666×0.490.250.940.98×
2020Q474710.780.341.070.95
2021Q173701.190.551.630.97
2021Q282750.440.260.900.92×

 

株価上昇率

FY2020の株価上昇率は+0.3%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+8.0%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。

 

2021Q2の株価上昇率は+20.5%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。

 

競合他社(医薬品)の株価上昇率(ROG.SWはスイスフラン、MRK.DE、BAYN.DEはユーロ建て、4519.T、4502.T、4568.T、4503.T、4523.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

アストラゼネカ(AZN)の株価上昇率は、2020年の1年間で+0%と、19社平均(+6%)を下回り、19社中第8位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+44%と、19社平均(+46%)を下回り、19社中第7位となりました。

 

過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.8%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+150%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+150%、2年目+50%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+150%、2年目〜5年目+3%、6年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は57ドルとなります。

・メインシナリオ:57ドル

・アップサイドシナリオ:83ドル

・ダウンサイドシナリオ:43ドル

アストラゼネカ(AstraZeneca PLC、AZN.L、AZN)への投資について

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は82億ドル(コンセンサス75億ドル)と、コンセンサスを上回りました。

DCF法による目標株価は57ドルのため、2021年8月末時点の株価58ドルとほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.3倍(年率+9%)、フリーキャッシュフローマージンが16%へ上昇後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

オックスフォード大学と共同開発したコロナワクチンは、副作用等やや問題を抱えており、ファイザーのように業績急拡大は厳しそうです。

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