ラム・リサーチ(LRCX)決算分析と目標株価 エッチング装置は世界シェアトップの半導体製造装置メーカー メモリ向けに強み

ラム・リサーチ情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とラム・リサーチへの投資についてコメントします。

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会社概要

ラム・リサーチ(Lam Research Corporation、LRCX)

ホームページ(SEC):リンク先

国:アメリカ

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体素材・装置

ラム・リサーチは、アメリカに本拠を置く、ウエハー処理工程(前工程)で使用されるドライエッチング装置や成膜装置、洗浄装置などの開発・製造・販売等を行う、大手半導体製造装置メーカーです。

ドライエッチング装置(高真空プラズマを利用して真空容器内でガスをプラズマ化し、イオンの化学反応を使って、ウエハー上に形成した薄膜にフォトレジストがコーティングされている部分は残り、フォトレジストがない部分が削られることで凹凸ができパターンが形成)は、世界シェアトップです。

メモリ向けに強みがありますが、以下のメモリの市場規模の増加率(前年度比)にある通り、メモリはブレ幅が大きいことがわかります。

半導体市場

 

FY2023の売上高の顧客上位は、キオクシア、マイクロン・テクノロジー、サムスン電子、台湾セミコンダクターとなります。

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2023(2022年7月-2023年6月期)の売上高は174億ドルと、前年度比+1.2%、過去5年間で年率+9.5%となりました。

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セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・半導体製造装置:107億ドル、前年度比▲6%

・サービス:67億ドル、前年度比+14%

セグメント別の売上高構成比は、半導体製造装置が61%、サービスが39%を占めます。

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半導体製造装置の用途別売上高構成比は、メモリが42%、ファウンドリが38%、ロジックが20%を占めます。

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地域別の売上高構成比は、中国が26%、韓国が20%、台湾が20%、日本が10%、東南アジアが8%、米国が10%、欧州が7%を占めます。

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半導体の市場規模の見込み

2022年の半導体の市場規模は5,741億ドル(前年度比+3%)となりました。

WSTSによると、2023年予想は5,201億ドル(前年度比▲9%)、2024年予想は5,884億ドル(前年度比+13%)です。

半導体市場

 

2022年の半導体製造装置の市場規模は1,085億ドル(前年度比+6%)となりました。

半導体製造装置市場

 

利益の推移

FY2023の営業利益は52億ドルと、前年度比▲3.8%、過去5年間で年率+10.0%となりました。

営業利益率は29.7%と、前年度の31.2%から悪化しました。

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FY2023のEPSは33.21ドルと、前年度比+1.4%、過去5年間で年率+20.3%となりました。

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キャッシュフローの推移

FY2023の営業キャッシュフローは52億ドルと、前年度比+67.1%、過去5年間で年率+14.3%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は29.7%と、前年度の18.0%から改善しました。

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FY2023のフリーキャッシュフローは47億ドルと、前年度比+83.2%、過去5年間で年率+14.4%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は26.8%と、前年度の14.8%から改善しました。

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株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

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(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2023の益利回り(PERの逆数)は5.2%、フリーキャッシュフロー利回りは5.4%です。

FY2023の配当利回りは1.1%です。

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(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、20〜30%程度です。

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(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2023のDPSは6.90ドルと、前年度比+15.0%、過去5年間で年率+22.0%となりました。

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(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲5.6%となりました。

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ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは40%程度と、投資効率は高いです。

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株価上昇率

FY2023(2022年7月から2023年6月末)の株価上昇率は+50.9%と、S&P500(+17.6%)を上回りました。

過去5年間(2018年7月から2023年6月末)の株価上昇率は年率+30.0%と、S&P500(年率+10.4%)を大きく上回りました。

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過去10年間(2014年1月から2023年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

半導体は市況の影響を受けやすいため、市場平均と比較してドローダウンが大きいです。

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(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

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DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを8.4%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

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① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜7年目+10%、8年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+0%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は777ドルとなります。

・メインシナリオ:777ドル

・アップサイドシナリオ:849ドル

・ダウンサイドシナリオ:465ドル

ラム・リサーチ(Lam Research Corporation、LRCX)への投資について

FY2023の売上高は174億ドル(前年度比+1.2%)、EPSは33.21ドル(前年度比+1.4%)となりました。

DCF法による目標株価は777ドルのため、2023年12月末時点の株価783ドルとほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.0倍(年率+7%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

自社株買いに積極的なので、発行済株式数の減少による株価上昇も可能です。

アメリカによる中国向けの高度なAIチップ製造装置の輸出規制はネガティブです。

メモリチップの需要低迷により業績は苦戦しましたが、今後急回復が期待できます。

 

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