過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とジロー・グループへの投資についてコメントします。
会社概要
ジロー・グループ(Zillow Group, Inc.、Z, ZG)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・メディアおよびサービス
株式時価総額:303億ドル(2021年6月末)
ジロー・グループは、アメリカに本拠を置く、アメリカ最大の不動産情報サイトを運営し、住宅売買や不動産仲介業者の広告、住宅ローンの手伝い等を提供する企業です。
不動産情報サイトでは1億超の物件をデータベース化し、物件の広さや外観等に加え、物件の周辺の犯罪件数等のあらゆる情報を知ることができ、AIによる適正価格も提示してくれることから、不動産のアマゾンや、不動産のグーグルと言われています。
(参考)競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アルファベット(GOOG) | 16,606 |
フェイスブック(FB) | 9,859 |
テンセントHD/騰訊控股(0700.HK) | 7,224 |
クワイショウ・テクノロジー/快手科技(1024.HK) | 1,074 |
スナップ(SNAP) | 1,067 |
バイドゥ/百度(BIDU) | 709 |
カカオ(035720.KS) | 622 |
ネイバー(035420.KS) | 550 |
ツイッター(TWTR) | 549 |
ピンタレスト(PINS) | 503 |
マッチ・グループ(MTCH) | 446 |
ZHD(4689.T) | 390 |
ジロー・グループ(ZG) | 303 |
ヤンデックス(YNDX) | 252 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は33.4億ドルと、前年度比+21.8%、過去5年間で年率+39.0%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は13.1億ドル(前年同期比+70.5%)と、コンセンサス(12.7億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・住宅売買:7.8億ドル、前年同期比+71%
・広告収入等:4.8億ドル、前年同期比+70%
・住宅ローン:0.6億ドル、前年同期比+68%
セグメント別の売上高構成比は、住宅売買が59%、広告収入等が36%を占めます。
月間平均ユニークユーザー数は2.3億人(前年同期比+5%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の非GAAP EBITDAは3.4億ドルと、前年度比+782.1%、過去3年間で年率+13.2%となりました。
非GAAP EBITDAマージンは10.3%と、前年度の1.4%から改善しました。
2021Q2の非GAAP EBITDAは1.8億ドル(前年同期比+1,054%)となりました。
セグメント別の非GAAP EBITDAマージンは、以下の通りです。
FY2020のEPSは▲0.72ドルと、前年度比赤字幅縮小となりました。
2021Q2のEPSは0.04ドルと、コンセンサス(0.23ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは4.2億ドルと、前年度比黒字転換となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は12.7%と、前年度の▲22.3%から改善しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは3.2億ドルと、前年度比黒字転換となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は9.5%と、前年度の▲25.5%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
無配です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+5.7%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去6四半期中、6勝です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去6半期中、4勝、2敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q1 | 11.3 | 10.5 | ○ | -0.78 | -0.65 | × |
2020Q2 | 7.7 | 6.2 | ○ | -0.38 | -0.81 | ○ |
2020Q3 | 6.6 | 5.7 | ○ | 0.16 | -0.02 | ○ |
2020Q4 | 7.9 | 7.4 | ○ | 0.18 | 0.12 | ○ |
2021Q1 | 12.2 | 11.0 | ○ | 0.20 | 0.07 | ○ |
2021Q2 | 13.1 | 12.7 | ○ | 0.04 | 0.23 | × |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+197.2%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+39.2%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
2021Q2の株価上昇率は▲6.7%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株価上昇率(0700.HKは香港ドル建て、035720.KS、035420.KSは韓国ウォン建て、4689.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ジロー・グループ(ZG)の株価上昇率は、2020年の1年間で+197%と、12社平均(+102%)を上回り、12社中第3位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+234%と、11社平均(+104%)を上回り、11社中第2位となりました。
過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを8.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲50%、2年目〜3年目+100%、4年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲50%、2年目〜3年目+100%、4年目〜6年目+50%、7年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲50%、2年目〜3年目+100%、4年目〜5年目+30%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は141ドルとなります。
・メインシナリオ:141ドル
・アップサイドシナリオ:208ドル
・ダウンサイドシナリオ:77ドル
ジロー・グループ(Zillow Group Inc.、Z, ZG)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は13.1億ドルと、コンセンサス(12.7億ドル)を上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は141ドルのため、2021年7月末時点の株価107ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が11.5倍(年率+28%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが10%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
さらなる成長機会が大きく、長期的に株価上昇が期待できそうです。
投資を検討したいと思います。