過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とネイバーへの投資についてコメントします。
会社概要
ネイバー(Naver Corp、035420.KS)
ホームページ(IR):リンク先
国:韓国
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・メディアおよびサービス
株式時価総額:550億ドル(2021年6月末)
ネイバーは、韓国に本拠を置く、検索プラットフォームやeコマース、フィンテック(決済サービスであるネイバーペイ等)、コンテンツ(デジタル漫画であるウェブトゥーン等)、クラウドを手掛ける、大手ネット企業です。
2021年に、ヤフーとLINEの経営統合のため、ネイバーの子会社だったLINEをAホールディングスへ商号変更し、ネイバーとソフトバンク🇯🇵がAホールディングスの株式をそれぞれ50%保有、AホールディングスはZホールディングス🇯🇵の株式を約65%保有、Zホールディングスの子会社がLINEのサービスを提供することになりました。
(参考)競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アルファベット(GOOG) | 16,606 |
フェイスブック(FB) | 9,859 |
テンセントHD/騰訊控股(0700.HK) | 7,224 |
クワイショウ・テクノロジー/快手科技(1024.HK) | 1,074 |
スナップ(SNAP) | 1,067 |
バイドゥ/百度(BIDU) | 709 |
カカオ(035720.KS) | 622 |
ネイバー(035420.KS) | 550 |
ツイッター(TWTR) | 549 |
ピンタレスト(PINS) | 503 |
マッチ・グループ(MTCH) | 446 |
ZHD(4689.T) | 390 |
ジロー・グループ(ZG) | 303 |
ヤンデックス(YNDX) | 252 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は5.30兆ウォンと、前年度比+21.8%、過去5年間で年率+10.3%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は1.66兆ウォン(前年同期比+30.4%)となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・検索プラットフォーム:0.83兆ウォン(前年同期比+22%)
・eコマース:0.37兆ウォン(前年同期比+43%)
・フィンテック:0.23兆ウォン(前年同期比+41%)
・コンテンツ:0.14兆ウォン(前年同期比+28%)
・クラウド:0.09兆ウォン(前年同期比+48%)
セグメント別の売上高構成比は、検索プラットフォームが50%、eコマースが22%、フィンテックが14%を占めます。
2021Q2のネイバーペイのGMVは9.1兆ウォン(前年同期比+47%)となりました。
利益の推移
FY2020の営業利益は1.22兆ウォンと、前年度比+5.2%、過去5年間で年率+7.9%となりました。
営業利益率は22.9%と、前年度の26.5%から悪化しました。
2021Q2の営業利益は0.34兆ウォン(前年同期比+8.9%)となりました。
FY2020のEPSは7,813ウォンと、前年度比+21.7%、過去5年間で年率+14.1%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1.45兆ウォンと、前年度比+6.7%、過去5年間で年率+11.2%となりました。
営業キャッシュフローマージンは27.3%と、前年度の31.1%から悪化しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは0.58兆ウォンと、前年度比▲31.2%、過去5年間で年率▲4.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージンは11.0%と、前年度の19.4%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元に消極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.7%、フリーキャッシュフロー利回りは1.4%です。
過去5年間の配当利回りは0.2%程度です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに10%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは402ウォンと、前年度比+6.9%、過去5年間で年率+12.8%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去3年間で年率+0.2%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去5年間のROICは40%程度と、投資効率は高いです。
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+56.8%と、世界株式を投資対象とするVT(+14.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+17.3%と、VT(年率+9.9%)を上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+10.7%と、VT(+6.5%)を上回りました。
競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株価上昇率(0700.HKは香港ドル建て、035720.KS、035420.KSは韓国ウォン建て、4689.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ネイバー(035420.KS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+57%と、12社平均(+102%)を下回り、12社中第8位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+68%と、11社平均(+104%)を下回り、11社中第6位となりました。
過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
過去5年間をみると、最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が買いのチャンスです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(兆ウォン)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+70%、2年目〜4年目+30%、5年目〜6年目+20%、7年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+70%、2年目〜5年目+30%、6年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+70%、2年目〜5年目+20%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は385,615ウォンとなります。
・メインシナリオ:385,615ウォン
・アップサイドシナリオ:541,972ウォン
・ダウンサイドシナリオ:288,145ウォン
ネイバー(Naver Corp、035420.KS)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は1.66兆ウォン(前年同期比+30.4%)、営業利益は0.34兆ウォン(前年同期比+8.9%)となりました。
DCF法による目標株価は385,615ウォンのため、2021年7月末時点の株価433,500ウォンより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が4.3倍(年率+16%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
足もと株価が急騰したことから、割安感は薄れました。