過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とホンダへの投資についてコメントします。
会社概要
本田技研工業(Honda Motor Co.,Ltd.、7267.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:自動車・自動車部品
サブ産業グループ:自動車製造
株式時価総額:5.2兆円(日本ランキング第23位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:490億ドル(2021年3月末、MSCI)
ホンダは、日本に本拠を置く、二輪(二輪車、ATV、Side-by-Side、関連部品)、四輪(四輪車、関連部品)、金融サービス、ライフクリエーション等(パワープロダクツ等)の事業を展開する、大手自動車メーカーです。
四輪事業における日本と米国市場の貢献利益(FY2019)は、ライトトラック(SUV、ミニバン等)が全カテゴリ平均より30%高く、パッセンジャーカー(セダン、コンパクト等)が20%低く、軽自動車が45%低い水準です。
自動車製造に占めるホンダの浮動株調整後株式時価総額比率は4%です。

(参考)競合他社(自動車製造)の株式時価総額

売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は13兆1,705億円と、前年度比▲11.8%、過去5年間で年率▲2.0%となりました。

事業別の売上高は、以下の通りです。
・二輪:1兆7,873億円、前年度比▲13%
・四輪:8兆7,793億円、前年度比▲14%
・金融サービス:2兆5,068億円、前年度比▲4%
・ライフクリエーション等:3,418億円、前年度比▲3%

セグメント別の売上高構成比は、二輪が13%、四輪が65%、金融サービスが19%、ライフクリエーション等が3%を占めます。

二輪のグループ販売台数は、以下の通りです。
・全体:1,513万台、前年度比▲22%
・日本:22万台、前年度比+5%
・北米:33万台、前年度比+1%
・欧州:23万台、前年度比▲2%
・アジア:1,332万台、前年度比▲23%
・その他:103万台、前年度比▲21%

四輪のグループ販売台数は、以下の通りです。
・全体:455万台、前年度比▲5%
・日本:103万台、前年度比▲21%
・北米:148万台、前年度比▲19%
・欧州:10万台、前年度比▲24%
・アジア:225万台、前年度比+15%
・その他:13万台、前年度比▲39%

地域別の売上高は、以下の通りです。
・日本:3兆8,678億円、前年度比▲13%
・北米:7兆4,808億円、前年度比▲13%
・欧州:6,818億円、前年度比▲12%
・アジア:3兆4,588億円、前年度比▲10%
・その他:4,345億円、前年度比▲37%

地域別の売上高構成比は、日本が24%、北米が47%、欧州が4%、アジアが22%、その他が3%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は6,602億円と、前年度比+4.2%となりました。
営業利益率は5.0%と、前年度の4.2%から改善しました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

セグメント別の営業利益構成比は、二輪が34%、四輪が14%、金融サービスが54%、ライフクリエーション等が▲2%を占めます。

地域別の営業利益率は、以下の通りです。

地域別の営業利益構成比は、日本が▲12%、北米が70%、欧州が4%、アジアが38%、その他が▲1%を占めます。

FY2020のEPSは381円と、前年度比+46.4%、過去5年間で年率+14.8%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1兆0,724億円と、前年度比+9.5%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は8.1%と、前年度の6.6%から改善しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは5,212億円と、前年度比+37.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は4.0%と、前年度の2.5%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、自社株買い実施はほぼなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は11.5%、フリーキャッシュフロー利回りは9.1%と、バリュエーション面で割安感があります。
FY2020の配当利回りは3.3%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(利益)は、50%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは110円と、前年度比▲1.8%、過去5年間で年率+4.6%となりました。
FY2021のDPSは110円(前年度比+0.0%)の予定です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.9%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去3年間のROICは4%と低水準です。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。
FY2020のBPSは5,260円と、前年度比+13.4%、過去5年間で年率+7.0%となりました。
FY2020のPBRは0.6倍と低水準です。

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+36.6%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を下回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+1.5%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく下回りました。

競合他社(自動車製造)の株価上昇率(7203.T、7267.Tは日本円建て、VOW.DE、DAI.DE、BMW.DEはユーロ建て、1211.HKは香港ドル建て)は、以下の通りです。
ホンダ(7267.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲7%と、11社平均(+211%)を下回り、11社中第11位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲25%と、10社平均(+116%)を下回り、10社中第9位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
2014年1月から長いドローダウン(最大▲40%超)が続いており、まだ最高値を更新していません。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.5%、金利が1%上昇した場合は6.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+3%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+7%、4年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は3,285円となります。

本田技研工業(Honda Motor Co.,Ltd.、7267.T)への投資について
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は13兆1,705億円(前年度比▲11.8%)、純利益は6,574億円(前年度比+44.3%)と、減収増益となりました。
FY2021のガイダンス(前提:1ドル=105円)は、以下の通りです。
・売上高:15兆2,000億円
・営業利益:6,600億円
・純利益:5,900億円
・グループ販売台数:二輪1,800万台、四輪500万台、ライフクリエーション590万台
DCF法による目標株価は3,285円のため、2021年5月末時点の株価3,353円とほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.8倍(年率+6%)、FY2021にフリーキャッシュフローマージンが3.5%まで低下後、横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
投資効率の低さは問題です。





