過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とテスラへの投資についてコメントします。
会社概要
テスラ(Tesla、TSLA)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:自動車・自動車部品
サブ産業グループ:自動車製造
株式時価総額:1.06兆ドル(世界ランキング第6位、2021年12月末)
テスラは、アメリカに本拠を置く、EV(電気自動車)の製造・販売等を行う企業です。
(参考)競合他社(自動車製造)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
テスラ(TSLA) | 1.06兆ドル |
トヨタ自動車(7203.T) | 2,568億ドル |
フォルクスワーゲン(VOW.DE) | 1,282億ドル |
BYD(1211.HK) | 990億ドル |
リビアン(RIVN) | 916億ドル |
ゼネラル・モーターズ(GM) | 851億ドル |
フォード・モーター(F) | 830億ドル |
ダイムラー(DAI.DE) | 826億ドル |
BMW(BMW.DE) | 662億ドル |
フェラーリ(RACE) | 637億ドル |
ルシード・モータース(LCID) | 626億ドル |
ステランティス(STLA) | 588億ドル |
グレート・ウォール・モーター/長城汽車(2333.HK) | 583億ドル |
ボルボ(VOLV-B.ST) | 570億ドル |
ニーオ(NIO) | 504億ドル |
ホンダ(7267.T) | 488億ドル |
シャオペン(XPEV) | 431億ドル |
ヒュンダイ・モーター/現代自動車(005380.KS) | 403億ドル |
売上高(セグメント別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は538億ドルと、前年度比+70.7%、過去5年間で年率+50.4%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は177億ドル(前年同期比+64.9%)と、コンセンサス(166億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・自動車:160億ドル、前年同期比+71%
・その他:18億ドル、前年同期比+23%
温暖化ガス排出枠の売上高は3.1億ドルと、自動車売上のうち2.0%を占めます。
2021Q2で初めて、純利益が温暖化ガス排出枠を上回りました。
納車台数と平均販売価格の推移
納車台数は、以下の通りです。
・全体:30.9万台、前年同期比+71%
・モデルS/X:1.2万台、前年同期比▲38%
・モデル3/Y:29.7万台、前年同期比+84%
平均販売価格は5.1万ドル(前年同期比+2.8%)となりました。
利益の推移
FY2021の粗利益は136億ドルと、前年度比+105.2%、過去5年間で年率+54.3%となりました。
粗利益率は25.3%と、前年度の21.0%から改善しました。
2021Q4の粗利益は48億ドル(前年同期比+134.6%)となりました。
自動車の粗利益は49億ドル(前年同期比+118%)、粗利益率は30.6%(前年同期の24.1%から改善)となりました。
FY2021の非GAAP EPSは6.78ドルと、前年度比+202.7%となりました。
2021Q4の非GAAP EPSは2.54ドル(前年同期比+217.5%)と、コンセンサス(2.38ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは115億ドルと、前年度比+93.5%、過去3年間で年率+76.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は21.4%と、前年度の18.8%から改善しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは46億ドル(前年同期比+51.9%)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは50億ドルと、前年度比+80.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は9.3%と、前年度の8.8%から改善しました。
2021Q4のフリーキャッシュフローは28億ドル(前年同期比+48.6%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+9.4%となりました。
売上高の実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9勝、1敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9勝、1敗です。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 63 | 65 | × | 0.37 | -0.05 | ○ |
2019Q4 | 74 | 71 | ○ | 0.41 | 0.35 | ○ |
2020Q1 | 60 | 59 | ○ | 0.23 | -0.04 | ○ |
2020Q2 | 60 | 54 | ○ | 0.44 | -0.03 | ○ |
2020Q3 | 88 | 83 | ○ | 0.76 | 0.60 | ○ |
2020Q4 | 107 | 105 | ○ | 0.80 | 1.05 | × |
2021Q1 | 104 | 103 | ○ | 0.93 | 0.78 | ○ |
2021Q2 | 120 | 114 | ○ | 1.45 | 0.98 | ○ |
2021Q3 | 138 | 137 | ○ | 1.86 | 1.61 | ○ |
2021Q4 | 177 | 166 | ○ | 2.54 | 2.38 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+49.8%と、S&P500(+26.9%)を大きく上回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+89.9%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。

2021Q4の株価上昇率は+36.3%と、S&P500(+10.6%)を上回りました。

競合他社(自動車製造)の株価上昇率(7203.T、7267.Tは日本円建て、VOW3.DE、DAI.DE、BMW.DEはユーロ建て、1211.HK、2333.HKは香港ドル建て、VOLV-B.STはスウェーデン・クローナ建て、005380.KSは韓国ウォン建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
テスラ(TSLA)の株価上昇率は、2021年の1年間で+50%と、16社平均(+26%)を上回り、16社中第3位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+1,488%と、15社平均(+243%)を上回り、15社中第1位となりました。

2012年2月から2022年1月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から20〜30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを9.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+80%、2年目〜3年目+100%、4年目〜6年目+30%、7年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+80%、2年目〜3年目+100%、4年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+80%、2年目〜3年目+50%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は1,037ドルとなります。
・メインシナリオ:1,037ドル
・アップサイドシナリオ:1,338ドル
・ダウンサイドシナリオ:479ドル
テスラ(Tesla、TSLA)株への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は177億ドル(コンセンサス166億ドル)、非GAAP EPSは2.54ドル(コンセンサス2.38ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は1,037ドルのため、2022年1月末時点の株価937ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が15.4倍(年率+31%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
2021年12月末時点で株式時価総額は1兆ドルを突破し、今後数年間の増収率も+50%と高い水準を維持しそうですが、売上高が市場見通しより下振れた場合のダウンサイドリスクは大きそうです。





