JT(2914)決算分析と目標株価 配当性向75%を目安とし減配へ 業績は年々悪化も、アメリカ企業なら配当維持するレベル

食品・飲料・タバコ

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と日本たばこ産業(JT)への投資についてコメントします。

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会社概要

日本たばこ産業(Japan Tobacco、2914.T)

ホームページ(IR):リンク先

国:日本

セクター:生活必需品

産業グループ:食品・飲料・タバコ

サブ産業グループ:タバコ

株式時価総額:4.2兆円(日本ランキング第29位、2020年12月末)

浮動株調整後株式時価総額:244億ドル(2020年12月末、MSCI)

JTは、日本に本拠を置く、大手タバコメーカーです。

タバコでは第4位で、タバコに占めるJTの浮動株調整後株式時価総額比率は7%です。

なお、JTは、浮動株比率が低い(大株主は、財務大臣33%超や自己株式)ため、浮動株ベースで算出される株式指数(インデックス)の時価総額は、通常の株式時価総額と比較して小さくなります。

売上高(セグメント、地域別、タバコ売上本数)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は2兆926億円と、前年度比▲3.8%、過去5年間では年率▲1.5%となりました。

 

セグメント別(その他等除く)の売上高は、以下の通りです。

・国内たばこ:5,632億円、前年度比▲9.0%

・海外たばこ:1兆3,308億円、前年度比▲0.6%

・医薬:790億円、前年度比▲10.8%

・加工食品:1,493億円、前年度比▲5.8%

 

セグメント別の売上高構成比は、海外たばこが63%を占めます。

 

国内紙巻販売数量は727億本と、前年度比▲3.7%となり、海外総販売数量は4,357億本と、前年度比▲2.3%となりました。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の調整後営業利益は4,870億円と、前年度比▲5.6%、過去5年間では年率▲4.9%となりました。

営業利益率は23.3%と、前年度の23.7%から悪化しました。

 

セグメント別の調整後営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは175円と、前年度比▲10.8%、過去5年間では年率▲8.4%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは5,198億円と、前年度比▲3.8%、過去5年間では年率+2.1%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は24.8%と、前年度の24.8%とほぼ同水準となりました。

 

FY2020の設備投資額/売上高は5.2%と、前年度の6.1%から低下しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフロー(会社定義と異なる)は4,112億円と、前年度比+1.0%、過去5年間では年率+3.8%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は19.7%と、前年度の18.7%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の支払配当総額は2,731億円と、フリーキャッシュフローの範囲内です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は8.3%、フリーキャッシュフロー利回りは11.0%と高く、バリュエーション面では割安です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、100%を下回りました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

過去5年間の増配率は年率+5.5%ですが、FY2021は130円へ減配予定です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

過去5年間の発行済株式数は、ほぼ横ばいです。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは概ね10%程度と、タバコメーカーとして、投資効率が高いとは言い難い水準です。

 

有利子負債の推移

有利子負債はほぼ横ばいですが、現金等の増加によって、純有利子負債は減少しました。

 

株価上昇率

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は▲53%(年率▲14.0%)と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率+61%(年率+9.9%)を大きく下回りました。

 

競合他社(タバコ)の株価上昇率(JTは日本円建て、IMBはポンド建て、SWMAはスウェーデンクローナ建て、ITC、GGRMはインドルピー建て、KT&Gは韓国ウォン建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

日本たばこ産業(JT)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲14%と、9社平均(▲8%)を下回りました。

2018年1月から2020年12月の3年間では▲42%と、9社平均(▲22%)を下回りました。

 

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

2015年7月の最高値から最大60%超下落し、その後はほぼ横ばいです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを7.6%、金利が1%上昇した場合は8.5%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目+1.5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目▲1%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は2,137円となります。

 

日本たばこ産業(Japan Tobacco、2914.T)への投資について

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は2兆926億円(前年度比▲3.8%)、調整後営業利益は4,870億円(前年度比▲5.6%)、営業キャッシュフローは5,198億円(前年度比▲3.8%)となり、年々業績が悪化しています。

海外タバコメーカーの営業キャッシュフローマージンおよびフリーキャッシュフローマージンが30%を超えている一方、JTはそれぞれ20%代、10%台と低水準です。

また、ROICは10%程度と相対的に低く、投資効率は高くありません。

高い配当利回りが唯一の魅力でしたが、配当性向75%を目安とするため、ついに130円へ減配予定が発表されました。

業績は年々悪化しているものの、財務体質は悪くなく、十分配当を支払えるだけのキャッシュフローを生み出しています。

競合他社のアルトリアや、エネルギー会社のエクソン・モービル等、業績が厳しいアメリカ企業は多々ありますが、リストラや設備投資額の引き下げ等によって、株主重視姿勢を貫いています。

JTに限らず、他の日本企業も(欧州企業も)すぐに減配する傾向があり、配当好きの日本人の間でアメリカ株投資が流行る理由がよくわかります。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:2兆800億円(前年比▲0.6%)

・調整後営業利益:4,750億円(前年比▲2.5%)

・当期利益:2,400億円(前年比▲22.6%)

・フリーキャッシュフロー:FY2019は自社ビル売却もあり、大幅減

DCF法による目標株価は2,137円のため、2021年2月末時点の株価1,925円より高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が0.9倍(年率▲1%)、FY2021にフリーキャッシュフローマージンが16%まで低下後、10年後に向けて20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

大手タバコメーカーの中では、フィリップモリスが最もクオリティが高いです。

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