フィリップモリス(PM)決算分析と目標株価 タバコメーカー最大手 資本効率が高く、フリーキャッシュフローマージンは3割超

食品・飲料・タバコ

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とフィリップモリスへの投資についてコメントします。

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会社概要

フィリップ・モリス・インターナショナル(Philip Morris International、PM)

ホームページ(SECファイル):リンク先

国:アメリカ

セクター:生活必需品

産業グループ:食品・飲料・タバコ

サブ産業グループ:タバコ

株式時価総額:1,289億ドル(世界ランキング第94位、2020年12月末)

フィリップモリスは、アメリカに本拠を置く、世界最大のタバコメーカーです。

フィリップモリスとアルトリアはもともと同じ会社でしたが、2008年に、アルトリア・グループの国際部門として、フィリップモリスをスピンアウトしました。

そのため、アルトリアはアメリカ、フィリップモリスはアメリカ以外で事業を手掛けています。

なお、2019年にフィリップモリスとアルトリアの対等合併に向けて協議が行われましたが、合併は断念となりました。

フィリップモリスのビジョンは、紙巻タバコ全てを煙の出ない製品に切り替えていくことであり、そのビジョン通り、紙巻きタバコの売上本数は減少する一方、IQOS等の加熱式タバコの売上本数が大きく増加し、タバコ全体に占める加熱式タバコの売上高比率が10%を超えました。

なお、加熱式タバコは、タバコ葉を使用して味わい豊かなニコチンを含む蒸気を発生しながら、紙巻きタバコの煙と比較して有害性成分の発生を大幅に低減させます。

生活必需品セクターで第8位、食品・飲料・タバコで第4位の浮動株調整後株式時価総額(2020年12月末、MSCI)で、タバコに占めるフィリップモリスの浮動株調整後株式時価総額比率は35%です。

売上高(タバコ売上本数、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は287億ドルと、前年度比▲3.7%、過去5年間では年率+1.4%となりました。

紙巻きタバコの売上本数の増加率は前年度比▲11.1%となりましたが、加熱式タバコの売上本数の増加率は前年度比+27.6%と、急増しました。

IQOSのユーザー数は1,760万人(推計)です。

地域別の売上高は、以下の通りです。

・欧州:107億ドル、前年度比+9.0%

・東欧:34億ドル、前年度比+2.9%

・中東/アフリカ:31億ドル、前年度比▲23.6%

・南アジア/東南アジア:44億ドル、前年度比▲13.7%

・東アジア/オーストラリア:54億ドル、前年度比+1.2%

・ラテンアメリカ/カナダ:17億ドル、前年度比▲22.9%

地域別の売上高構成比は、欧州が37%を占めます。

利益(地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業利益は117億ドルと、前年度比+10.8%、過去5年間では年率+1.7%となりました。

営業利益率は40.7%と、前年度の35.3%から改善しました。

地域別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2020のEPSは5.16ドルと、前年度比+11.9%、過去5年間では年率+3.1%となりました。

キャッシュフローの推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは98億ドルと、前年度比▲2.8%、過去5年間では年率+4.5%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は34.2%と、前年度の33.9%から改善しました。

FY2020の設備投資額/売上高は2.1%と、前年度の2.9%から低下しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは92億ドルと、前年度比▲0.3%、過去5年間では年率+5.9%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は32.1%と、前年度の31.0%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の支払配当総額は74億ドルと、フリーキャッシュフローの範囲内です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は6.2%、フリーキャッシュフロー利回りは7.1%と高く、バリュエーション面では割安です。

配当利回りは5.7%と高い水準です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、100%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

過去5年間の増配率は年率+3.2%です。

(参考)過去5年間の発行済株式数

過去5年間の発行済株式数は、ほぼ横ばいです。

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは30%程度と、投資効率が非常に高いです。

なお、債務超過のためROEは大きなマイナスとなっており、ROEが投資効率を図るうえでの問題点の1つと言えます。

有利子負債の推移

有利子負債は300億ドル台前半と、ここ数年間は横ばいです。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、6勝、1敗です。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、6勝、1敗です。

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、7勝です。

株価上昇率

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は▲6%(年率▲1.2%)と、S&P500の株価上昇率+84%(年率+12.9%)を大きく下回りました。

競合他社(タバコ)の株価上昇率(JTは日本円建て、IMBはポンド建て、SWMAはスウェーデンクローナ建て、ITC、GGRMはインドルピー建て、KT&Gは韓国ウォン建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

フィリップ・モリス(PM)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲3%と、9社平均(▲8%)を上回りました。

2018年1月から2020年12月の3年間では▲22%と、9社平均(▲22%)とほぼ同水準となりました。

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

2017年5月の最高値から最大40%超下落し、その後は急速に株価が戻しています。

なお、他の大手タバコメーカーと比較すると、最大ドローダウンは小さいです。

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを8.4%、金利が1%上昇した場合は9.3%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜4年目+7%、5年目〜7年目+5%、8年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は87ドルとなります。

フィリップ・モリス・インターナショナル(Philip Morris International、PM)への投資について

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は287億ドルと、前年度比▲3.7%となりましたが、EPSは5.16ドルと、前年度比+11.9%となりました。

営業キャッシュフローマージン、フリーキャッシュフローマージンともに30%超と高水準で、キャッシュ創出力が潤沢です。

また、過去5年間のROICは30%程度と、投資効率は非常に高いです。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:+4〜7%

・非GAAP EPS:+9〜11%

・営業キャッシュフロー:〜110億ドル

・設備投資:〜8億ドル

DCF法による目標株価は87ドルのため、2021年2月末時点の株価84ドルと同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.4倍(年率+3%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが40%(FY2020:32%)まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

大手タバコメーカーの中では、フィリップモリスが最もクオリティが高いです。

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