富士フイルムHD(4901)決算分析と目標株価 ヘルスケアとスマホ/テレビ/半導体向け高機能材料が引き続き業績を牽引

富士フイルム情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と富士フイルムHDへの投資についてコメントします。

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会社概要

富士フイルムHD(FUJIFILM Corporation、4901.T)

ホームページ(有報):リンク先

国:日本

セクター:情報技術

産業グループ:テクノロジー・ハードウェアおよび機器

サブ産業グループ:テクノロジーハードウェア・コンピュータ記憶装置・周辺機器

株式時価総額:2.8兆円(日本ランキング第52位、2020年12月末)

富士フイルムHDは、日本に本拠を置く、ヘルスケア(X線画像診断などのメディカルシステム、医薬品、化粧品、サプリメント等)、マテリアルズ(ディスプレイ向け機能性フィルムや電子材料などの高機能材料等)、ドキュメント(オフィス向け複合機/プリンター/消耗品カメラ、プロダクション(印刷会社向けデジタル印刷システム)等)、イメージング(インスタントカメラ/フォトブック、ミラーレスデジタルカメラ/産業用レンズ等)の事業を展開する企業です。

医用画像情報システム(診断画像を一元管理)、偏光板保護フィルム(液晶ディスプレイ向け)は、世界シェア1位です。

(参考)競合他社(テクノロジーハードウェア・コンピュータ記憶装置・周辺機器)の株式時価総額

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆1,925億円と、前年度比▲5.3%、過去5年間で年率▲2.3%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・ヘルスケア:5,678億円、前年度比+13%

・マテリアルズ:4,848億円、前年度比▲7%

・ドキュメント:8,547億円、前年度比▲11%

・イメージング:2,852億円、前年度比▲14%

 

セグメント別の売上高構成比は、ヘルスケアが26%、マテリアルズが22%、ドキュメントが39%、イメージングが13%を占めます。

 

地域別の売上高構成比は、日本が42%、米州が19%、欧州が12%、アジア/オセアニアが26%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は1,655億円と、前年度比▲11.3%、過去5年間で年率+0.1%となりました。

営業利益率は7.5%と、前年度の8.1%から悪化しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは452円と、前年度比+48.0%、過去5年間で年率+12.6%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは2,374億円と、前年度比+102.3%、過去5年間で年率▲2.4%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は10.8%と、前年度の5.1%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは1,118億円と、前年度比+1,362%、過去5年間で年率▲9.5%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は5.1%と、前年度の0.3%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020は自社株買い実施なしとなりました。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は6.9%、フリーキャッシュフロー利回りは4.3%です。

FY2020の配当利回りは1.5%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向(利益)は、20〜30%前後です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは100円と、前年度比+5.3%、過去5年間で年率+9.0%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲3.7%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは5〜7%です。

 

BPSとPBRの推移

以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。

FY2020のBPSは5,514円と、前年度比+12.8%、過去5年間で年率+4.3%となりました。

FY2020のPBRは1.2倍です。

 

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。

ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。

金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

 

株価上昇率

FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+20.8%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を下回りました。

過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+8.1%と、VT ETF(年率+11.0%)を下回りました。

 

競合他社(テクノロジーハードウェア・コンピュータ記憶装置・周辺機器)の株価上昇率(005930.KSは韓国ウォン建て、1810.HK、0992.HKは香港ドル建て、4901.T、7751.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

富士フイルムHD(4901.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+4%と、13社平均(+37%)を下回り、13社中第10位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+18%と、11社平均(+48%)を下回り、11社中第7位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から15%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

株価は長年横ばいでしたが、2021年以降株価は大きく上昇し、強い上昇トレンドです。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.2%、金利が1%上昇した場合は6.2%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+12%、2年目+10%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+12%、2年目+10%、3年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+12%、2年目+8%、3年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は7,454円となります。

 

富士フイルムHD(FUJIFILM Corporation、4901.T)への投資について

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆1,925億円(前年度比▲5.3%)、営業利益は1,655億円(前年度比▲11.3%)、純利益は1,812億円(前年度比+45.0%)と、減収増益となりました。

ヘルスケアを中心としたベンチャー企業の投資有価証券の売却益・評価益によって純利益は大きく増加しました。

FY2021のガイダンス(前提:1ドル=104円、ユーロ=124円)は、以下の通りです。

・売上高:2兆4,400億円(前年度比+11.3%)

・営業利益:1,800億円(前年度比+8.8%)

・純利益:1,300億円(前年度比▲28.3%)

DCF法による目標株価は7,454円のため、2021年5月末時点の株価7,626円とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.5倍(年率+4%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが6%(FY2020:5%)まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

ROEとPBRの関係による目標株価は、ROEが9%とした場合、8,100円となります。

引き続き、ヘルスケアを中心の業績拡大が期待できます。

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