ファーストリテイリング(9983)決算分析と目標株価 カジュアル衣料では世界第2位の株式時価総額 中国で売上高を伸ばす

ファーストリテイリング一般消費財・サービス

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とファーストリテイリングへの投資についてコメントします。

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会社概要

ファーストリテイリング(Fast Retailing Co., Ltd.、9983.T)

ホームページ(有報):リンク先

国:日本

セクター:一般消費財・サービス

産業グループ:小売

サブ産業グループ:衣料小売り

株式時価総額:9.8兆円(日本第6位、2020年12月末)

ファーストリテイリングは、日本に本拠を置く、国内ユニクロ、海外ユニクロ、ジーユー、グローバルブランド(セオリー、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タム等)、その他の事業を展開する企業を傘下に持つ持株会社です。

株式時価総額は、カジュアル衣料のなかでは、ZARAの親会社であるインディテックス🇪🇸に次いで、世界第2位です。

高級ブランドなども含めた広義のアパレルでは、LVMH🇫🇷、ナイキ🇺🇸、ディオール🇫🇷、エルメス🇫🇷、インディテックス🇪🇸、ケリング🇫🇷に次いで、世界第7位の株式時価総額です。

(参考)競合他社(衣料小売り)の株式時価総額

売上高(セグメント別)の推移

FY2020(2019年9月-2020年8月期)の売上高は2兆0,088億円と、前年度比▲12.3%、過去5年間で年率+3.6%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・国内ユニクロ:8,069億円、前年度比▲8%

・海外ユニクロ(中国/香港/台湾):4,560億円、前年度比▲9%

・海外ユニクロ(除く中国/香港/台湾):2,045億円、前年度比▲33%

・海外ユニクロ(北米/欧州):1,834億円、前年度比▲15%

・ジーユー:2,461億円、前年度比+3%

・グローバルブランド:1,096億円、前年度比▲27%

 

セグメント別の売上高構成比は、国内ユニクロが40%、海外ユニクロ(中国/香港/台湾)が23%を占めます。

 

国内ユニクロのEコマース売上高は1,076億円(前年度比+29%)、国内ユニクロの売上高に占める比率は13.3%となりました。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は1,493億円と、前年度比▲42.0%、過去5年間で年率▲1.9%となりました。

営業利益率は7.4%と、前年度の11.2%から悪化しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは884円と、前年度比▲44.4%、過去5年間で年率▲3.9%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは2,649億円と、前年度比▲11.9%、過去5年間で年率+14.4%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は13.2%と、前年度の13.1%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは1,974億円と、前年度比▲15.9%、過去5年間で年率+18.7%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は9.8%と、前年度の10.2%から悪化しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いの実施はなしです。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は1.4%、フリーキャッシュフロー利回りは3.1%です。

FY2020の配当利回りは0.8%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、100%を下回りました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは480円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+6.5%となりました。

FY2021のDPSは480円(前年度比+0.0%)の予定です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+0.0%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

FY2017から2019のROICは30%超と、高い水準です。

 

株価上昇率

FY2020(2019年9月から2020年8月末)の株価上昇率は+1.7%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+13.5%)を下回りました。

過去5年間(2015年9月から2020年8月末)の株価上昇率は年率+5.1%と、VT ETF(年率+7.7%)を下回りました。

 

競合他社(衣料小売り)の株価上昇率(ITX.MCはユーロ建て、9983.Tは日本円建て、HM-B.STはスウェーデンクローナ、その他はドル建て)は、以下の通りです。

ファーストリテイリング(9983.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+42%と、8社平均(+21%)を上回り、8社中第2位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+106%と、8社平均(+33%)を上回り、8社中第2位となりました。

 

過去10年間(2011年5月から2021年4月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

2015年8月からわずか1年で▲50%超のドローダウンが発生しました。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.9%、金利が1%上昇した場合は5.7%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+20%、2年目〜4年目+15%、5年目〜6年目+10%、7年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+20%、2年目〜6年目+15%、7年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+20%、2年目+15%、3年目〜5年目+7%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は92,278円となります。

 

ファーストリテイリング(Fast Retailing Co., Ltd.、9983.T)への投資について

FY2020(2019年9月-2020年8月期)の売上高は2兆0,088億円(前年度比▲12.3%)、営業利益は1,493億円(前年度比▲42.0%)、純利益は904円(前年度比▲44.4%)と、減収減益となりました。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:2兆2,100億円(前年度比+10.0%)

・営業利益:2,550億円(前年度比+70.7%)

・純利益:1,650億円(前年度比+82.6%)

DCF法による目標株価は92,278円のため、2021年5月末時点の株価89,170円とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+7%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

政治的問題で、中国側につくのか、欧米側につくのか大変そうですが、欧米ではあまり稼いでいないことや、政治的問題で中国側についたとしても日本の売上にほとんど影響を与えないことを考えると、今の姿勢を貫くのは理解できます。

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