過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とP&Gへの投資についてコメントします。
会社概要
P&G(Procter & Gamble、PG)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:生活必需品
産業グループ:家庭用品・パーソナル用品
サブ産業グループ:家庭用品
株式時価総額:3,959億ドル(世界ランキング第21位、2021年12月末)
P&Gは、アメリカに本拠を置く、日用品を製造・販売する世界トップクラスの企業です。
スキンケアではジレットやSK II、ヘアケアではパンテーン、グルーミングではブラウンやジレット、ホームケアではファブリースやジョイ、ファブリックケアではアリエール、ベビーケアではパンパースなど、様々なブランドを提供しています。
(参考)競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
プロクター・アンド・ギャンブル(PG)🇺🇸 | 3,959億ドル |
ロレアル(OR.PA)🇫🇷 | 2,638億ドル |
ユニリーバ(UL)🇬🇧 | 1,380億ドル |
エスティローダー(EL)🇺🇸 | 1,333億ドル |
コルゲート・パルモリーブ(CL)🇺🇸 | 719億ドル |
レキットベンキーザー(RKT.L)🇬🇧 | 624億ドル |
キンバリー・クラーク(KMB)🇺🇸 | 481億ドル |
LG生活健康(051905.KS)🇰🇷 | 381億ドル |
ヘンケル(HEN3.DE)🇩🇪 | 351億ドル |
ユニチャーム(8113.T)🇯🇵 | 261億ドル |
チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)🇺🇸 | 256億ドル |
花王(4452.T)🇯🇵 | 249億ドル |
バイヤスドルフ(BEI.DE)🇩🇪 | 233億ドル |
資生堂(4911.T)🇯🇵 | 223億ドル |
エシティ(ESSITY-B.ST)🇸🇪 | 218億ドル |
クロロックス (CLX)🇺🇸 | 214億ドル |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2021(2020年7月-2021年6月期)の売上高は761億ドルと、前年度比+7.3%、過去5年間で年率+3.1%となりました。
2022Q2(2021年10−12月期)の売上高は210億ドル(前年同期比+6.1%)と、コンセンサス(203億ドル)を上回りました。

売上高増加率のうち、量+3%、価格+3%、ミックス+0%、その他+0%、為替+0%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・美容:39億ドル、前年同期比+3%
・グルーミング:18億ドル、前年同期比+4%
・ヘルスケア:30億ドル、前年同期比+8%
・ファブリック&ホームケア:70億ドル、前年同期比+7%
・ベビー・女性・ファミリーケア:51億ドル、前年同期比+5%
セグメント別の売上高構成比は、ファブリック&ホームケアが34%、ベビー・女性・ファミリーケアが25%、美容が19%を占めます。

地域別の売上高構成比は、北米が47%、欧州が22%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2021の営業利益は180億ドルと、前年度比+14.5%、過去5年間で年率+6.3%となりました。
営業利益率は23.6%と、前年度の22.1%から改善しました。
2022Q2の営業利益は52億ドル(前年同期比▲3.9%)となりました。

セグメント別の純利益率は、以下の通りです。

FY2021のEPSは5.50ドルと、前年度比+10.9%、過去5年間で年率+8.3%となりました。
2022Q2の非GAAP EPSは1.66ドル(前年同期比+1.2%)と、コンセンサス(1.65ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは184億ドルと、前年度比+5.6%、過去5年間で年率+3.5%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は24.1%と、前年度の24.5%とほぼ同水準となりました。
2022Q2の営業キャッシュフローは51億ドル(前年同期比▲5.6%)となりました。

FY2021のフリーキャッシュフローは156億ドルと、前年度比+8.8%、過去5年間で年率+5.2%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は20.5%と、前年度の20.2%とほぼ同水準となりました。
2022Q2のフリーキャッシュフローは45億ドル(前年同期比▲7.5%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は4.1%、フリーキャッシュフロー利回りは4.4%です。
総還元利回りは5%程度と、比較的高い水準です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2021の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに60%程度です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは3.24ドルと、前年度比+7.0%、過去5年間ので年率+4.0%となりました。
65年連続増配です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.8%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは15%程度と、投資効率は比較的高いです。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、8勝、2敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、8勝、2敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、10勝です。
売上高(億ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q1 | 178 | 174 | ○ | 1.36 | 1.24 | ○ | 1.37 | 1.24 | ○ |
2020Q2 | 182 | 184 | × | 1.41 | 1.38 | ○ | 1.42 | 1.37 | ○ |
2020Q3 | 172 | 173 | × | 1.12 | 1.17 | × | 1.17 | 1.13 | ○ |
2020Q4 | 177 | 170 | ○ | 1.07 | 1.05 | ○ | 1.16 | 1.01 | ○ |
2021Q1 | 193 | 184 | ○ | 1.63 | 1.43 | ○ | 1.63 | 1.42 | ○ |
2021Q2 | 197 | 193 | ○ | 1.47 | 1.49 | × | 1.64 | 1.51 | ○ |
2021Q3 | 181 | 180 | ○ | 1.26 | 1.19 | ○ | 1.17 | 1.10 | ○ |
2021Q4 | 189 | 184 | ○ | 1.13 | 1.07 | ○ | 1.13 | 1.09 | ○ |
2022Q1 | 203 | 199 | ○ | 1.61 | 1.59 | ○ | 1.61 | 1.59 | ○ |
2022Q2 | 210 | 203 | ○ | 1.66 | 1.65 | ○ | 1.66 | 1.65 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+12.8%と、S&P500(+38.6%)を下回りました。
過去5年間(2016年7月から2021年6月末)の株価上昇率は年率+9.8%と、S&P500(年率+15.4%)を下回りました。
2022Q2の株価上昇率は+17.0%と、S&P500(+10.6%)を上回りました。

競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株価上昇率(OR.PA、HEN3.DE、BEI.DEはユーロ建て、RKT.Lはポンド建て、8113.T、4452.T、4911.Tは日本円建て、051905.KSは韓国ウォン建て、ESSITY-B.STはスウェーデン・クローナ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
P&G(PG)の株価上昇率は、2021年の1年間で+18%と、16社平均(+2%)を上回り、16社中第3位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+78%と、16社平均(+33%)を上回り、16社中第3位となりました。

株式市場全体の下落局面における株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
P&Gは、下落相場に強いと言えます。

過去10年間(2012年1月から2021年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
コロナショック等株式市場が大きく下落した局面では、下落率が抑制されています。
最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあるため、その場合に投資し、過去2回は最高値から20%程度下落しているため、その場合に追加投資すると報われそうです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜4年目+0%、5年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は163ドルとなります。
・メインシナリオ:163ドル
・アップサイドシナリオ:184ドル
・ダウンサイドシナリオ:141ドル
P&G(Procter & Gamble、PG)への投資について
2022Q2(2021年10−12月期)の売上高は210億ドル(コンセンサス203億ドル)、非GAAP EPSは1.66ドル(コンセンサス1.65ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2022のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:+3〜4%(コンセンサス+3.96%)
・非GAAP EPS:+3〜6%(コンセンサス+4.34%)
DCF法による目標株価は163ドルのため、2021年12月末時点の株価164ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.3倍(年率+3%)、フリーキャッシュフローマージンが18%まで低下することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
長期的にみて株式市場全体を上回る株価上昇率は期待できませんが、ディフェンシブ銘柄として保有したい銘柄の1つです。
投資継続です。





