過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とクロロックスへの投資についてコメントします。
会社概要
クロロックス(The Clorox Company、CLX)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:生活必需品
産業グループ:家庭用品・パーソナル用品
サブ産業グループ:家庭用品
株式時価総額:224億ドル(2021年6月末)
クロロックスは、アメリカに本拠を置く、クリーニング関連製品(家庭用洗剤や漂白剤等)や家庭用品(ゴミ袋等)等を製造・販売する企業です。
(参考)競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
プロクター・アンド・ギャンブル(PG)🇺🇸 | 3,303 |
ロレアル(OR.PA)🇫🇷 | 2,508 |
ユニリーバ(UL)🇬🇧 | 1,529 |
エスティローダー(EL)🇺🇸 | 1,153 |
コルゲート・パルモリーブ(CL)🇺🇸 | 688 |
レキットベンキーザー(RKT.L)🇬🇧 | 638 |
ヘンケル(HEN3.DE)🇩🇪 | 458 |
キンバリー・クラーク(KMB)🇺🇸 | 451 |
花王(4452.T)🇯🇵 | 298 |
資生堂(4911.T)🇯🇵 | 295 |
バイヤスドルフ(BEI.DE)🇩🇪 | 276 |
LG生活健康(051905.KS)🇰🇷 | 275 |
エシティ(ESSITY-B.ST)🇸🇪 | 235 |
ユニチャーム(8113.T)🇯🇵 | 241 |
クロロックス (CLX)🇺🇸 | 224 |
チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)🇺🇸 | 209 |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2021(2020年7月-2021年6月期)の売上高は73億ドルと、前年度比+9.2%、過去5年間で年率+5.0%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・ヘルス&ウェルネス(クリーニング関連):30億ドル、前年度比+8%
・家庭用品(ごみ袋、ラップ等):20億ドル、前年度比+10%
・ライフスタイル(食品、浄水フィルター等):12億ドル、前年度比+6%
・海外:12億ドル、前年度比+14%
セグメント別の売上高構成比は、ヘルス&ウェルネスが41%、家庭用品が27%を占めます。
利益(セグメント別)の推移
FY2021の営業利益は13億ドルと、前年度比▲1.4%、過去5年間で年率+3.3%となりました。
営業利益率は17.1%と、前年度の19.0%から悪化しました。
セグメント別の税引前純利益率は、以下の通りです。
FY2021のEPSは5.58ドルと、前年度比▲24.2%、過去5年間で年率+2.5%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは13億ドルと、前年度比▲17.5%、過去5年間で年率+10.4%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は17.4%と、前年度の23.0%から悪化しました。
FY2021のフリーキャッシュフローは9億ドルと、前年度比▲26.9%、過去5年間で年率+9.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は12.9%と、前年度の19.2%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
過去5年間、自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は3.1%、フリーキャッシュフロー利回りは4.1%です。
FY2021の配当利回りは2.5%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、100%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは4.54ドルと、前年度比+4.6%、過去5年間で年率+7.7%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.7%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは20%超と、投資効率は比較的高いと言えます。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、5勝、2敗、2引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、7勝、2敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q1 | 15.1 | 15.1 | ▲ | 1.59 | 1.54 | ○ |
2020Q2 | 14.5 | 14.5 | ▲ | 1.46 | 1.32 | ○ |
2020Q3 | 17.8 | 16.9 | ○ | 1.89 | 1.67 | ○ |
2020Q4 | 19.8 | 18.6 | ○ | 2.41 | 2.01 | ○ |
2021Q1 | 19.2 | 17.4 | ○ | 3.22 | 2.26 | ○ |
2021Q2 | 18.4 | 17.5 | ○ | 2.03 | 1.75 | ○ |
2021Q3 | 17.8 | 18.7 | × | -0.49 | 1.49 | × |
2021Q4 | 18.0 | 19.1 | × | 0.78 | 1.14 | × |
2022Q1 | 18.1 | 17.0 | ○ | 1.14 | 1.02 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は▲17.3%と、S&P500(+40.8%)を下回りました。
過去5年間(2016年7月から2021年6月末)の株価上昇率は年率+5.4%と、S&P500(年率+15.4%)を大きく下回りました。
競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株価上昇率(OR.PA、HEN3.DE、BEI.DEはユーロ建て、RKT.Lはポンド建て、4452.T、4911.T、8113.Tは日本円建て、051905.KSは韓国ウォン建て、ESSITY-B.STはスウェーデン・クローナ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
クロロックス(CLX)の株価上昇率は、2020年の1年間で+32%と、16社平均(+8%)を上回り、16社中第2位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+36%と、16社平均(+29%)を上回り、16社中第6位となりました。
過去10年間(2011年11月から2021年10月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
過去10年間のなかで、足もとの最大ドローダウン(▲30%超)が最も大きいです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲5%、2年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲5%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲5%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は160ドルとなります。
・メインシナリオ:160ドル
・アップサイドシナリオ:189ドル
・ダウンサイドシナリオ:125ドル
クロロックス(The Clorox Company、CLX)への投資について
FY2021(2020年7月-2021年6月期)の売上高は73億ドル(前年度比+9.2%)、EPSは5.58ドル(前年度比▲24.2%)と、増収減益となりました。
FY2022のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:▲6〜▲2%
・EPS:5.05〜5.35ドル
・非GAAP EPS:5.40〜5.70ドル
DCF法による目標株価は160ドルのため、2021年10月末時点の株価163ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.2倍(年率+2%)、今後10年間のフリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
コロナによって業績が一時的に急拡大して株価が大きく上昇しましたが、需要減少に加え、資源価格上昇や物流コスト等の増加により足もとの業績は苦戦しています。
値上げにより業績回復が期待できますが、長期的にみて、市場平均を上回る株価上昇率は厳しそうです。