過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とストライカーへの投資についてコメントします。
会社概要
ストライカー(Stryker、SYK)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:ヘルスケア機器・サービス
サブ産業グループ:ヘルスケア機器
株式時価総額:921億ドル(2020年12月末)
ストライカーは、アメリカに本拠を置く、整形外科に強みがある医療機器等を製造・販売するヘルスケア企業です。
2019年まで40期連続増収だったものの、コロナショックがあった2020年に減収となりました。
(参考)競合他社(ヘルスケア機器)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アボットラボラトリーズ(ABT) | 2,060 |
ダナハー(DHR) | 1,914 |
メドトロニック(MDT) | 1,670 |
インテュイティブ・サージカル(ISRG) | 1,089 |
ストライカー(SYK) | 979 |
ベクトン・ディッキンソン(BDX) | 707 |
シーメンス・ヘルスケア(SHL.DE) | 701 |
エドワーズライフサイエンス(EW) | 644 |
ボストン・サイエンティフィック(BST) | 608 |
アイデックスラボラトリーズ(IDXX) | 539 |
コーニンクレッカ フィリップス(PHG) | 453 |
バクスターインターナショナル(BAX) | 405 |
デクスコム(DXCM) | 413 |
ザルトリウス(SRT.DE) | 339 |
レスメド(RMD) | 359 |
ジンマー・バイオメットHD(ZBH) | 335 |
テルモ(4543.T) | 308 |
ストラウマンHD(STMN.SW) | 262 |
シスメックス(6869.T) | 248 |
ソノバHD(SOON.SW) | 243 |
オリンパス(7733.T) | 242 |
ノボキュア(NVCR) | 229 |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は144億ドルと、前年度比▲3.6%、過去5年間で年率+7.6%となりました。
2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は41.6億ドル(前年同期比+11.3%)と、コンセンサス(42.3億ドル)を下回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・整形外科:15.3億ドル、前年同期比+16%
・メディカル/手術用機器:17.6億ドル、前年同期比+10%
・脳神経技術&脊椎:8.8億ドル、前年同期比+7%
セグメント別の売上高構成比は、整形外科が37%、メディカル/手術用機器が42%、脳神経技術&脊椎が21%を占めます。
地域別の売上高構成位は、アメリカが73%、欧州/中東/アフリカが13%、アジアパシフィックが11%、その他が3%を占めます。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は22億ドルと、前年度比▲18.1%、過去5年間で年率+3.5%となりました。
営業利益率は15.5%と、前年度の18.2%から悪化しました。
2021Q3の営業利益は5.7億ドル(前年同期比▲33.2%)となりました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020の非GAAP EPSは7.43ドルと、前年度比▲10.0%、過去5年間で年率+7.7%となりました。
2021Q3のEPSは1.14ドルと、コンセンサス(1.93ドル)を下回りました。
非GAAP EPSは2.20ドル(前年同期比+2.8%)と、コンセンサス(2.28ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは33億ドルと、前年度比+49.6%、過去5年間で年率+27.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は22.8%と、前年度の14.7%から改善しました。
2021Q3の営業キャッシュフローは9.3億ドル(前年同期比+12.5%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは28億ドルと、前年度比+80.9%、過去5年間で年率+31.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は19.4%と、前年度の10.4%から改善しました。
2021Q3のフリーキャッシュフローは8.0億ドル(前年同期比+5.7%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、自社株買いの実施はなしとなりました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は1.7%、フリーキャッシュフロー利回りは3.0%です。
過去5年間の配当利回りは1%前後です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは2.36ドルと、前年度比+10.3%、過去5年間で年率+10.7%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.0%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、10勝、2敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、1勝、7敗、2引き分けです。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、10勝、2敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2018Q4 | 38 | 37 | ○ | ▲ | 2.18 | 2.15 | ○ | ||
2019Q1 | 35 | 35 | ○ | ▲ | 1.88 | 1.84 | ○ | ||
2019Q2 | 37 | 36 | ○ | 1.26 | 1.70 | × | 1.98 | 1.94 | ○ |
2019Q3 | 36 | 36 | ○ | 1.23 | 1.58 | × | 1.91 | 1.90 | ○ |
2019Q4 | 41 | 41 | ○ | 1.90 | 2.14 | × | 2.49 | 2.46 | ○ |
2020Q1 | 36 | 35 | ○ | 1.30 | 1.56 | × | 1.84 | 1.74 | ○ |
2020Q2 | 28 | 26 | ○ | -0.22 | 0.27 | × | 0.64 | 0.57 | ○ |
2020Q3 | 37 | 34 | ○ | 1.63 | 1.04 | ○ | 2.14 | 1.43 | ○ |
2020Q4 | 43 | 43 | × | 1.49 | 2.25 | × | 2.81 | 2.55 | ○ |
2021Q1 | 40 | 39 | ○ | 0.79 | 1.64 | × | 1.93 | 1.98 | × |
2021Q2 | 43 | 41 | ○ | 1.55 | 1.74 | × | 2.25 | 2.12 | ○ |
2021Q3 | 42 | 42 | × | 1.14 | 1.93 | × | 2.20 | 2.28 | × |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+16.7%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+21.4%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
2021Q3の株価上昇率は+1.5%と、S&P500(+0.2%)を上回りました。
競合他社(ヘルスケア機器)の株価上昇率(SHL.DE、SRT.DEはユーロ建て、STMN.SW、SOON.SWはスイスフラン建て、4543.T、6869.T、7733.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ストライカー(SYK)の株価上昇率は、2020年の1年間で+17%と、22社平均(+33%)を下回り、22社中第13位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+58%と、21社平均(+150%)を下回り、21社中第13位となりました。
過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場全体が下落する局面では、同程度のマイナスとなっており、ディフェンシブ銘柄が多いヘルスケアセクターのなかでは、リスクがやや高めです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
上昇トレンドです。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.3%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+8%、2年目〜7年目+10%、8年目〜10年目+8%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+8%、2年目〜5年目+12%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+8%、2年目+10%、3年目〜10年目+8%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は266ドルとなります。
・メインシナリオ:266ドル
・アップサイドシナリオ:300ドル
・ダウンサイドシナリオ:244ドル
ストライカー(Stryker、SYK)への投資について
2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は41.6億ドル(コンセンサス42.3億ドル)、非GAAP EPSは2.20ドル(コンセンサス2.28ドル)と、コンセンサスを下回る実績となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:+7〜8%(FY2019対比)
・非GAAP EPS:9.08〜9.15ドル
DCF法による目標株価は266ドルのため、2021年11月末時点の株価237ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.3倍(年率+9%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
連続増収は40期でストップしましたが、コロナ収束後は業績拡大が期待できます。