テラドック(TDOC)決算分析と目標株価 遠隔医療プラットフォームのパイオニア サブスクリプション収入が全体の8割超

テラドックヘルスケア機器・サービス

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とテラドック・ヘルスへの投資についてコメントします。

スポンサーリンク

会社概要

テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc.、TDOC)

ホームページ(SECファイル):リンク先

国:アメリカ

セクター:ヘルスケア

産業グループ:ヘルスケア機器・サービス

サブ産業グループ:ヘルスケア・テクノロジー

株式時価総額:257億ドル(2021年6月末)

テラドック・ヘルスは、アメリカに本拠を置く、オンライン診療を可能とするプラットフォームを提供する遠隔医療サービス企業です。

2020年に、糖尿病など慢性疾患のデータを管理して利用者にアドバイスするプラットフォームを提供するリボンゴ・ヘルスを185億ドルで買収しました。

膨大な慢性疾患のデータを収集できることに加え、データを医療機関に提供するとともに、利用者に早期治療を提案することができ、シナジー効果は大きいと考えられます。

 

(参考)競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
エムスリー(2413.T)480
ヴィーバ・システムズ(VEEV)476
アリババヘルス/阿里健康信息技術(0241.HK)304
サーナー(CERN)236
テラドック・ヘルス(TDOC)257
グッドアールエックスHD(GDRX)142
チェンジ・ヘルスケア(CHNG)71
オムニセル(OMCL)65
インスパイア・メディカル・システムズ(INSP)53
イノベーロン(INOV)53

 

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は10.9億ドルと、前年度比+97.7%、過去5年間で年率+69.9%となりました。

1株あたり売上高は、過去5年間で年率+25.5%となりました。

 

2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は5.22億ドル(前年同期比+80.6%)と、コンセンサス(5.17億ドル)を上回りました。

 

2021Q3の1株あたり売上高は前年同期比▲5.3%(発行済株式数が前年同期比+91%と急増したため)、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は9.7倍となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・サブスクリプション収入:4.5億ドル、前年同期比+99%

・遠隔訪問収入:0.6億ドル、前年同期比+18%

・その他:0.1億ドル

セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプション収入が87%、遠隔訪問収入が11%、その他が2%を占めます。

テラドック

 

アメリカの有料会員数は5,250万(前年同期比+2%)となりました。

 

1会員あたりの収入(1ヶ月)は2.57ドル(前年同期比+118%)となりました。

 

診察件数は389万件(前年同期比+37%)、うちアメリカは335万件(前年同期比+40%)となりました。

 

地域別の売上高構成比は、アメリカが93%を占めます。

 

利益の推移

FY2020の非GAAP EBITDAは1.3億ドルと、前年度比+298.5%となりました。

非GAAP EBITDAマージンは11.6%と、前年度の5.8%から改善しました。

 

2021Q3の非GAAP EBITDAは0.7億ドル(前年同期比+70.5%)となりました。

 

2021Q3のEPSは▲0.53ドルと、コンセンサス(▲0.66ドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020のキャッシュフローは、赤字転落となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は▲4.9%と、前年度の5.4%から悪化しました。

 

2021Q3の営業キャッシュフローは0.8億ドル(前年同期比+138%)となりました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは、赤字転落となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲7.3%と、前年度の3.4%から悪化しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

株主還元の実施はなしです。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+35.4%となりました。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、10勝、1引き分けです。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、4勝、6敗、1引き分けです。

 
売上高(ドル)EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q11.31.3-0.43-0.44
2019Q21.31.3-0.41-0.41
2019Q31.41.4-0.28-0.40
2019Q41.61.5-0.26-0.33
2020Q11.81.8-0.40-0.36×
2020Q22.42.2-0.34-0.24×
2020Q32.92.8-0.43-0.32×
2020Q43.83.8-3.07-0.25×
2021Q14.54.5-1.31-0.59×
2021Q25.05.0-0.86-0.54×
2021Q35.25.2-0.53-0.66

 

株価上昇率

FY2020の株価上昇率は+138.8%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+61.9%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。

 

2021Q3の株価上昇率は▲23.7%と、S&P500(+0.2%)を下回りました。

 

競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株価上昇率(M3は日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

テラドック(TDOC)の株価上昇率は、2020年の1年間で+139%と、8社平均(+81%)を上回り、8社中第3位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+474%と、6社平均(+240%)を上回り、6社中第1位となりました。

 

2015年7月から2021年11月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

足もとの最大ドローダウンは▲60%超となりました。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

トレンドラインを大きく割り込んでおり、急反発には時間がかかりそうです。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを8.1%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜5年目+50%、6年目〜7年目+40%、8年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜10年目+50%。11年目以降の永続成長率は0%

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%

メインシナリオの目標株価は173ドルとなります。

・メインシナリオ:173ドル

・アップサイドシナリオ:289ドル

・ダウンサイドシナリオ:67ドル

テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc.、TDOC)への投資について

2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は5.22億ドル(コンセンサス5.17億ドル)、EPSは▲0.53ドル(コンセンサス▲0.66ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:20.15〜20.25億ドル(コンセンサス20億ドル)

・非GAAP EBITDA:2.60〜2.65億ドル

・アメリカ有料会員数:5,250〜5,350万

DCF法による目標株価は173ドルのため、2021年11月末時点の株価101ドルより高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が23.1倍(年率+37%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

コロナによって遠隔診療の利用が急速に普及しましたが、長期的にみて遠隔医療市場の拡大は期待できます。

ただし、コロナ収束後には成長の減速が見込まれることや、アマゾン等の新規参入による競争激化によって、今後苦戦することが想定されます。

株価が100ドルを下回っており魅力的な水準となりました。

テラドック・ヘルスと同様に株価が大きく下落したエムスリーへ足もと投資したため、テラドック・ヘルスもさらに株価が下落した場合は、投資を検討したいと思います。

ヴィーバ・システムズ(VEEV)決算分析と目標株価 製薬会社向けCRM(顧客関係管理)等をクラウドベースで提供する最大手
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とヴィーバ・システムズへの投資についてコメントします。 会社概要 ヴィーバ・システムズ(Veeva Systems Inc.、VEEV) ホームページ(S...
アボットラボラトリーズ(ABT)決算分析と目標株価 医薬品・栄養剤・診断薬/機器・医療機器と事業が分散
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアボット・ラボラトリーズへの投資についてコメントします。 会社概要 アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories、ABT) ホームペ...
メドトロニック(MDT)決算分析と目標株価 心臓等循環器系に強み 株価は不調 44年連続増配
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とメドトロニックへの投資についてコメントします。 会社概要 メドトロニック(Medtronic、MDT) ホームページ(SECファイル):リンク先 ...
ダナハー(DHR)決算分析と目標株価 買収企業を改善・長期保有で成長し続ける事業ポートフォリオ
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とダナハーへの投資についてコメントします。 会社概要 ダナハー(Danaher、DHR) ホームページ(SECファイル):リンク先 国:アメ...
インテュイティブ・サージカル(ISRG)決算分析と目標株価 手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」は業界の先駆け
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とインテュイティブ・サージカルへの投資についてコメントします。 会社概要 インテュイティブ・サージカル(Intuitive Surgical、ISRG) ...
ストライカー(SYK)決算分析と目標株価 整形外科に強みがある医療機器等を製造するヘルスケア機器メーカー
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とストライカーへの投資についてコメントします。 会社概要 ストライカー(Stryker、SYK) ホームページ(SECファイル):リンク先 ...
ベクトン・デッキンソン(BDX)決算分析と目標株価 カテーテルや注射針が有名 増資が株価の重しに
過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とベクトン・ディッキンソンへの投資についてコメントします。 会社概要 ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson、BDX) ホームページ(...
タイトルとURLをコピーしました