過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とテラドック・ヘルスへの投資についてコメントします。
会社概要
テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc.、TDOC)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:ヘルスケア機器・サービス
サブ産業グループ:ヘルスケア・テクノロジー
株式時価総額:257億ドル(2021年6月末)
テラドック・ヘルスは、アメリカに本拠を置く、オンライン診療を可能とするプラットフォームを提供する遠隔医療サービス企業です。
2020年に、糖尿病など慢性疾患のデータを管理して利用者にアドバイスするプラットフォームを提供するリボンゴ・ヘルスを185億ドルで買収しました。
膨大な慢性疾患のデータを収集できることに加え、データを医療機関に提供するとともに、利用者に早期治療を提案することができ、シナジー効果は大きいと考えられます。
(参考)競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
エムスリー(2413.T) | 480 |
ヴィーバ・システムズ(VEEV) | 476 |
アリババヘルス/阿里健康信息技術(0241.HK) | 304 |
サーナー(CERN) | 236 |
テラドック・ヘルス(TDOC) | 257 |
グッドアールエックスHD(GDRX) | 142 |
チェンジ・ヘルスケア(CHNG) | 71 |
オムニセル(OMCL) | 65 |
インスパイア・メディカル・システムズ(INSP) | 53 |
イノベーロン(INOV) | 53 |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は10.9億ドルと、前年度比+97.7%、過去5年間で年率+69.9%となりました。
1株あたり売上高は、過去5年間で年率+25.5%となりました。
2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は5.22億ドル(前年同期比+80.6%)と、コンセンサス(5.17億ドル)を上回りました。
2021Q3の1株あたり売上高は前年同期比▲5.3%(発行済株式数が前年同期比+91%と急増したため)、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は9.7倍となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サブスクリプション収入:4.5億ドル、前年同期比+99%
・遠隔訪問収入:0.6億ドル、前年同期比+18%
・その他:0.1億ドル
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプション収入が87%、遠隔訪問収入が11%、その他が2%を占めます。
アメリカの有料会員数は5,250万(前年同期比+2%)となりました。
1会員あたりの収入(1ヶ月)は2.57ドル(前年同期比+118%)となりました。
診察件数は389万件(前年同期比+37%)、うちアメリカは335万件(前年同期比+40%)となりました。
地域別の売上高構成比は、アメリカが93%を占めます。
利益の推移
FY2020の非GAAP EBITDAは1.3億ドルと、前年度比+298.5%となりました。
非GAAP EBITDAマージンは11.6%と、前年度の5.8%から改善しました。
2021Q3の非GAAP EBITDAは0.7億ドル(前年同期比+70.5%)となりました。
2021Q3のEPSは▲0.53ドルと、コンセンサス(▲0.66ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020のキャッシュフローは、赤字転落となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は▲4.9%と、前年度の5.4%から悪化しました。
2021Q3の営業キャッシュフローは0.8億ドル(前年同期比+138%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは、赤字転落となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲7.3%と、前年度の3.4%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+35.4%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、10勝、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、4勝、6敗、1引き分けです。
売上高(ドル) | EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q1 | 1.3 | 1.3 | ○ | -0.43 | -0.44 | ○ |
2019Q2 | 1.3 | 1.3 | ○ | -0.41 | -0.41 | ▲ |
2019Q3 | 1.4 | 1.4 | ○ | -0.28 | -0.40 | ○ |
2019Q4 | 1.6 | 1.5 | ○ | -0.26 | -0.33 | ○ |
2020Q1 | 1.8 | 1.8 | ▲ | -0.40 | -0.36 | × |
2020Q2 | 2.4 | 2.2 | ○ | -0.34 | -0.24 | × |
2020Q3 | 2.9 | 2.8 | ○ | -0.43 | -0.32 | × |
2020Q4 | 3.8 | 3.8 | ○ | -3.07 | -0.25 | × |
2021Q1 | 4.5 | 4.5 | ○ | -1.31 | -0.59 | × |
2021Q2 | 5.0 | 5.0 | ○ | -0.86 | -0.54 | × |
2021Q3 | 5.2 | 5.2 | ○ | -0.53 | -0.66 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+138.8%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+61.9%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
2021Q3の株価上昇率は▲23.7%と、S&P500(+0.2%)を下回りました。
競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株価上昇率(M3は日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
テラドック(TDOC)の株価上昇率は、2020年の1年間で+139%と、8社平均(+81%)を上回り、8社中第3位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+474%と、6社平均(+240%)を上回り、6社中第1位となりました。
2015年7月から2021年11月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
足もとの最大ドローダウンは▲60%超となりました。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
トレンドラインを大きく割り込んでおり、急反発には時間がかかりそうです。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを8.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜5年目+50%、6年目〜7年目+40%、8年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜10年目+50%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目1億ドル、3年目+300%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は173ドルとなります。
・メインシナリオ:173ドル
・アップサイドシナリオ:289ドル
・ダウンサイドシナリオ:67ドル
テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc.、TDOC)への投資について
2021Q3(2021年7−9月期)の売上高は5.22億ドル(コンセンサス5.17億ドル)、EPSは▲0.53ドル(コンセンサス▲0.66ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:20.15〜20.25億ドル(コンセンサス20億ドル)
・非GAAP EBITDA:2.60〜2.65億ドル
・アメリカ有料会員数:5,250〜5,350万
DCF法による目標株価は173ドルのため、2021年11月末時点の株価101ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が23.1倍(年率+37%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
コロナによって遠隔診療の利用が急速に普及しましたが、長期的にみて遠隔医療市場の拡大は期待できます。
ただし、コロナ収束後には成長の減速が見込まれることや、アマゾン等の新規参入による競争激化によって、今後苦戦することが想定されます。
株価が100ドルを下回っており魅力的な水準となりました。
テラドック・ヘルスと同様に株価が大きく下落したエムスリーへ足もと投資したため、テラドック・ヘルスもさらに株価が下落した場合は、投資を検討したいと思います。