過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とダナハーへの投資についてコメントします。
会社概要
ダナハー(Danaher、DHR)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:ヘルスケア機器・サービス
サブ産業グループ:ヘルスケア機器
株式時価総額:2,351億ドル(世界ランキング、第49位、2021年12月末)
ダナハーは、アメリカに本拠を置く、ライフサイエンスや検査器具、環境などの事業を手掛ける企業です。
企業(事業)買収後に収益改善(Kaizen)を図り続けて事業構築するダナハー ・ビジネス・システム(DBS)によって成長し続けており、長期保有している点が投資会社と異なります。
2020年3月末に、GEからバイオ医薬の検査機器などのバイオファーマ事業の買収が完了(新ブランド名はCytiva/サイティバ)し、ダナハーにとっては過去最大の買収案件(214億ドル)となりました。
(参考)競合他社(ヘルスケア機器)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
アボットラボラトリーズ(ABT) | 2,489億ドル |
ダナハー(DHR) | 2,351億ドル |
メドトロニック(MDT) | 1,391億ドル |
インテュイティブ・サージカル(ISRG) | 1,284億ドル |
ストライカー(SYK) | 1,009億ドル |
シーメンス・ヘルスケア(SHL.DE) | 865億ドル |
エドワーズライフサイエンス(EW) | 809億ドル |
ベクトン・ディッキンソン(BDX) | 717億ドル |
ボストン・サイエンティフィック(BST) | 605億ドル |
アイデックスラボラトリーズ(IDXX) | 558億ドル |
デクスコム(DXCM) | 520億ドル |
バクスターインターナショナル(BAX) | 430億ドル |
ザルトリウス(SRT.DE) | 424億ドル |
レスメド(RMD) | 380億ドル |
コーニンクレッカ フィリップス(PHG) | 327億ドル |
テルモ(4543.T) | 322億ドル |
ストラウマンHD(STMN.SW) | 346億ドル |
オリンパス(7733.T) | 297億ドル |
シスメックス(6869.T) | 284億ドル |
ジンマー・バイオメットHD(ZBH) | 265億ドル |
ソノバHD(SOON.SW) | 244億ドル |
ノボキュア(NVCR) | 78億ドル |
売上高(セグメント別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は295億ドルと、前年度比+32.2%、過去5年間で年率+15.9%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は81億ドル(前年同期比+20.5%)と、コンセンサス(80億ドル)を上回りました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・生命科学:40億ドル、前年同期比+20%
・診断:29億ドル、前年同期比+29%
・環境&応用ソリューション:12億ドル、前年同期比+4%
セグメント別の売上高構成比は、生命科学が50%、診断が35%、環境&応用ソリューションが15%を占めます。

FY2021の地域別の売上高構成比は、北米が40%、高成長市場が31%、欧州が24%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2021の営業利益は75億ドルと、前年度比+76.4%、過去5年間で年率+26.5%となりました。
営業利益率は25.3%と、前年度の19.0%から改善しました。
2021Q4の営業利益は22億ドル(前年同期比+34.5%)となりました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2021の非GAAP EPSは10.05ドルと、前年度比+59.3%、過去5年間で年率+22.7%となりました。
2021Q4の非GAAP EPSは2.69ドル(前年同期比+29.3%)と、コンセンサス(2.54ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは84億ドルと、前年度比+34.6%、過去5年間で年率+18.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は28.4%と、前年度の27.9%から改善しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは23億ドル(前年同期比+5.0%)となりました。

FY2021のフリーキャッシュフローは71億ドルと、前年度比+30.4%、過去5年間で年率+19.2%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は24.0%と、前年度の24.3%とほぼ同水準となりました。
2021Q4のフリーキャッシュフローは19億ドル(前年同期比+0.4%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いの実施はなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は2.6%、フリーキャッシュフロー利回りは2.9%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2021の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、10%以下です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは0.84ドルと、前年度比+16.7%、過去5年間で年率+8.1%となりました。
FY2022のDPSは1.0ドル(前年度比+19.0%)の予定です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+1.0%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、11勝です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、10勝、1引き分けです。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 52 | 51 | ○ | 1.19 | 1.16 | ○ |
2019Q3 | 50 | 50 | ○ | 1.16 | 1.15 | ○ |
2019Q4 | 49 | 48 | ○ | 1.28 | 1.25 | ○ |
2020Q1 | 43 | 43 | ○ | 1.05 | 1.05 | ▲ |
2020Q2 | 53 | 50 | ○ | 1.44 | 1.09 | ○ |
2020Q3 | 59 | 55 | ○ | 1.72 | 1.36 | ○ |
2020Q4 | 68 | 66 | ○ | 2.08 | 1.87 | ○ |
2021Q1 | 69 | 66 | ○ | 2.52 | 1.77 | ○ |
2021Q2 | 72 | 67 | ○ | 2.46 | 2.05 | ○ |
2021Q3 | 72 | 70 | ○ | 2.39 | 2.15 | ○ |
2021Q4 | 81 | 80 | ○ | 2.69 | 2.54 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+48.1%と、S&P500(+26.9%)を上回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+33.4%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。
2021Q4の株価上昇率は+8.1%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。
競合他社(ヘルスケア機器)の株価上昇率(SHL.DE、SRT.DEはユーロ建て、STMN.SW、SOON.SWはスイスフラン建て、4543.T、7733.T、6869.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ダナハー (DHR)の株価上昇率は、2021年の1年間で+48%と、22社平均(+20%)を上回り、22社中第4位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+219%と、22社平均(+136%)を上回り、22社中第4位となりました。

過去10年間(2012年3月から2022年2月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
ドローダウンは比較的小さく、株式市場全体の急落時(直近も含めて)を除いて、最高値から5%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
安定した上昇トレンドです。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は305ドルとなります。
・メインシナリオ:305ドル
・アップサイドシナリオ:371ドル
・ダウンサイドシナリオ:253ドル
ダナハー(Danaher、DHR)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は81億ドル(コンセンサス80億ドル)、非GAAP EPSは2.69ドル(コンセンサス2.54ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は305ドルのため、2022年2月末時点の株価274ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.1倍(年率+7%)、FY2021のフリーキャッシュフローマージンが10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ヘルスケア機器のなかではISRGへ投資していますが、ダナハーも魅力的な企業なので、機会があれば投資したいと思います。






