ペイパル(PYPL)決算分析と目標株価 モバイル決済の普及で業績拡大 個人間送金アプリ「Venmo」が絶好調

ペイパル情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とペイパルへの投資についてコメントします。

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会社概要

ペイパル(Paypal、PYPL)

ホームページ(SEC):リンク先

国:アメリカ

セクター:情報技術

産業グループ:ソフトウェア・サービス

サブ産業グループ:情報処理・外注サービス

株式時価総額:2,216億ドル(世界ランキング第53位、2021年12月末)

ペイパルは、アメリカに本拠を置く、決済サービスを提供する企業です。

買い手と売り手の間にペイパルが入ることで、買い手にとっては支払い情報が売り手に伝わらないメリットがあり、売り手にとっては、オンライン上でクレジットカードや銀行口座等の決済が可能で、支払い完了後は売り手のビジネスアカウントに即時入金してくれるメリットがあります。

2020年11月に、ビットコイン等の暗号資産の取引サービスを開始しました。

 

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2021(2021年1-12月期)の売上高は254億ドルと、前年度比+18.3%、過去5年間で年率+18.5%となりました。

 

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は69.2億ドル(前年同期比+13.1%)と、コンセンサス(68.9億ドル)を上回りました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・決済手数料:63.8億ドル、前年同期比+12%

・その他付加価値サービス:5.4億ドル、前年同期比+25%

 

アクティブアカウント数、総取扱高(TPV)、テイクレート

2021年12月末のアクティブアカウント数は4.3億件(前年同期比+13%)となりました。

 

新規アクティブアカウント数は980万件(前年同期比▲39%)となりました。

 

2021Q4の1アカウント当たり平均取引回数(過去12ヶ月)は45.4回です。

 

2021Q4の総取扱高(TPV)は3,395億ドル(前年同期比+23%)となりました。

 

クロスボーダー総取扱高は490億ドルと、TPV全体の14%を占めます。

 

個人間送金アプリであるVenmoの総取扱高は610億ドル(前年同期比+29%)となりました。

 

取引テイクレート(決済手数料/TPV)と取引コストは、以下の通りです。

 

利益の推移

FY2021の営業利益は43億ドルと、前年度比+29.6%、過去5年間で年率+21.9%となりました。

営業利益率は16.8%と、前年度の15.3%から改善しました。

 

2021Q4の営業利益は10.5億ドル(前年同期比+9.0%)となりました。

 

FY2021の非GAAP EPSは4.60ドルと、前年度比+18.6%、過去5年間で年率+25.1%となりました。

 

2021Q4の非GAAP EPSは1.11ドル(前年同期比+2.8%)と、コンセンサス(1.12ドル)を下回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2021の営業キャッシュフローは63億ドルと、前年度比+8.3%、過去5年間で年率+15.0%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は25.0%と、前年度の27.3%から悪化しました。

 

2021Q4の営業キャッシュフローは18億ドル(前年同期比+30.9%)となりました。

 

FY2021のフリーキャッシュフローは54億ドルと、前年度比+8.9%、過去5年間で年率+16.9%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は21.4%と、前年度の23.2%から悪化しました。

 

2021Q4のフリーキャッシュフローは16億ドル(前年同期比+38.3%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

無配ですが、自社株買いを実施しました。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2021の益利回り(PERの逆数)は1.9%、フリーキャッシュフロー利回りは2.4%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.5%となりました。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、7勝、4敗です。

非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、9勝、2敗です。

 
売上高(億ドル)非GAAP EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q24343×0.860.83
2019Q344440.610.60
2019Q450490.860.83
2020Q14647×0.660.74×
2020Q253501.070.87
2020Q355541.070.94
2020Q461611.081.00
2021Q160591.221.02
2021Q26263×1.151.12
2021Q36262×1.111.08
2021Q469691.111.12×

 

株価上昇率

FY2021の株価上昇率は▲19.5%と、S&P500(+26.9%)を下回りました。

過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+36.7%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。

 

2021Q4の株価上昇率は▲27.5%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。

 

競合他社(情報処理・外注サービス)の株価上昇率(ADYEN.AS、AMS.MC、WLN.PAはユーロ建て、APT.AXはオーストラリアドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

ペイパル(PYPL)の株価上昇率は、2021年の1年間で▲19%と、16社平均(▲10%)を下回り、16社中第10位となりました。

2019年1月から2021年12月の3年間では+124%と、16社平均(+104%)を上回り、16社中第4位となりました。

 

2015年7月から2022年2月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から60%超のドローダウンです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを8.1%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%

、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%

メインシナリオの目標株価は135ドルとなります。

・メインシナリオ:135ドル

・アップサイドシナリオ:172ドル

・ダウンサイドシナリオ:90ドル

ペイパル(Paypal、PYPL)への投資について

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は69.2億ドルと、コンセンサス(68.9億ドル)を上回りましたが、非GAAP EPSは1.11ドルと、コンセンサス(1.12ドル)を下回る実績となりました。

FY2022のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:前年度比+15〜17%

・非GAAP EPS:4.60〜4.75ドル(コンセンサス5.26ドル)

・TPV:+19〜22%

DCF法による目標株価は135ドルのため、2022年2月末時点の株価112ドルより高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.0倍(年率+11%)、フリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

一時300ドルを超えていた株価は100ドル未満へ急落し、割高感が大きく薄れました。

なお、情報処理・外注サービスのなかでは、アディエンへ投資しています。

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