過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とネットフリックスへの投資についてコメントします。
会社概要
ネットフリックス(Netflix、NFLX)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:映画・娯楽
株式時価総額:2,669億ドル(世界ランキング第33位、2021年12月末)
ネットフリックスは、アメリカに本拠を置く、定額制動画配信サービスを提供する企業です。
(参考)競合他社(映画・娯楽)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
ウォルト・ディズニー(DIS) | 2,815億ドル |
ネットフリックス(NFLX) | 2,669億ドル |
スポティファイ・テクノロジー(SPOT) | 448億ドル |
ロク(ROKU) | 307億ドル |
ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV) | 269億ドル |
ワーナー・ミュージック・グループ(WMG) | 222億ドル |
ヴィヴェンディ(VIV.PA) | 141億ドル |
テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME) | 116億ドル |
売上高(地域別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は297億ドルと、前年度比+18.8%、過去5年間で年率+27.5%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は77.1億ドル(前年同期比+16.0%)と、コンセンサス(77.1億ドル)と一致しました。
地域別の売上高は、以下の通りです。
・北米:33億ドル、前年同期比+11%
・欧州/中東/アフリカ:25億ドル、前年同期比+18%
・ラテンアメリカ:10億ドル、前年同期比+22%
・アジアパシフィック:9億ドル、前年同期比+27%
地域別の売上高構成比は、北米が43%、欧州/中東/アフリカが33%、ラテンアメリカが13%、アジアパシフィックが11%を占めます。
地域別の有料会員数と1有料会員あたり平均収入の推移
2021年12月末時点の有料会員数は2.22億人(前年同期比+9%)となりました。
有料会員純増数は前四半期比+828万と、ガイダンス(+850万)を下回りました。
2021年12月末時点の北米の有料会員数は7,522万人(前年同期比+2%)、1有料会員あたりの平均収入は14.78ドル(前年同期比+9%)となりました。
2021年12月末時点の欧州の有料会員数は7,404万人(前年同期比+11%)、1有料会員あたりの平均収入は11.64ドル(前年同期比+5%)となりました。
2021年12月末時点のラテンアメリカの有料会員数は3,996万人(前年同期比+6%)、1有料会員あたりの平均収入は8.14ドル(前年同期比+14%)となりました。
2021年12月末時点のアジアパシフィックの有料会員数は3,263万人(前年同期比+28%)、1有料会員あたりの平均収入は9.26ドル(前年同期比▲1%)となりました。
利益の推移
FY2021の営業利益は62億ドルと、前年度比+35.1%、過去3年間で年率+74.8%となりました。
営業利益率は20.9%と、前年度の18.3%から改善しました。
2021Q4の営業利益は6億ドル(前年同期比▲33.8%)となりました。
FY2021のEPSは11.24ドルと、前年度比+84.9%、過去5年間で年率+92.1%となりました。
2021Q4のEPSは1.33ドル(前年同期比+11.8%)と、コンセンサス(0.83ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは4億ドルと、前年度比▲83.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は1.3%と、前年度の9.7%から悪化しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは▲4億ドル(前年同期比赤字幅拡大)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは▲2億ドルと、赤字転落しました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲0.5%と、前年度の7.7%から悪化しました。
2021Q4のフリーキャッシュフローは▲6億ドル(前年同期比赤字幅拡大)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2021に自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.7%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、8勝、1敗、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、5勝、5敗です。
売上高(億ドル) | EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 52 | 52 | × | 1.47 | 1.05 | ○ |
2019Q4 | 55 | 55 | ○ | 1.30 | 0.52 | ○ |
2020Q1 | 58 | 57 | ○ | 1.57 | 1.64 | × |
2020Q2 | 61 | 61 | ○ | 1.59 | 1.83 | × |
2020Q3 | 64 | 64 | ○ | 1.74 | 2.14 | × |
2020Q4 | 66 | 66 | ○ | 1.19 | 1.41 | × |
2021Q1 | 72 | 71 | ○ | 3.75 | 2.97 | ○ |
2021Q2 | 73 | 73 | ○ | 2.97 | 3.16 | × |
2021Q3 | 75 | 74 | ○ | 3.19 | 2.56 | ○ |
2021Q4 | 77 | 77 | ▲ | 1.33 | 0.83 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+11.4%と、S&P500(+26.9%)を下回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+37.2%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。
2021Q4の株価上昇率は▲1.3%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。
競合他社(映画・娯楽)の株価上昇率(VIV.PAはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ネットフリックス(NFLX)の株価上昇率は、2021年の1年間で+11%と、8社平均(▲13%)を上回り、8社中第3位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+125%と、7社平均(+138%)を下回り、7社中第3位となりました。
過去10年間(2012年2月から2022年1月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
足もと大きなドローダウンとなっています。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目3億ドル、2年目+500%、3年目+200%、4年目+100%、5年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目3億ドル、2年目+500%、3年目+200%、4年目+100%、5年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目3億ドル、2年目+500%、3年目+200%、4年目+100%、5年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は574ドルとなります。
・メインシナリオ:574ドル
・アップサイドシナリオ:728ドル
・ダウンサイドシナリオ:350ドル
ネットフリックス(Netflix、NFLX)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は77.1億ドルと、コンセンサス(77.1億ドル)と一致しましたが、EPSは1.33ドルと、コンセンサス(0.83ドル)を上回る実績となりました。
有料会員純増数は+828万と、ガイダンス(+850万)を下回りました。
2022Q1のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:79.0億ドル
・EPS:2.86ドル
・有料会員純増数:+250万
FY2021はフリーキャッシュフローが赤字に転落しましたが、FY2022は黒字化の見通しです。
決算発表を受けて、株価は急落しました。
DCF法による目標株価は574ドルのため、2021年12月末時点の株価427ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.6倍(年率+10%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが25%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ネットフリックスが提供する映画やドラマはクオリティが高く、コストパフォーマンスも高いので、引き続き値上げによる売上・キャッシュフロー増加も期待できそうです。
超長期で保有したい銘柄の1つです。
投資継続です。