ASML(ASML)決算分析と目標株価 露光装置の世界シェア1位 光源波長の微細化(EUV)が強み

ASML情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とASMLへの投資についてコメントします。

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会社概要

ASML(ASML、ASML.EN、ASML)

ホームページ(IR):リンク先

国:オランダ

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体製造装置

株式時価総額:2,908億ドル(世界ランキング第29位、2021年6月末)

ASMLは、オランダに拠点を置く、露光装置の売上高が世界シェア8割(EUVとArF液浸はほぼ独占)を超える半導体製造装置メーカーです。

半導体は回路線幅が狭いほど演算速度や省電力性能が高まるため、年々回路線幅が細くなっており、台湾セミコンダクターの売上の主力は7ナノメートルのチップです。

露光装置は、ウエハー上に半導体の回路パターンを転写する工程で使いますが、7ナノメートルの転写は光源波長が非常に短いEUVが必要不可欠です。

オランダ株式市場で第1位、情報技術セクターの半導体・半導体製造装置で第3位の浮動株調整後株式時価総額(2021年6月末)で、半導体製造装置に占めるASMLの株式時価総額比率は37%です。

ASML
(参考)競合他社(半導体製造装置)の株式時価総額(2021年6月末)
 株式時価総額
(億ドル)
ASML(ASML)2,908
アプライド・マテリアルズ(AMAT)1,302
ラムリサーチ(LRCX)928
東京エレクトロン(8035.T)676
KLA(KLAC)497
テラダイン(TER)223
エンフェーズ・エナジー(ENPH)249
アドバンテスト(6857.T)176
レーザーテック(6920.T)177
ASMインターナショナル(ASM.AS)160
インテグリス(ENTG)167

売上高(用途別、露光装置別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は140億ユーロと、前年度比+18.3%、過去5年間で年率+17.3%となりました。

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2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は40.2億ユーロ(前年同期比+20.9%)と、コンセンサス(41.2億ユーロ)を下回りました。

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各露光装置の売上台数は、以下の通りです。

・EUV露光装置:9台

・ArF液浸露光装置:16台

・ArF:7台

・KrF:31台

・i線:9台

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セグメント別(システムのみ)の売上高構成比は、EUV露光装置が45%、ArF浸透露光装置が34%を占めます。

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エンドユーザー向け売上高構成比は、ロジック(CPU等データ処理IC)向けが72%、メモリ(DRAM、NAND等データ記憶IC)向けが28%を占めます。

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地域別の売上高構成比は、台湾が36%、韓国が39%を占めます。

2021Q1の欧州の▲6%は、未使用品2台返却のためです。

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EUV露光装置とArF液浸露光装置の販売台数と販売価格の推移

露光装置は、ウエハー上に半導体の回路パターンを転写する工程で使い、光源波長が短いほど、微細なパターンが形成できます。

まず最初に水銀ランプのg線(431nm)が開発され、その後、水銀ランプのi線(365nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)、ArF浸透(193nm)、EUV(13.5nm)と、光の波長が短くなってきています。

FY2020のEUV露光装置の販売台数は31台(前年比+5台)でした。

EUV露光装置1台あたり販売価格は1.4億ユーロと、前年比+19.2%の価格上昇となりました。

 

FY2020のArF液浸露光装置の販売台数は68台(前年比▲14台)でした。

ArF液浸露光装置1台あたり販売価格は0.6億ユーロと、前年比+0.3%の価格上昇となりました。

 

以下のグラフにある通り、光源波長が短いほど販売価格が高いことがわかります。

 

半導体の市場規模の見込み

2020年の半導体の市場規模は4,404億ドル(前年度比+7%)となりました。

WSTSによると、2021年予想は5,272億ドル(前年度比+20%)、2022年予想は5,734億ドル(前年度比+9%)です。

 

2020年の半導体製造装置の市場規模は712億ドル(前年度比+19%)となりました。

 

利益の推移

2021Q2の粗利益は20億ユーロ(前年同期比+27.5%)、粗利益率は50.9%と、前年同期の48.2%から改善し、ガイダンス(49%)を上回りました。

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FY2020のEPSは8.48ユーロと、前年度比+37.9%、過去5年間で年率+21.4%となりました。

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2021Q2のEPSは2.52ユーロ(前年同期比+40.8%)と、コンセンサス(2.49ユーロ)を上回りました。

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キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは41.2億ユーロと、前年度比+41.2%、過去5年間で年率+18.0%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は33.1%と、前年度の27.7%から改善しました。

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2021Q2の営業キャッシュフローは36億ユーロ(前年同期比+860%)となりました。

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FY2020のフリーキャッシュフローは36億ユーロと、前年度比+51.7%、過去5年間で年率+17.0%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は25.9%と、前年度の20.2%から改善しました。

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2021Q2のフリーキャッシュフローは33億ユーロ(前年同期比+2,271%)となりました。

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株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

FY2021上半期の自社株買いは、30億ユーロを超えました。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.1%、キャッシュフロー利回りは2.2%です。

過去5年間の配当利回りは1%前後です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに50%以下です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

DPSは2.75ユーロと、前年度比+14.6%、過去5年間で年率+21.2%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.6%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは20%程度であり、投資効率は比較的高いと言えます。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、4勝、3敗、1引き分けです。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、5勝、2敗、1引き分けです。

 
売上高(ユーロ)EPS(ユーロ)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q330.030.2×1.491.45
2019Q440.439.12.702.71×
2020Q124.424.40.930.93
2020Q233.335.1×1.792.05×
2020Q339.637.22.542.24
2020Q442.537.33.232.44
2021Q143.640.23.202.58
2021Q240.241.2×2.522.49

 

株価上昇率

FY2020の株価上昇率は+50.8%と、世界株式を投資対象とするVT(+14.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+36.9%と、VT(年率+9.9%)を大きく上回りました。

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2021Q2の株価上昇率は+12.1%と、VT(+6.5%)を上回りました。

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競合他社(半導体製造装置)の株価上昇率(8035.T、6857.T、6920.Tは日本円建て、ASM.ASはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

ASML(ASML、USドル建て)の株価上昇率は、2020年の1年間で+65%と、11社平均(+112%)を下回り、11社中第6位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+181%と、11社平均(+860%)を下回り、11社中第7位となりました。

 

過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

並みの激しい半導体製造装置なので仕方がありませんが、S&P500と比較してドローダウンが大きい傾向があります。

最高値から10%以上下落する局面が度々発生するので、その時が狙い目です。

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(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

トレンドラインを大きく上回っており、もうそろそろ一服しそうです。

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DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.2%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜3年目+20%、4年目〜6年目+15%、7年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目+20%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は609ユーロとなります。

・メインシナリオ:609ユーロ

・アップサイドシナリオ:877ユーロ

・ダウンサイドシナリオ:354ユーロ

ASML(ASML、ASML.EN、ASML)への投資について

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は40.2億ユーロと、コンセンサス(41.2億ユーロ)を下回りましたが、EPSは2.52ユーロと、コンセンサス(2.59ユーロ)を上回りました。

2021Q3のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:52〜54億ユーロ(コンセンサス:46.8億ユーロ)

・粗利益率:51〜52%

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:+35%

・粗利益率:51〜52%

決算発表を受けて、株価は上昇しました。

DCF法による目標株価は609ユーロのため、2021年6月末時点の株価579ユーロ(ADR:691USドル)より高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が4.3倍(年率+16%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである26%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

決算発表を受けて株価が大きく上昇し、押し目待ちがない状態が続いています。

しばらく好調な半導体市況が続きますが、波も激しいため当面様子見です。

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