過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とJPモルガン・チェースへの投資についてコメントします。
会社概要
JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase & Co.、JPM)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:銀行
サブ産業グループ:都市銀行
株式時価総額:4,680億ドル(世界ランキング第14位、2021年12月末)
JPモルガン・チェースは、アメリカに本拠を置く、グローバル総合金融サービス企業です。
(参考)競合他社(都市銀行)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM) | 4,680億ドル |
バンク・オブ・アメリカ(BAC) | 3,641億ドル |
中国工商銀行(1398.HK) | 2,437億ドル |
招商銀行(3968.HK) | 1,952億ドル |
ウェルズ・ファーゴ(WFC) | 1,913億ドル |
中国建設銀行(0939.HK) | 1,759億ドル |
中国農業銀行(1288.HK) | 1,571億ドル |
カナダロイヤル銀行(RY) | 1,512億ドル |
トロント・ドミニオン銀行(TD) | 1,397億ドル |
中国銀行(3988.HK) | 1,308億ドル |
オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA.AX) | 1,267億ドル |
HSBC HD(HSBC) | 1,228億ドル |
HDFC銀行(HDB) | 1,202億ドル |
シティグループ(C) | 1,198億ドル |
ナショナルオーストラリア銀行(NAB.AX) | 943億ドル |
バンク・オブ・ノバスコシア(BNS) | 872億ドル |
BNPパリバ(BNP.PA) | 861億ドル |
ズベルバンク・オブ・ロシア(SBER.ME) | 854億ドル |
USバンコープ(USB) | 833億ドル |
三菱UFJ FG(8306.T) | 725億ドル |
中国郵政儲蓄銀行(1658.HK) | 723億ドル |
純収益(セグメント別)の推移
2021Q4(2021年10−12月期)の純収益は303億ドル(前年同期比+0.6%)となりました。

2021Q4の純金利収入は137億ドル(前年同期比+3%)となりました。

セグメント別の純収益は、以下の通りです。
・個人向け:123億ドル、前年同期比▲4%
・法人&投資銀行:115億ドル、前年同期比+2%
・商業銀行:26億ドル、前年同期比+6%
・資産運用:45億ドル、前年同期比+16%
セグメント別の純収益構成比は、個人向けが40%、法人&投資銀行が37%を占めます。

2021年12月末の融資額は1.1兆ドル(前年同期比+6%)、預金は2.5兆ドル(前年同期比+15%)となりました。

2021Q4の住宅ローンは1,805億ドル(前年同期比▲1%)、クレジットカードローンは1,543億ドル(前年同期比+7%)、自動車ローンは691億ドル(前年同期比+4%)となりました。

2021Q4の住宅ローン組成額は422億ドル(前年同期比+30%)、自動車ローン組成額は85億ドル(前年同期比▲23%)となりました。

2021Q4の投資銀行手数料は35億ドル(前年同期比+37%)、うちM&A助言手数料が16億ドル(前年同期比+86%)、株式引受手数料が8億ドル(前年同期比+12%)、債券引受手数料が11億ドル(前年同期比+14%)となりました。

2021Q4のトレーディング収入は53億ドル(前年同期比▲11%)、うち債券が33億ドル(前年同期比▲16%)、株式が20億ドル(前年同期比▲2%)となりました。

2021年12月末のAUM(運用受託残高)は3.11兆ドル(前年同期比+15%)となりました。

利益(セグメント別)の推移
FY2021のEPSは15.36ドルと、前年度比+73.0%、過去5年間で年率+19.9%となりました。

2021Q4のEPSは3.33ドル(前年同期比▲12%)と、コンセンサス(3.00ドル)を上回りました。

2021年12月末時点の貸倒引当金は187億ドル(前四半期比▲9%)となりました。

セグメント別の純利益は、以下の通りです。
・個人向け:42億ドル、前年同期比▲2%
・法人&投資銀行:48億ドル、前年同期比▲9%
・商業銀行:13億ドル、前年同期比▲38%
・資産運用:11億ドル、前年同期比+46%

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です(FY2021はアニュアルレポート公表後に反映)。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は9.7%と、バリュエーション面では割安感があります。
(FY2021の自社株買い、総還元利回りはアニュアルレポート公表後に反映)

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、25〜40%程度です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは3.80ドルと、前年度比+5.6%、過去5年間で年率+15.1%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲3.9%となりました。

ROEの推移
2021Q4のROEは16%です。

(参考)過去5年間のROE
過去5年間のROEは10%以上と、比較的高い水準です。

EPSの実績値とコンセンサスの推移
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期、9勝、1敗です。
GAAP EPS(ドル) | |||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 2.68 | 2.45 | ○ |
2019Q4 | 2.57 | 2.35 | ○ |
2020Q1 | 0.78 | 2.12 | × |
2020Q2 | 1.38 | 1.14 | ○ |
2020Q3 | 2.92 | 2.19 | ○ |
2020Q4 | 3.79 | 2.62 | ○ |
2021Q1 | 4.50 | 3.12 | ○ |
2021Q2 | 3.78 | 3.18 | ○ |
2021Q3 | 3.74 | 3.00 | ○ |
2021Q4 | 3.33 | 3.00 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+24.6%と、S&P500(+26.9%)を下回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+12.9%と、S&P500(年率+16.3%)を下回りました。

2021Q4の株価上昇率は▲3.3%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。

競合他社(都市銀行)の株価上昇率(8306.T、8316.T、8411.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
JPモルガン・チェース(JPM)の株価上昇率は、2021年の1年間で+25%と、13社平均(+26%)を下回り、13社中第7位となりました。
2019年1月から2021年12月末の3年間では+62%と、13社平均(+32%)を上回り、13社中第2位となりました。

過去10年間(2012年1月から2021年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場の下落相場に弱いと言えます。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
銀行株にしては、比較的綺麗な上昇トレンドです。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBRの推移となります。
2021年12月末のBPSは88.1ドル(前年同期比+8%)、PBRは1.80倍となりました。

(参考)過去5年間のBPSとPBR

目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年12月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.79と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

メインシナリオの予想ROEを13%、アップサイドシナリオの予想ROEを15%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを10%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は182ドルとなります。
・メインシナリオ:182ドル
・アップサイドシナリオ:231ドル
・ダウンサイドシナリオ:108ドル
JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase & Co.、JPM)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の純収益は303億ドル(前年同期比+0.6%)、EPSは3.33ドル(コンセンサス3.00ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
純金利収入は137億ドル(前年同期比+3%)となりました。
貸倒引当金は、6四半期連続で減少し、2021年12月末時点で187億ドルです。
目標株価は182ドルのため、2021年12月末時点の株価158ドルより高い水準です。
2021年12月末時点のPBRは1.80倍と高い水準で、かつROTCEの低下が見込まれることから、大幅な株価上昇は期待できないかもしれません。
それでも、ROEが相対的に高いことから、銀行株の中では長期的にみて魅力的と言えます。





