過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とパロ・アルト・ネットワークスへの投資についてコメントします。
会社概要
パロ・アルト・ネットワークス(Palo Alto Networks、PANW)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:システム・ソフトウェア
株式時価総額:361億ドル(2021年6月末)
パロ・アルト・ネットワークスは、アメリカに本拠を置く、トラフィック内のアプリケーションを識別・制御(例えば、Web閲覧を許可した状態で同じポートを利用するアプリケーションを識別・制御可能)する機能を搭載したファイアウォール等を提供するサイバーセキュリティ企業です。
ポートではなくアプリケーションで通信を識別し、システム管理上から禁止したいアプリケーションのみを遮断し、認められたアプリケーションを特定の利用者に許可することが可能です。
(参考)競合他社(システム・ソフトウェア)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
マイクロソフト(MSFT) | 20,403 |
オラクル(ORCL) | 2,173 |
サービスナウ(NOW) | 1,085 |
VMウェア(VMW) | 670 |
クラウドストライク(CRWD) | 567 |
フォーティネット(FTNT) | 389 |
パロ・アルト・ネットワークス(PANW) | 361 |
クラウドフレア(NET) | 329 |
ゼットスケーラー(ZS) | 296 |
売上高の推移
FY2021(2020年8月-2021年7月期)の売上高は43億ドルと、前年度比+24.9%、過去5年間で年率+25.3%となりました。

2021Q4(2021年5−7月期)の売上高は12.2億ドル(前年同期比+28.3%)と、コンセンサス(11.7億ドル)を上回りました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・製品:3.4億ドル、前年同期比+11%
・サブスクリプション&サービス:8.8億ドル、前年同期比+36%
セグメント別の売上高構成比は、製品が28%、サブスクリプション&サービスが72%を占めます。

地域別の売上高構成比は、アメリカ大陸が69%、欧州/中東/アフリカが19%、アジアパシフィックが12%を占めます。

顧客数、請求額、RPOの推移
年間契約額100万ドル超の顧客数は986件(前年同期比+31%)となりました。

請求額(会計上未認識だが顧客と契約済みの案件も含めた売上高)は18.7億ドル(前年同期比+34%)となりました。

RPO(残存契約債務、受注残)は59億ドル(前年同期比+36%)となりました。

利益の推移
FY2021の非GAAP 営業利益は8.0億ドルと、前年度比+33.9%、過去5年間で年率+24.3%となりました。
非GAAP 営業利益率は18.9%と、前年度の17.6%から改善しました。
2021Q4の非GAAP 営業利益は2.1億ドル(前年同期比+13.0%)となりました。

FY2021の非GAAP EPSは6.14ドルと、前年度比+25.8%、過去5年間で年率+26.6%となりました。
2021Q4のEPSは▲1.23ドルと、コンセンサス(▲1.16ドル)を下回りました。
非GAAP EPSは1.60ドル(前年同期比+8.1%)と、コンセンサス(1.44ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは15.0億ドルと、前年度比+45.1%、過去5年間で年率+17.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は35.3%と、前年度の30.4%から改善しました。

2021Q4の営業キャッシュフローは3.3億ドル(前年同期比▲2.4%)となりました。

FY2021のフリーキャッシュフローは13.9億ドルと、前年度比+68.9%、過去5年間で年率+18.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は32.6%と、前年度の24.1%から改善しました。

2021Q4のフリーキャッシュフローは3.0億ドル(前年同期比▲1.2%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
無配ですが、近年自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+2.0%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9勝、1敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9敗、1引き分けです。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、10勝です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 7.3 | 7.0 | ○ | -0.21 | -0.19 | × | 1.31 | 1.25 | ○ |
2019Q4 | 8.1 | 8.0 | ○ | -0.22 | 0.00 | × | 1.47 | 1.42 | ○ |
2020Q1 | 7.7 | 7.7 | ○ | -0.62 | -0.45 | × | 1.05 | 1.03 | ○ |
2020Q2 | 8.2 | 8.4 | × | -0.75 | -0.41 | × | 1.19 | 1.12 | ○ |
2020Q3 | 8.7 | 8.3 | ○ | -0.77 | -0.77 | ▲ | 1.17 | 0.96 | ○ |
2020Q4 | 9.5 | 9.2 | ○ | -0.61 | -0.38 | × | 1.48 | 1.39 | ○ |
2021Q1 | 9.5 | 9.2 | ○ | -0.97 | -0.51 | × | 1.62 | 1.33 | ○ |
2021Q2 | 10.2 | 9.8 | ○ | -1.48 | -0.79 | × | 1.55 | 1.43 | ○ |
2021Q3 | 10.7 | 10.6 | ○ | -1.50 | -1.16 | × | 1.38 | 1.29 | ○ |
2021Q4 | 12.2 | 11.7 | ○ | -1.23 | -1.16 | × | 1.60 | 1.44 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+55.9%と、S&P500(+34.4%)を上回りました。
過去5年間(2016年8月から2021年7月末)の株価上昇率は年率+25.0%と、S&P500(年率+15.1%)を大きく上回りました。

2021Q4の株価上昇率は+12.9%と、S&P500(+5.1%)を上回りました。

競合他社(システム・ソフトウェア)の株価上昇率(USドル建て)は、以下の通りです。
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の株価上昇率は、2020年の1年間で+54%と、9社平均(+138%)を下回り、9社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+145%と、6社平均(+153%)を下回り、6社中第4位となりました。

2012年7月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
上昇トレンドです。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜5年目:10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は483ドルとなります。
・メインシナリオ:483ドル
・アップサイドシナリオ:576ドル
・ダウンサイドシナリオ:407ドル
パロ・アルト・ネットワークス(Palo Alto Networks、PANW)への投資について
2021Q4(2021年5−7月期)の売上高は12.2億ドル(コンセンサス11.7億ドル)、非GAAP EPSは1.60ドル(コンセンサス1.44ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
2022Q1のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:11.9〜12.1億ドル(コンセンサス11.5億ドル)
・非GAAP EPS:1.55〜1.58ドル(コンセンサス1.60ドル)
FY2022のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:52.75〜53.25億ドル(コンセンサス50.2億ドル)
・非GAAP EPS:7.15〜7.25ドル(コンセンサス7.09ドル)
DCF法による目標株価は483ドルのため、2021年8月末時点の株価461ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.3倍(年率+9%)、FY2021のフリーキャッシュフローマージンが10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
キャッシュフローマージンが低下傾向だったものの、足もとは改善傾向にあります。







