過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とフィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS)への投資についてコメントします。
会社概要
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(Fidelity National Information Services、FIS)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:情報処理・外注サービス
株式時価総額:879億ドル(2021年6月末)
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズは、アメリカに本拠を置く、金融機関向け銀行業務処理・口座管理、ITシステム構築向けソフトウェアなどの提供に加え、クレジット・デビットカードや電子バンキングサービスなどの決済サービス等を提供する企業です。
2019年に決済サービス大手のワールドペイを430億ドルで買収しました。
(参考)競合他社(情報処理・外注サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ビザ(V) | 5,145 |
マスターカード(MA) | 3,618 |
ペイパル (PYPL) | 3,424 |
スクエア(SQ) | 1,110 |
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS) | 879 |
ADP(ADP) | 845 |
アディエン(ADYEN.AS) | 746 |
ファイサーブ(FISV) | 707 |
グローバル・ペイメンツ(GPN) | 554 |
ペイチェックス(PAYX) | 387 |
アマデウスITグループ(AMS.MC) | 332 |
アフターペイ(APT.AX) | 257 |
ワールドライン(WLN.PA) | 220 |
フリートコア・テクノロジーズ(FLT) | 213 |
ストーン(STNE) | 207 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は126億ドルと、前年度比+21.5%、過去5年間で年率+14.9%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は34.8億ドル(前年同期比+17.3%)と、コンセンサス(33.9億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・企業向け:11.8億ドル、前年同期比+45%
・金融機関向け:15.8億ドル、前年同期比+7%
・資本市場向け(資産運用、証券、保険等):6.3億ドル、前年同期比+0%
セグメント別の売上高構成比は、企業向けが35%、金融機関向けが47%、資本市場向けが19%を占めます。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の非GAAP EBITDAは53億ドルと、前年度比+25.1%、過去5年間で年率+14.7%となりました。
非GAAP EBITDAマージンは41.9%と、前年度の40.7%から改善しました。
2021Q2の非GAAP EBITDAは15.2億ドル(前年同期比+31.4%)となりました。
セグメント別の非GAAP EBITDAマージンは、以下の通りです。
FY2020の非GAAP EPSは5.46ドルと、前年度比▲2.7%、過去5年間で年率+11.1%となりました。
2021Q2のEPSは0.55ドルと、コンセンサス(0.40ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは1.61ドル(前年同期比+40.0%)と、コンセンサス(1.55ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは44億ドルと、前年度比+84.3%、過去5年間で年率+31.5%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は35.4%と、前年度の23.3%から改善しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは10.3億ドル(前年同期比▲16.4%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは33億ドルと、前年度比+109.4%、過去5年間で年率+35.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は26.4%と、前年度の15.3%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは7.1億ドル(前年同期比▲26.4%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いは減少傾向にあります。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は0.2%、フリーキャッシュフロー利回りは3.7%です。
FY2020の配当利回りは1.0%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは1.40ドルと、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+6.1%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+16.8%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、6勝、1敗、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去6半期中、1勝、5敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、8勝です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 28.2 | 28.0 | ○ | 1.43 | 1.35 | ○ | |||
2019Q4 | 33.4 | 33.3 | ○ | 1.57 | 1.53 | ○ | |||
2020Q1 | 30.8 | 30.8 | ▲ | 0.02 | 0.28 | × | 1.28 | 1.27 | ○ |
2020Q2 | 29.6 | 28.7 | ○ | 0.03 | 0.14 | × | 1.15 | 1.09 | ○ |
2020Q3 | 32.0 | 31.8 | ○ | 0.03 | 0.41 | × | 1.42 | 1.41 | ○ |
2020Q4 | 33.2 | 33.3 | × | 0.16 | 0.40 | × | 1.62 | 1.56 | ○ |
2021Q1 | 32.2 | 31.6 | ○ | -0.60 | 0.11 | × | 1.30 | 1.24 | ○ |
2021Q2 | 34.8 | 33.9 | ○ | 0.55 | 0.40 | ○ | 1.61 | 1.55 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+1.7%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+18.5%と、S&P500(年率+12.9%)を上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+0.8%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(情報処理・外注サービス)の株価上昇率(ADYEN.AS、AMS.MC、WLN.PAはユーロ建て、APT.AXはオーストラリアドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+2%と、15社平均(+64%)を下回り、15社中第12位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+50%と、13社平均(+244%)を下回り、13社中第10位となりました。
過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から15%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜6年目+8%、7年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は126ドルとなります。
・メインシナリオ:126ドル
・アップサイドシナリオ:164ドル
・ダウンサイドシナリオ:108ドル
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(Fidelity National Information Services、FIS)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は34.8億ドル(コンセンサス33.9億ドル)、非GAAP EPSは1.61ドル(コンセンサス1.55ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンス(引き上げ)は、以下の通りです。
・売上高:139〜140億ドル(コンセンサス137.2億ドル)
・EPS:1.20〜1.45ドル
・非GAAP EPS:6.45〜6.60ドル(コンセンサス6.49ドル)
決算発表を受けて、株価は下落しました。
DCF法による目標株価は126ドルのため、2021年7月末時点の株価149ドルより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.7倍(年率+5%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
競合他社は魅力的な企業が多いです。