信越化学工業(4063)決算分析と目標株価 半導体の基板に使われるシリコンウエハーや塩ビで世界シェア1位

信越化学銘柄分析

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と信越化学工業への投資についてコメントします。

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会社概要

信越化学工業(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.、4063.T)

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国:日本

セクター:素材

産業グループ:化学

サブ産業グループ:特殊化学品

株式時価総額:7.5兆円(日本ランキング第11位、2020年12月末)

浮動株調整後株式時価総額:597億ドル(2021年3月末、MSCI)

信越化学工業は、日本に本拠を置く、塩ビ/化成品(塩化ビニル樹脂、か性ソーダ等)、シリコーン、機能性化学品(セルロース誘導体、金属珪素、ポバール等)、半導体シリコン、電子/機能材料(希土類磁石、半導体用封止剤、LED用パッケージ材料、フォトレジスト、マスクブランクス、合成石英製品等)、加工/商事/技術サービス(半導体ウエハー容器等)の事業を展開する企業です。

塩ビ(建築、住宅、生活用品等向けの汎用樹脂)は、米国子会社のシンテックを中心に年間400万トン以上の生産能力を持つ世界シェア1位です。

なお、塩ビの主原料の1つであるエチレンの生産工場が2020年に稼働し、シンテックは原料からの一貫生産体制を構築しました。

半導体の基板に使われるシリコンウエハー(シリコンの結晶を薄くスライス)も、世界シェア1位です。

石油資源への依存度が低く、環境への負荷が小さいシリコーン(ケイ石を還元した金属ケイ素(シリコン)を化学反応させた合成樹脂)は、国内シェア1位です。

半導体の製造工程に使用されるフォトレジスト(半導体回路のパターン転写に使用される感光材料)、フォトマスクブランクス(シリコンウエハー上に露光で転写させる回路パターンの原版となるフォトマスクの材料、世界シェア1位)も製造しています。

日本株式市場で第9位、素材セクターで第9位の浮動株調整後株式時価総額で、特殊化学品に占める信越化学工業の浮動株調整後株式時価総額比率は10%です。

売上高(セグメント別)の推移

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆4,969億円と、前年度比▲3.0%、過去5年間で年率+3.2%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・塩ビ/化成品:4,698億円、前年度比▲3%

・シリコーン:2,083億円、前年度比▲8%

・機能性化学品:1,126億円、前年度比▲2%

・半導体シリコン:3,741億円、前年度比▲3%

・電子/機能材料:2,349億円、前年度比+4%

・加工/商事/技術サービス:972億円、前年度比▲7%

 

セグメント別の売上高構成比は、塩ビ/化成品が31%、シリコーンが14%、機能性化学品が8%、半導体シリコンが25%、電子/機能材料が16%、加工/商事/技術サービスが6%を占めます。

 

地域別の売上高構成比は、日本が26%、米国が23%、中国が10%、アジア/オセアニア(除く中国)が24%、欧州が10%、その他が7%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は3,922億円と、前年度比▲3.4%、過去5年間で年率+13.5%となりました。

営業利益率は26.2%と、前年度の26.3%とほぼ同水準となりました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは706円と、前年度比▲6.5%、過去5年間で年率+15.1%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは4,012億円と、前年度比▲2.7%、過去5年間で年率+7.3%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は26.8%と、前年度の26.7%とほぼ同水準となりました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは1,638億円と、前年度比+14.6%、過去5年間で年率+4.2%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は10.9%と、前年度の9.3%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020の自社株買いはわずかです。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.8%、フリーキャッシュフロー利回りは2.1%です。

FY2020の配当利回りは1.3%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向(利益)は、40%以下です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは250円と、前年度比+13.6%、過去5年間で年率+17.8%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.5%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは20%前後と、高い水準です。

 

株価上昇率

FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+73.4%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。

過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+26.2%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく上回りました。

 

競合他社(特殊化学品)の株価上昇率(Shin-Etsuは日本円建て、DSM.ASはドル建て)は、以下の通りです。

信越化学工業(Shin-Etsu)の株価上昇率は、2020年の1年間で+50%と、7社平均(+16%)を上回り、7社中第1位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+58%と、7社平均(+34%)を上回り、7社中第4位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを6.7%、金利が1%上昇した場合は7.6%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目+15%、7年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+20%、3年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は16,132円となります。

 

信越化学工業(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.、4063.T)への投資について

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆4,969億円(前年度比▲3.0%)、営業利益は3,922億円(前年度比▲3.4%)、純利益は2,937億円(前年度比▲6.5%)と、減収減益となりました。

FY2021のガイダンスは、なしです。

DCF法による目標株価は16,132円のため、2021年5月末時点の株価18,855円より低い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

非常に優良企業ではありますが、株価が急騰したことから、割高感があります。

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