過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と任天堂への投資についてコメントします。
会社概要
任天堂(Nintendo Co.,Ltd.、7974.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・ホームエンターテイメント
株式時価総額:8.7兆円(日本ランキング第8位、2020年12月末)
任天堂は、日本に本拠を置く、ゲーム専用機(ハード、ソフト)の開発、製造、販売等を行う企業です。
ゲーム専用機の累計販売数(2021年3月末)は、Switchのハードが8,459万台、ソフトが5億8,712万本、「あつまれ どうぶつの森」が3,263万本、「マリオカート8 デラックス」が3,539万本です。
(参考)競合他社(インタラクティブ・ホームエンターテイメント)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
シー・リミテッド(SE) | 1,440 |
ネットイース (NTES) | 786 |
アクティビジョン・ブリザード(ATVI) | 742 |
任天堂(7974.T) | 691 |
ロブロックス(RBLX) | 513 |
エレクトロニック・アーツ(EA) | 411 |
ビリビリ(BILI) | 817 |
テイクツー・インタラクティブ(TTWO) | 206 |
ネクソン(3659.T) | 200 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2021(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆7,589億円と、前年度比+34.4%、過去5年間で年率+28.4%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・ゲーム専用機:1兆7,001億円、前年度比+36%
・モバイル/IP関連収入等:571億円、前年度比+11%
・その他:18億円、前年度比▲42%

FY2021のSwitchハードウェア販売台数は2,883万(前年度比+37%)、ゲーム専用機売上高に占めるハード売上高比率は52.7%となりました。

FY2021のSwitchソフトウェア販売本数は2.31億(前年度比+37%)、ゲーム専用機のソフト売上高に占める自社ソフト売上高比率は79.4%となりました。

FY2021のデジタル売上高は3,441億円(前年度比+69%)、ゲーム専用機のソフト売上高に占めるデジタル売上高比率は42.8%となりました。

地域別の売上高構成比は、日本が23%、米大陸が42%、欧州が25%、その他が11%を占めます。

利益の推移
FY2021の営業利益は6,406億円と、前年度比+81.8%、過去5年間で年率+81.1%となりました。
営業利益率は36.4%と、前年度の26.9%から改善しました。

FY2021のEPSは4,033円と、前年度比+85.7%、過去5年間で年率+96.6%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは6,121億円と、前年度比+76.0%、過去5年間で年率+61.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は34.8%と、前年度の26.6%から改善しました。

FY2021のフリーキャッシュフローは6,051億円と、前年度比+79.1%、過去5年間で年率+64.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は34.4%と、前年度の25.8%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに消極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は6.5%、フリーキャッシュフロー利回りは8.2%です。
FY2021の配当利回りは3.6%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(利益)は、50%程度です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは2,220円と、前年度比+103.7%、過去5年間で年率+71.4%となりました。
FY2022のDPSは1,430円(前年度比▲35.6%)の予定です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.2%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
ROICは急上昇しており、投資効率は非常に高いです。

株価上昇率
FY2021(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+48.5%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を下回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+31.0%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく上回りました。

競合他社(インタラクティブ・ホームエンターテイメント)の株価上昇率(7974.T、3659.Tは日本円建て)は、以下の通りです。
任天堂(7974.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+50%と、8社平均(+143%)を下回り、8社中第7位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+60%と、7社平均(+251%)を下回り、7社中第4位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
ドローダウンは非常に大きいです。
最高値から40%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
再度、株価が急騰する可能性がありそうです。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.9%、金利が1%上昇した場合は7.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+0%、3年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は68,975円となります。

任天堂(Nintendo Co.,Ltd.、7974.T)への投資について
FY2021(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆7,589億円(前年度比+34.4%)、営業利益は6,406億円(前年度比+81.8%)、純利益は4,804億円(前年度比+85.7%)と、増収増益となりました。
FY2022のガイダンス(前提:1ドル=105円、1ユーロ=120円)は、以下の通りです。
・売上高:1兆6,000億円(前年度比▲9.0%)
・営業利益:5,000億円(前年度比▲22.0%)
・純利益:3,400億円(前年度比▲29.2%)
・Switchハードウェア販売台数:2,550万台(前年度比▲11.5%)
・Switchソフトウェア販売本数:1.9億本(前年度比▲17.7%)
DCF法による目標株価は68,975円のため、2021年5月末時点の株価67,700円とほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.3倍(年率+3%)、FY2022にフリーキャッシュフローマージンが27%まで低下し、その後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
テンセントが好きなので、ゲーム事業が被る任天堂へ投資することはないですが、中国株投資をしない人にとっては、投資効率が非常に高い任天堂は魅力的です。


