過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とドイツ・テレコムへの投資についてコメントします。
会社概要
ドイツ・テレコム(Deutsche Telekom AG、DTE.DE)
ホームページ(IR):リンク先
国:ドイツ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:電気通信サービス
サブ産業グループ:総合電気通信サービス
株式時価総額:1,010億ドル(2021年6月末)
ドイツ・テレコムは、ドイツに本拠を置く、アメリカのTモバイルUSを傘下(4割超の株式を保有)に持つ、大手電気通信事業者です。
(参考)競合他社(電気通信サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ベライゾン(VZ) | 2,320 |
AT&T(T) | 2,063 |
TモバイルUS(TMUS) | 1,806 |
ソフトバンクグループ(9984.T) | 1,195 |
チャイナ・モバイル(0941.HK) | 1,280 |
ドイツ・テレコム(DTE.GE) | 1,010 |
NTT(9432.T) | 952 |
KDDI(9433.T) | 703 |
ソフトバンク(9434.T) | 614 |
ボーダフォン・グループ(VOD) | 477 |
アメリカ・モービル(AMX) | 497 |
BCE(BCE) | 448 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は1,010億ユーロと、前年度比+25.4%、過去5年間で年率+7.8%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・ドイツ:234億ユーロ、前年度比▲1%
・アメリカ:612億ユーロ、前年度比+51%
・欧州(除くドイツ):113億ユーロ、前年度比▲2%
・システムソリューション:42億ユーロ、前年度比▲6%
・ディベロップメント:29億ユーロ、前年度比+3%
・本部/サービス:26億ユーロ、前年度比▲3%

セグメント別の売上高構成比は、アメリカが58%、ドイツが22%を占めます。

2020年12月末のアメリカ契約件数は1.02億(前年度比+50%)、欧州モバイル契約件数は0.46億(前年度比▲1%)となりました。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の調整後EBITDAは350億ユーロと、前年度比+41.6%、過去5年間で年率+12.0%となりました。
調整後EBITDAマージンは34.7%と、前年度の30.7%とほぼ同水準となりました。

セグメント別の調整後EBITDAマージンは、以下の通りです。

FY2020のEPSは0.88ユーロと、前年度比+7.3%、過去5年間で年率+4.4%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは237億ユーロと、前年度比+2.9%、過去5年間で年率+9.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は23.5%と、前年度の28.7%から悪化しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは50億ユーロと、前年度比▲42.1%、過去5年間で年率+67.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は5.0%と、前年度の10.8%から悪化しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに消極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は5.9%、フリーキャッシュフロー利回りは7.1%です。
FY2020の配当利回りは4.0%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向(キャッシュフロー)は、約60%です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは0.60ユーロと、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+1.8%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+1.3%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去3年間のROICは5%程度です。

有利子負債の推移
FY2020の純有利子負債(有利子負債(リース含む)−現金等)は約1,243億ユーロです。

株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+2.6%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+14.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率▲2.2%と、VT ETF(年率+9.9%)を大きく下回りました。

競合他社(電気通信サービス)の株価上昇率(9984.T、9432.T、9433.T、9434.Tは日本円建て、0941.HKは香港ドル建て、DTE.GEはユーロ建て)は、以下の通りです。
ドイツ・テレコム(DTE.GE)の株価上昇率は、2020年の1年間で+3%と、12社平均(+2%)を上回り、12社中第3位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+1%と、11社平均(+6%)を下回り、11社中第5位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
2017年6月から続いているドローダウンが、もうすぐ終わりそうです。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
トレンドラインを再度上抜けることができれば、大きな株価上昇が期待できます。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.3%、金利が1%上昇した場合は5.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+40%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+40%、2年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+40%、2年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は21ユーロとなります。

ドイツ・テレコム(Deutsche Telekom AG、DTE.DE)への投資について
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は1,010億ユーロ(前年度比+25.4%)、EPSは0.88ユーロ(前年度比+7.3%)と、増収増益となりました。
DCF法による目標株価は21ユーロのため、2021年5月末時点の株価17ユーロより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.6倍(年率+5%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが7%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
TモバイルUSの業績拡大の恩恵を享受しており、今後ソフトバンクグループからTモバイルUSの株式を取得した場合、さらにTモバイルUSの影響が強くなります。
単純にTモバイルUS(無配)へ投資した方が良さそうですが、ドイツ・テレコムの配当利回りが4%程度あることから、成長性を取りつつ配当も欲しい場合は検討できるかもしれません。









