コマツ(6301)決算分析と目標株価 世界第2位の建設機械メーカー 新興国向け売上高が4割超を占める

クボタ資本財

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とコマツへの投資についてコメントします。

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会社概要

小松製作所(Komatsu Ltd、6301.T)

ホームページ(有報):リンク先

国:日本

セクター:資本財・サービス

産業グループ:資本財

サブ産業グループ:建設機械・大型トラック

株式時価総額:2.7兆円(日本ランキング第53位、2020年12月末)

コマツは、日本に本拠を置く、建設機械/車両(ショベル、ホイールローダー、ブルドーザー等)、リテールファイナンス(建設/鉱山機械のリース、割賦)、産業機械他(サーボプレス、レーザー加工機等)を展開する、大手建機メーカーです。

コマツのITシステムであるコムトラックス(KOMTRAX)は、建機にGPSを搭載することで、顧客の建機の位置や稼働状況等を遠隔監視できます。

(参考)競合他社(建設機械・大型トラック)の株式時価総額

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆1,895億円と、前年度比▲10.4%、過去5年間で年率+3.4%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・建設機械/車両:1兆9,760億円、前年度比▲11%

・リテールファイナンス:664億円、前年度比▲6%

・産業機械他:1,713億円、前年度比▲4%

 

セグメント別の売上高構成比は、建設機械/車両が89%を占めます。

 

地域別の売上高構成比は、伝統市場(日本、北米、欧州)が47%、戦略市場が53%を占めます。

戦略市場からオセアニアを除いた新興国は41%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は1,673億円と、前年度比▲33.3%、過去5年間で年率▲4.3%となりました。

営業利益率は7.6%と、前年度の10.3%から悪化しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは161円と、前年度比▲31.0%、過去5年間で年率▲5.1%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは3,541億円と、前年度比+20.0%、過去5年間で年率+2.1%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は16.2%と、前年度の12.1%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは1,726億円と、前年度比+56.2%、過去5年間で年率+2.4%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は7.9%と、前年度の4.5%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに消極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.3%、フリーキャッシュフロー利回りは5.3%です。

FY2020の配当利回りは1.6%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、50%以下です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは55円と、前年度比▲41.5%、過去5年間で年率▲1.1%となりました。

FY2021のDPSは62円(前年度比+12.7%)の予定です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+0.0%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

足もと、ROICは低下傾向です。

 

BPSとPBRの推移

以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。

FY2020のBPSは2,023円と、前年度比+7.9%、過去5年間で年率+4.7%となりました。

FY2020のPBRは1.7倍です。

 

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。

ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。

金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

 

株価上昇率

FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+92.2%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。

過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+12.3%と、VT ETF(年率+11.0%)を上回りました。

 

競合他社(建設機械・大型トラック)の株価上昇率(VOLV-B.ST 、EPI-A.STはスウェーデンクローナ、6301.Tは日本円建て、KBX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

コマツ(6301.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+7%と、8社平均(+17%)を下回り、8社中第7位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では▲31%と、6社平均(+9%)を下回り、6社中第6位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

建設機械・大型トラックは景気感応度が高いため、下落相場に弱いと言えます。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを7.3%、金利が1%上昇した場合は8.2%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+13%、2年目+10%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+13%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は3,080円となります。

 

小松製作所(Komatsu Ltd、6301.T)への投資について

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆1,895億円(前年度比▲10.4%)、純利益は1,062億円(前年度比▲30.9%)と、減収減益となりました。

FY2021のガイダンス(前提:1ドル=105円、1ユーロ=124円)は、以下の通りです。

・売上高:2兆4,690億円(前年度比+12.8%)

・営業利益:2,250億円(前年度比+34.5%)

・純利益:1,460億円(前年度比+37.4%)

DCF法による目標株価は3,080円のため、2021年5月末時点の株価3,203円とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.8倍(年率+6%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである8%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

利益率や投資効率、株主還元等の観点で、コマツよりキャタピラーの方が魅力的です。

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