過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とクボタへの投資についてコメントします。
会社概要
クボタ(Kubota Corporation、6326.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:資本財・サービス
産業グループ:資本財
サブ産業グループ:農業機械
株式時価総額:2.7兆円(日本ランキング第54位、2020年12月末)
クボタは、日本に本拠を置く、機械(トラクタやコンバイン等の農業機械及び農業関連製品、エンジン、建設機械)、水/環境(パイプインフラ関連、ポンプやプラント等の環境関連)、その他(物流等)の事業を展開する大手農業機械メーカーです。
売上規模では、ディア・アンド・カンパニー🇺🇸、CNHインダストリアル🇳🇱に次いで世界第3位、株式時価総額では、ディア・アンド・カンパニーに次いで世界第2位の農業機械メーカーです。
(参考)競合他社(農業機械)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ディア・アンド・カンパニー(DE) | 1,100 |
クボタ(6326.T) | 244 |
CNHインダストリアル(CNHI) | 226 |
トロ(TTC) | 118 |
アグコ (AGCO) | 98 |
リンゼー(LNN) | 18 |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は1兆8,532億円と、前年度比▲3.5%、過去5年間で年率+8.3%となりました。

セグメント別(製品別)の売上高(外部顧客向け、建設機械以外の機械の売上高は10億円未満で四捨五入)は、以下の通りです。
・機械(トラクタ):5,340億円、前年度比▲4%
・機械(作業機):1,240億円、前年度比+6%
・機械(エンジン):1,290億円、前年度比▲17%
・機械(金融収益):790億円、前年度比+4%
・機械(その他):3,530億円、前年度比+4%
・機械(建設機械):2,899億円、前年度比▲7%
・水/環境(パイプインフラ関連):1,931億円、前年度比▲3%
・水/環境(環境関連):1,227億円、前年度比▲7%
・その他:287億円、前年度比▲9%

セグメント別の売上高構成比は、機械が81%、水/環境が17%、その他が2%を占めます。

地域別の売上高構成比は、日本が32%、北米が35%、欧州が12%、アジア(日本除く)が18%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は1,753億円と、前年度比▲13.1%、過去5年間で年率+1.0%となりました。
営業利益率は9.5%と、前年度の10.5%から悪化しました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2020のEPSは106円と、前年度比▲12.9%、過去5年間で年率+3.7%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1,429億円と、前年度比+73.4%、過去5年間で年率▲6.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は7.7%と、前年度の4.3%から改善しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは582億円と、前年度比黒字転換となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は3.1%と、前年度の▲0.6%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
2年連続で、200億円の自社株買いを実施しました。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は4.7%、フリーキャッシュフロー利回りは2.1%です。
FY2020の配当利回りは1.6%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(利益)は、40%以下です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは36円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+5.2%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去3年間で年率▲0.6%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去5年間のROICは10%以上です。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。
FY2020のBPSは1,222円と、前年度比+3.3%、過去5年間で年率+5.9%となりました。
FY2020のPBRは1.8倍です。

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+30.4%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+14.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+3.6%と、VT ETF(年率+9.9%)を大きく下回りました。

競合他社(農業機械)の株価上昇率(6326.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
クボタ(6326.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+30%と、6社平均(+31%)を下回り、6社中第4位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+2%と、6社平均(+34%)を下回り、6社中第5位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
ドローダウンは大きいです。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.0%、金利が1%上昇した場合は6.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目+30%、3年目+30%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目〜3年目+30%、4年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目〜3年目+30%、4年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は2,527円となります。

クボタ(Kubota Corporation、6326.T)への投資について
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は1兆8,532億円(前年度比▲3.5%)、純利益は1,285億円(前年度比▲13.8%)と、減収減益となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:2兆0,500億円(前年度比+10.6%)
・営業利益:2,200億円(前年度比+25.5%)
・純利益:1,580億円(前年度比+22.9%)
DCF法による目標株価は2,527円のため、2021年5月末時点の株価2,488円とほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+7%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが8%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ROEとPBRの関係による目標株価は、ROEが11%(FY2016〜2019の数値)とした場合、2,416円となります。



