過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とキャタピラーへの投資についてコメントします。
会社概要
キャタピラー(Caterpillar、CAT)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:資本財・サービス
産業グループ:資本財
サブ産業グループ:建設機械・大型トラック
浮動株調整後株式時価総額:1,260億ドル(2021年3月末、MSCI)
キャタピラーは、アメリカに本拠を置く、建設機械や鉱山機械等を設計・製造・販売する、世界最大の重機メーカーです。
資本財・サービスセクターで第4位、資本財で第3位の浮動株調整後株式時価総額で、建設機械・大型トラック(先進国)に占めるキャタピラーの浮動株調整後株式時価総額比率は38%です。

(参考)競合他社(建設機械・大型トラック)の株式時価総額

売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は417億ドルと、前年度比▲22.4%、過去5年間で年率▲2.3%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・建設機械:169億ドル、前年度比▲25%
・鉱山機械:79億ドル、前年度比▲23%
・エネルギー&輸送:175億ドル、前年度比▲21%
・金融:27億ドル、前年度比▲10%

セグメント別の売上高構成比は、建設機械が38%、鉱山機械が18%、エネルギー&輸送が39%、金融が6%を占めます。

地域別の売上高は、以下の通りです。
・北米:182億ドル、前年度比▲29%
・ラテンアメリカ:34億ドル、前年度比▲27%
・欧州/アフリカ/中東:99億ドル、前年度比▲12%
・アジアパシフィック:102億ドル、前年度比▲15%

地域別の売上高構成比は、北米が44%、ラテンアメリカが8%、欧州/中東/アフリカが24%、アジアパシフィックが25%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は46億ドルと、前年度比▲45.1%、過去5年間で年率+3.8%となりました。
営業利益率は10.9%と、前年度の15.4%から悪化しました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2020のEPSは5.46ドルと、前年度比▲49.2%、過去5年間で年率+5.5%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは63億ドルと、前年度比▲8.5%、過去5年間で年率▲1.1%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は15.2%と、前年度の12.9%から改善しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは42億ドルと、前年度比▲0.7%、過去5年間では年率+4.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は10.1%と、前年度の7.9%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.0%、フリーキャッシュフロー利回りは4.2%です。
FY2020の配当利回りは2.3%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去3年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは4.12ドルと、前年度比+4.3%、過去5年間で年率+6.5%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.7%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去3年間のROICは10%前後と、投資効率は悪くありません。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、3勝、5敗です。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、4勝、4敗です。

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、5勝、3敗です。

株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+23.3%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+21.8%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。

競合他社(建設機械・大型トラック)の株価上昇率(VOLV-B.ST 、EPI-A.STはスウェーデンクローナ、6301.Tは日本円建て、KBX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
キャタピラー(CAT)の株価上昇率は、2020年の1年間で+23%と、8社平均(+17%)を上回り、8社中第4位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+16%と、6社平均(+9%)を上回り、6社中第4位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
建設機械・大型トラックは景気感応度が高いため、下落相場に弱いと言えます。
最高値から30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.1%、金利が1%上昇した場合は6.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は241ドルとなります。

キャタピラー(Caterpillar、CAT)への投資について
FY2020(2020年1−12月期)の売上高は417億ドル(前年度比▲22.4%)、非GAAP EPSは6.56ドル(前年度比▲42.5%)と、減収減益となりました。
FY2021のガイダンスはなしです。
DCF法による目標株価は241ドルのため、2021年5月末時点の株価241ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.1倍(年率+8%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである10%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
景気敏感株のため、コロナ収束後には業績急回復が期待できます。
利益率や投資効率、株主還元等の観点で、コマツと比較するとキャタピラーの方が魅力的です。



