資生堂(4911)決算分析と目標株価 eコマースの売上高が急増 フリーキャッシュフローは赤字が継続

家庭用品・パーソナル用品

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と資生堂への投資についてコメントします。

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会社概要

資生堂(Shiseido、4911.T)

ホームページ(IR):リンク先

国:日本

セクター:生活必需品

産業グループ:家庭用品・パーソナル用品

サブ産業グループ:パーソナル用品

株式時価総額:3.3兆円(日本ランキング第48位、2021年6月末)

資生堂は、日本に本拠を置く、大手化粧品会社です。

 

(参考)競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
プロクター・アンド・ギャンブル(PG)🇺🇸3,303
ロレアル(OR.PA)🇫🇷2,508
ユニリーバ(UL)🇬🇧1,529
エスティローダー(EL)🇺🇸1,153
コルゲート・パルモリーブ(CL)🇺🇸688
レキットベンキーザー(RKT.L)🇬🇧638
ヘンケル(HEN3.DE)🇩🇪458
キンバリー・クラーク(KMB)🇺🇸451
花王(4452.T)🇯🇵298
資生堂(4911.T)🇯🇵295
バイヤスドルフ(BEI.DE)🇩🇪276
LG生活健康(051905.KS)🇰🇷275
エシティ(ESSITY-B.ST)🇸🇪235
ユニチャーム(8113.T)🇯🇵241
クロロックス (CLX)🇺🇸224
チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)🇺🇸209

 

売上高(セグメント別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は9,209億円と、前年度比▲18.6%、過去5年間では年率+3.8%となりました。

eコマースの売上高が+55%と急増し、eコマースの売上高比率が25%(FY2019:13%)へ上昇しました。

中国事業におけるeコマースの売上高比率は4割を超えました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・日本:3,030億円、前年度比▲29.7%

・中国:2,358億円、前年度比+9.0%

・アジアパシフィック:592億円、前年度比▲15.3%

・米州:914億円、前年度比▲25.7%

・欧州:943億円、前年度比▲20.4%

・トラベルリテール:985億円、前年度比▲19.8%

・プロフェッショナル:128億円、前年度比▲13.1%

・その他:259億円、前年度比▲27.1%

 

セグメント別の売上高構成比は、日本が33%、中国が26%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業利益は150億円と、前年度比▲86.9%、過去5年間では年率▲16.9%となりました。

営業利益率は1.6%と、前年度の10.1%から悪化しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは▲29円と、前年度比赤字転落となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは640億円と、前年度比▲15.2%、過去5年間では年率+1.1%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は7.0%と、前年度の6.7%から改善しました。

 

FY2020の設備投資額/売上高は8.0%と、前年度の9.9%から低下しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは▲94億円と、3期連続で赤字となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲1.0%と、前年度の▲3.2%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の支払配当総額は200億円と、フリーキャッシュフローを超えた水準です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020は、利益・キャッシュフローともに赤字です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020は40円へ減配、FY2021は50円へ増配見込みです。

過去5年間の増配率は年率+1.1%です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

過去5年間の発行済株式数は、ほぼ横ばいです。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは概ね10%程度と、投資効率は比較的高いものの、海外大手競合他社に劣後します。

 

株価上昇率

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+182%(年率+23.1%)と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率+61%(年率+9.9%)を大きく上回りました。

 

競合他社(家庭用品・パーソナル用品)の株価上昇率(OR.PA、HEN3.DE、BEI.DEはユーロ建て、RKT.Lはポンド建て、4452.T、4911.T、8113.Tは日本円建て、051905.KSは韓国ウォン建て、ESSITY-B.STはスウェーデン・クローナ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

資生堂(4911.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲8%と、16社平均(+8%)を下回り、16社中第13位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+31%と、16社平均(+29%)を上回り、16社中第7位となりました。

 

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

株式市場全体と比較して、大きなドローダウンが度々発生しています。

最高値から25〜30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.4%、金利が1%上昇した場合は5.3%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0%、2年目0億円、3年目100億円、4年目〜5年目+200%、6年目〜10年目+14%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0%、2年目0億円、3年目100億円、4年目〜5年目+200%、6年目〜10年目+23%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目0%、2年目0億円、3年目100億円、4年目〜5年目+200%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は7,069円となります。

 

資生堂(Shiseido、4911.T)への投資について

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は9,209億円(前年度比▲18.6%)、営業利益は150億円(前年度比▲86.9%)となりました。

デジタル・マーケティングに注力しており、eコマースの売上高、および中国向け売上高の増加が期待できます。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:1兆1,000億円(前年度比+19%)

・営業利益:350億円(前年度比+134%)

・当期利益:115億円(前年度比▲117億円)

DCF法による目標株価は7,069円のため、2021年2月末時点の株価7,913円より低い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

中国事業の業績拡大はポジティブですが、早期のフリーキャッシュフローの黒字化を期待したいです。

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