過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアクセンチュアへの投資についてコメントします。
会社概要
アクセンチュア(Accenture、ACN)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アイルランド(MSCI:アメリカ)
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:情報技術コンサルティング・他のサービス
株式時価総額:2,200億ドル(世界ランキング第46位、2023年12月末)
アクセンチュアは、アイルランドに本拠を置く、ITに強みを持つ世界最大級のコンサルティング企業です。
ITサービス(システム開発や運用アウトソーシング、製品サポートなど、システム構築会社のサービス)では、世界シェア第1位です。
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2023(2022年9月-2023年8月期)の売上高は641億ドルと、前年度比+4.1%、過去5年間で年率+9.4%となりました。
産業別の売上高は、以下の通りです。
・コミュニケーション、メディア&テクノロジー:115億ドル、前年度比▲6%
・金融業務:121億ドル、前年度比+3%
・ヘルスケア&公共サービス:126億ドル、前年度比+12%
・製品:191億ドル、前年度比+5%
・資源:89億ドル、前年度比+10%
タイプ別の売上高は、以下の通りです。
・コンサルティング:336億ドル、前年度比▲1%
・マネージドサービス(旧アウトソーシング):305億ドル、前年度比+11%
地域別の売上高は、以下の通りです。
・北米:303億ドル、前年度比+4%
・欧州:213億ドル、前年度比+5%
・成長市場:125億ドル、前年度比+3%
利益(地域別)の推移
FY2023の営業利益は88億ドルと、前年度比▲5.9%、過去5年間で年率+8.4%となりました。
営業利益率は13.7%と、前年度の15.2%から悪化しました。
地域別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2023のEPSは10.77ドルと、前年度比+0.6%、過去5年間で年率+11.2%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2023の営業キャッシュフローは95億ドルと、前年度比▲0.2%、過去5年間で年率+9.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は14.9%と、前年度の15.5%から悪化しました。
FY2023のフリーキャッシュフローは90億ドルと、前年度比+2.0%、過去5年間で年率+10.7%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は14.0%と、前年度の14.3%とほぼ同水準となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2023の益利回り(PERの逆数)は3.3%、フリーキャッシュフロー利回りは4.3%です。
配当利回りは1.4%、総還元利回りは4.4%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに40%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2023のDPSは4.48ドルと、前年度比+15.5%、過去5年間で年率+11.0%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.5%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは20〜40%程度と、投資効率が高いです。
株価上昇率
FY2023の株価上昇率は+12.2%と、S&P500(+14.0%)を下回りました。
過去5年間(2018年9月から2023年8月末)の株価上昇率は年率+13.9%と、S&P500(年率+9.2%)を大きく上回りました。
過去10年間(2014年1月から2023年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+5%、4年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+5%、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は342ドルとなります。
・メインシナリオ:342ドル
・アップサイドシナリオ:412ドル
・ダウンサイドシナリオ:249ドル
アクセンチュア(Accenture、ACN)への投資について
FY2023の売上高は641億ドル(年度比+4.1%)、EPSは10.77ドル(前年度比+0.6%)となりました。
FY2024のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高増加率(現地通貨建て):+2〜5%
・EPS:+6〜9%
DCF法による目標株価は342ドルのため、2023年12月末時点の株価351ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、FY2023のフリーキャッシュフローマージンが今後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
足もとは企業のIT支出抑制から厳しい状況です。
情報技術セクターのなかでは、派手さはないものの、長期的にみて業績拡大が期待でき、大手IT企業のような規制リスクがない点が魅力的です。
コンサルティングやITサービスはAIに仕事が奪われる懸念がありますが、アクセンチュアはAI関連事業に積極投資するなど勝ち組で居続けられるかと思います。