過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とビザ(VISA)への投資についてコメントします。
会社概要
ビザ(VISA、V)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:金融サービス
サブ産業グループ:取引・決済処理サービス
株式時価総額:5,351億ドル(世界ランキング第12位、2023年12月末)
ビザは、アメリカに本拠を置く、金融機関にペイメントプラットフォームとサービスを提供する世界最大手です。
もともとはクレジットカードの発行や消費者に対する与信判断、貸金業等を実施しないことから、金融ではなく、情報技術セクターに分類されていましたが、2023年のGICS構成変更により金融セクターに分類されることになりました。
売上高(セグメント別)の推移
FY2023(2022年10月-2023年9月期)の売上高は327億ドルと、前年度比+11.4%、過去5年間で年率+9.6%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サービス:148億ドル、前年度比+11%
・データ処理:160億ドル、前年度比+11%
・国際取引:116億ドル、前年度比+19%
・その他:25億ドル、前年度比+25%
・顧客インセンティブ:▲123億ドル
取扱件数、総取扱高、決済総額(地域別)、クロスボーダー決済額の推移
FY2023の取扱件数は2,126億件(前年度比+10%)となりました。
総取扱高(キャッシング等含む)は、以下の通りです。
・全体:14.8兆ドル、前年度比+5%
うち、決済総額は12.3兆ドル、前年度比+6%
・クレジット:6.4兆ドル、前年度比+7%
・デビット:8.4兆ドル、前年度比+4%
地域別の決済総額は、以下の通りです。
・アジアパシフィック:2.0兆ドル、前年度比▲0%
・カナダ:0.4兆ドル、前年度比+4%
・CEMEA(中欧東欧/中東/アフリカ):0.6兆ドル、前年度比▲2%
・LAC(中南米/カリブ海):0.8兆ドル、前年度比+20%
・アメリカ:6.1兆ドル、前年度比+8%
・欧州:2.3兆ドル、前年度比+1%
FY2023のクロスボーダー決済額は前年度比+20%となりました。
利益の推移
FY2023の営業利益は210億ドルと、前年度比+11.6%、過去5年間で年率+10.1%となりました。
営業利益率は64.3%と、前年度の64.2%とほぼ同水準となりました。
FY2023のEPSは8.28ドルと、前年度比+18.3%、過去5年間で年率+13.4%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2023の営業キャッシュフローは208億ドルと、前年度比+10.1%、過去5年間で年率+9.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は63.6%と、前年度の64.3%とほぼ同水準となりました。
FY2023のフリーキャッシュフローは197億ドルと、前年度比+10.2%、過去5年間で年率+10.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は60.3%と、前年度の61.0%とほぼ同水準となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2023の益利回り(PERの逆数)は3.6%、フリーキャッシュフロー利回りは4.1%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、30%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2023のDPSは1.80ドルと、前年度比+20.0%、過去5年間で年率+16.9%となりました。
FY2024のDPSは2.08ドル(前年度比+16%)の予定です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.2%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは20%超と、投資効率は比較的高いです。
株価上昇率
FY2023の株価上昇率は+29.5%と、S&P500(+19.6%)を上回りました。
過去5年間(2018年10月から2023年9月末)の株価上昇率は年率+8.8%と、S&P500(年率+8.0%)を上回りました。
過去10年間(2014年1月から2023年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.5%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+10%、3年目〜10年目+8%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+5%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は281ドルとなります。
・メインシナリオ:281ドル
・アップサイドシナリオ:361ドル
・ダウンサイドシナリオ:176ドル
ビザ(VISA、V)への投資について
FY2023の売上高は327億ドル(前年度比+11.4%)、EPSは8.28ドル(前年度比+18.3%)となりました。
DCF法による目標株価は281ドルのため、2023年12月末時点の株価260ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.4倍(年率+9%)、フリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
自社株買いに積極的なので、発行済株式数の減少による株価上昇も期待できます。
クレジットカード決済手数料の高さはこれまでも問題になっており、クレジットカード以外の決済手段の普及等によりビザの優位性は低下していく可能性はありますが、メインの決済手段であることには変わりがなく、物価上昇や経済成長の恩恵を享受できます。