過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とディズニーへの投資についてコメントします。
会社概要
ディズニー(Disney、DIS)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:映画・娯楽
株式時価総額:3,194億ドル(世界ランキング第28位、2021年6月末)
ディズニーは、アメリカに本拠を置く、世界的なエンターテインメント企業です。
(参考)競合他社(映画・娯楽)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ウォルト・ディズニー(DIS) | 3,194 |
ネットフリックス(NFLX) | 2,342 |
ロク(ROKU) | 608 |
スポティファイ・テクノロジー(SPOT) | 526 |
ヴィヴェンディ(VIV.PA) | 356 |
テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME) | 262 |
ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV) | 192 |
ワーナー・ミュージック・グループ(WMG) | 185 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2019年10月-2020年9月期)の売上高は654億ドルと、前年度比▲6.1%、過去5年間で年率+4.5%となりました。
2021Q3(2021年4−6月期)の売上高は170億ドル(前年同期比+44.5%)と、コンセンサス(168億ドル)を上回りました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・メディア&エンターテイメント:127億ドル、前年同期比+18%
・テーマパーク:43億ドル、前年同期比+308%

動画配信サービスの加入者数の推移
2021年6月末時点のディズニープラスの加入者数は1.16億人(前年同期比+102%)、ESPN+の加入者数は1,490万人(前年同期比+75%)、Huluの加入者数は4,280万人(前年同期比+21%)となりました。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は38億ドルと、前年度比▲67.9%、過去5年間で年率▲22.1%となりました。
営業利益率は5.8%と、前年度の17.0%から悪化しました。
2021Q3の営業利益は14億ドル(前年同期比+2,557%)となりました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2020の非GAAP EPSは2.02ドルと、前年度比▲64.9%、過去5年間で年率▲17.1%となりました。
2021Q3のEPSは0.50ドルと、コンセンサス(0.31ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは0.80ドル(前年同期比+900%)と、コンセンサス(0.55ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは76億ドルと、前年度比+27.3%、過去5年間で年率▲7.7%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は11.6%と、前年度の8.6%から改善しました。
2021Q3の営業キャッシュフローは15億ドル(前年同期比+26.2%)となりました。

FY2020のフリーキャッシュフローは36億ドルと、前年度比+224.4%、過去5年間で年率▲12.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は5.5%と、前年度の1.6%から改善しました。
2021Q3のフリーキャッシュフローは5億ドル(前年同期比+16.3%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
2年連続で自社株買いの実施はなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは0.88ドルと、前年度比▲50%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+1.1%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、6勝、3敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、4勝、5敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、7勝、2敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 203 | 214 | × | 0.97 | 1.45 | × | 1.35 | 1.74 | × |
2019Q4 | 191 | 190 | ○ | 0.58 | 0.77 | × | 1.07 | 0.97 | ○ |
2020Q1 | 209 | 208 | ○ | 1.16 | 1.25 | × | 1.53 | 1.44 | ○ |
2020Q2 | 180 | 175 | ○ | 0.25 | 0.73 | × | 0.60 | 0.90 | × |
2020Q3 | 118 | 124 | × | -2.61 | -0.98 | × | 0.08 | -0.67 | ○ |
2020Q4 | 147 | 141 | ○ | -0.39 | -0.95 | ○ | -0.20 | -0.65 | ○ |
2021Q1 | 162 | 159 | ○ | 0.01 | -0.71 | ○ | 0.32 | -0.34 | ○ |
2021Q2 | 156 | 159 | × | 0.50 | 0.06 | ○ | 0.79 | 0.26 | ○ |
2021Q3 | 170 | 168 | ○ | 0.50 | 0.31 | ○ | 0.80 | 0.55 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は▲4.8%と、S&P500(+13.0%)を下回りました。
過去5年間(2015年10月から2020年9月末)の株価上昇率は年率+4.0%と、S&P500(年率+11.9%)を下回りました。
2021Q3の株価上昇率は▲4.7%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。

競合他社(映画・娯楽)の株価上昇率(VIV.PAはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ディスニー(DIS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+25%と、7社平均(+60%)を下回り、7社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+69%と、5社平均(+176%)を下回り、5社中第4位となりました。

株式市場全体の下落局面における株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
ディズニーは、下落相場にやや弱いと言えます。

過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目+100%、3年目〜4年目+15%、5年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目+100%、3年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+50%、2年目+100%、3年目〜7年目+10%、8年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は172ドルとなります。
・メインシナリオ:172ドル
・アップサイドシナリオ:220ドル
・ダウンサイドシナリオ:138ドル
ディズニー(Disney、DIS)への投資について
2021Q3(2021年4−6月期)の売上高は170億ドル(コンセンサス168億ドル)、非GAAP EPSは0.80ドル(コンセンサス0.55ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
ディズニープラスの加入者数は1.16億人(前年同期比+102%)と、コンセンサス(1.13億人)を上回りました。
DCF法による目標株価は172ドルのため、202年8月末時点の株価181ドルより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.6倍(年率+10%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
アフターコロナ銘柄ということで株価が急騰しましたが、割安感はなさそうです。
