リンデ(LIN)決算分析と目標株価 自動車や半導体の工場で使用される産業ガス世界最大手

リンデ銘柄分析

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とリンデへの投資についてコメントします。

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会社概要

リンデ(Linde、LIN)

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国:イギリス(MSCI:アメリカ)

セクター:素材

産業グループ:化学

サブ産業グループ:工業用ガス

株式時価総額:1,383億ドル(世界ランキング第84位、2020年12月末)

リンデは、イギリスに本拠を置く、独リンデと米プラクスエアが合併して設立された産業ガス世界最大手です。

素材セクターで第1位の浮動株調整後株式時価総額(2020年12月末、MSCI)で、工業用ガスに占めるリンデの浮動株調整後株式時価総額比率は49%です。

売上高(セグメント別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は272億ドルと、前年度比▲3.5%、過去5年間で年率+20.5%となりました。

 

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は76億ドル(前年同期比+18.9%)と、コンセンサス(74億ドル)を上回りました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・アメリカ:30.2億ドル、前年同期比+25%

・欧州/中東/アフリカ:18.8億ドル、前年同期比+29%

・アジアパシフィック:15.4億ドル、前年同期比+19%

・エンジニアリング:6.5億ドル、前年同期比▲20%

・その他:5.0億ドル、前年同期比+23%

セグメント別の売上高構成比は、アメリカが40%を占めます。

 

各業種向けの売上高構成比は、ヘルスケアが20%、製造が19%、化学/精製が19%、金属が13%、エレクトロニクスが10%、食品/飲食が10%、その他が9%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

2021Q2の非GAAP 営業利益は18億ドル(前年同期比+39.5%)となりました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020の非GAAP EPSは8.23ドルと、前年度比+12.1%となりました。

 

2021Q2のEPSは1.60ドルと、コンセンサス(1.85ドル)を下回りました。

非GAAP EPSは2.70ドル(前年同期比+42.1%)と、コンセンサス(2.53ドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは74億ドルと、前年度比+21.4%、過去3年間で年率+34.7%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は27.3%と、前年度の21.7%から改善しました。

 

2021Q2の営業キャッシュフローは18億ドル(前年同期比+3.6%)となりました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは40億ドルと、前年度比+65.3%、過去3年間で年率+32.6%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は14.8%と、前年度の8.6%から改善しました。

 

2021Q2のフリーキャッシュフローは11億ドル(前年同期比+10.4%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の非GAAP 益利回り(PERの逆数)は3.1%、フリーキャッシュフロー利回りは2.9%です。

FY2020の配当利回りは1.5%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益(非GAAP)・キャッシュフローベースともに50%程度です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは3.85ドルと、前年度比+10.0%、過去5年間では年率+6.1%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+12.9%となりました。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、6勝、2敗です。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、1勝、7敗です。

非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、8勝です。

 
売上高(ドル)GAAP EPS(ドル)非GAAP EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q37072×1.341.56×1.941.77
2019Q471700.941.43×1.891.84
2020Q16768×1.071.35×1.891.84
2020Q264630.870.93×1.901.65
2020Q369671.321.49×2.151.95
2020Q473701.451.69×2.302.15
2021Q172701.861.822.492.26
2021Q276741.601.85×2.702.53

 

株価上昇率

FY2020の株価上昇率は+23.8%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+20.8%と、S&P500(年率+12.9%)を上回りました。

 

2021Q2の株価上昇率は+3.2%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。

 

株式市場全体の下落局面における株価上昇率(エアリキードはユーロ建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

リンデは、比較的下落相場に強いと言えます。

 

過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.6%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+20%、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+20%、3年目〜5年目+15%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+20%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は333ドルとなります。

・メインシナリオ:333ドル

・アップサイドシナリオ:380ドル

・ダウンサイドシナリオ:250ドル

リンデ(Linde、LIN)への投資について

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は76億ドル(コンセンサス74億ドル)、非GAAP EPSは2.70ドル(コンセンサス2.53ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。

FY2021のガイダンス(引き上げ)は、以下の通りです。

・非GAAP EPS:10.10〜10.30ドル(+23〜25%)

決算発表を受けて、株価は上昇しました。

DCF法による目標株価は333ドルのため、2021年7月末時点の株価307ドルとより高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.8倍(年率+11%)、フリーキャッシュフローマージンが10年後に向けて16%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

産業ガスは自動車や半導体の工場などで使われるため、経済成長に伴い、業績拡大が期待できます。

機会があれば投資を検討したいと思います。

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