過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とインテュイティブ・サージカルへの投資についてコメントします。
会社概要
インテュイティブ・サージカル(Intuitive Surgical、ISRG)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:ヘルスケア機器・サービス
サブ産業グループ:ヘルスケア機器
株式時価総額:1,284億ドル(2021年12月末)
インテュイティブ・サージカルは、アメリカに本拠を置く、ロボット支援による低侵襲手術「ダ・ヴィンチ・サージカルシステム」を手掛ける企業です。
ダ・ヴィンチ・サージカルシステムは、腹腔鏡手術領域においてFDA(米国食品医薬品局)の承認を得た最初の手術支援システムの一つで、1〜2cmの小さな創より内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、医師は3Dモニター画面を見ながらあたかも現場で手を入れているようにロボットアームを操作して手術を行います。
(参考)競合他社(ヘルスケア機器)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
アボットラボラトリーズ(ABT) | 2,489億ドル |
ダナハー(DHR) | 2,351億ドル |
メドトロニック(MDT) | 1,391億ドル |
インテュイティブ・サージカル(ISRG) | 1,284億ドル |
ストライカー(SYK) | 1,009億ドル |
シーメンス・ヘルスケア(SHL.DE) | 865億ドル |
エドワーズライフサイエンス(EW) | 809億ドル |
ベクトン・ディッキンソン(BDX) | 717億ドル |
ボストン・サイエンティフィック(BST) | 605億ドル |
アイデックスラボラトリーズ(IDXX) | 558億ドル |
デクスコム(DXCM) | 520億ドル |
バクスターインターナショナル(BAX) | 430億ドル |
ザルトリウス(SRT.DE) | 424億ドル |
レスメド(RMD) | 380億ドル |
コーニンクレッカ フィリップス(PHG) | 327億ドル |
テルモ(4543.T) | 322億ドル |
ストラウマンHD(STMN.SW) | 346億ドル |
オリンパス(7733.T) | 297億ドル |
シスメックス(6869.T) | 284億ドル |
ジンマー・バイオメットHD(ZBH) | 265億ドル |
ソノバHD(SOON.SW) | 244億ドル |
ノボキュア(NVCR) | 78億ドル |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は57億ドルと、前年度比+31.0%、過去5年間で年率+16.1%となりました。

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は15.5億ドル(前年同期比+16.7%)と、コンセンサス(15.4億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・機器&付属品:8.4億ドル(前年同期比+13%)
・システム:4.7億ドル(前年同期比+28%)
・サービス:2.4億ドル(前年同期比+10%)
地域別の売上高構成比は、アメリカが67%、その他が33%を占めます。

ダ・ヴィンチ・サージカルシステムの出荷台数
2021Q4のダ・ヴィンチ・サージカルシステムの出荷台数は385台(前年同期比+18%)となりました。
(参考)過去3年間の出荷台数の推移

利益の推移
FY2021の営業利益は18億ドルと、前年度比+73.5%、過去5年間で年率+14.0%となりました。
営業利益率は31.9%と、前年度の24.1%から改善しました。

2021Q4の営業利益は4.5億ドル(前年同期比+8.3%)となりました。
FY2021の非GAAP EPSは4.96ドルと、前年度比+45.9%、過去5年間で年率+14.8%となりました。

2021Q4の非GAAP EPSは1.30ドル(前年同期比+9.2%)と、コンセンサス(1.28ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは21億ドルと、前年度比+40.7%、過去5年間で年率+14.0%となりました。
営業キャッシュフローマージンは36.6%と、前年度の34.1%から改善しました。

2021Q4の営業キャッシュフローは5.7億ドル(前年同期比▲9.5%)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは17億ドルと、前年度比+51.8%、過去5年間で年率+10.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージンは30.4%と、前年度の26.2%から改善しました。

2021Q4のフリーキャッシュフローは4.2億ドル(前年同期比▲26.3%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
配当はなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は1.3%、フリーキャッシュフロー利回りは1.3%です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.7%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、11勝です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、11勝です。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 10.9 | 10.3 | ○ | 1.08 | 0.96 | ○ |
2019Q3 | 11.3 | 10.6 | ○ | 1.14 | 1.00 | ○ |
2019Q4 | 12.8 | 12.7 | ○ | 1.16 | 1.13 | ○ |
2020Q1 | 11.0 | 10.1 | ○ | 0.90 | 0.85 | ○ |
2020Q2 | 8.5 | 6.4 | ○ | 0.37 | 0.16 | ○ |
2020Q3 | 10.8 | 9.7 | ○ | 0.92 | 0.68 | ○ |
2020Q4 | 13.3 | 12.5 | ○ | 1.19 | 1.04 | ○ |
2021Q1 | 12.9 | 11.1 | ○ | 1.17 | 0.88 | ○ |
2021Q2 | 14.6 | 12.6 | ○ | 1.31 | 1.02 | ○ |
2021Q3 | 14.0 | 13.8 | ○ | 1.19 | 1.16 | ○ |
2021Q4 | 15.5 | 15.4 | ○ | 1.30 | 1.28 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+31.8%と、S&P500(+26.9%)を上回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+38.5%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。

2021Q4の株価上昇率は+8.4%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。

競合他社(ヘルスケア機器)の株価上昇率(SHL.DE、SRT.DEはユーロ建て、STMN.SW、SOON.SWはスイスフラン建て、4543.T、7733.T、6869.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
インテュイティブ・サージカル(ISRG)の株価上昇率は、2021年の1年間で+32%と、22社平均(+20%)を上回り、22社中第8位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+125%と、22社平均(+136%)を下回り、22社中第10位となりました。

過去10年間(2012年3月から2022年2月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
過去5年間をみると、最高値から10〜20%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が買いのチャンスです。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+20%、3年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は1%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は1%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は1%
メインシナリオの目標株価は321ドルとなります。
・メインシナリオ:321ドル
・アップサイドシナリオ:430ドル
・ダウンサイドシナリオ:203ドル
インテュイティブ・サージカル(Intuitive Surgical、ISRG)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は15.5億ドル(コンセンサス15.4億ドル)、非GAAP EPSは1.30ドル(コンセンサス1.28ドル)と、これまで通りコンセンサスを上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は321ドルのため、2022年2月末時点の株価290ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.0倍(年率+11%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが45%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
足もと株価が大きく下落したことから割高感が薄れました。
超長期で保有したい銘柄の1つです。
投資継続です。




