過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とボーダフォン・グループへの投資についてコメントします。
会社概要
ボーダフォン・グループ(Vodafone Group PLC、VOD.L、VOD)
ホームページ(IR):リンク先
国:ドイツ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:電気通信サービス
サブ産業グループ:無線通信サービス
株式時価総額:477億ドル(2021年6月末)
ボーダフォン・グループは、イギリスに本拠を置く、欧州や中東、アフリカ等で事業を展開する大手電気通信事業者です。
傘下に、南アフリカに本拠を置く通信事業者であるボーダコム(約6割の株式を保有)等があります。
(参考)競合他社(電気通信サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ベライゾン(VZ) | 2,320 |
AT&T(T) | 2,063 |
TモバイルUS(TMUS) | 1,806 |
ソフトバンクグループ(9984.T) | 1,195 |
チャイナ・モバイル(0941.HK) | 1,280 |
ドイツ・テレコム(DTE.GE) | 1,010 |
NTT(9432.T) | 952 |
KDDI(9433.T) | 703 |
ソフトバンク(9434.T) | 614 |
ボーダフォン・グループ(VOD) | 477 |
アメリカ・モービル(AMX) | 497 |
BCE(BCE) | 448 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は438億ポンドと、前年度比▲2.6%、過去5年間で年率▲2.5%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・ドイツ:130億ポンド、前年度比+8%
・イタリア:50億ポンド、前年度比▲9%
・イギリス:62億ポンド、前年度比▲5%
・スペイン:42億ポンド、前年度比▲3%
・その他欧州:55億ポンド、前年度比+0%
・ボーダコム:52億ポンド、前年度比▲6%
・その他:38億ポンド、前年度比▲14%
セグメント別の売上高構成比は、ドイツが30%、イタリアが12%、イギリスが14%、スペインが10%、その他欧州が13%、ボーダコムが12%を占めます。
2020年12月末のモバイル顧客数は2.70億(前年度比+1%)、うち欧州が1.08億(前年度比▲2%)、モーダコムが0.88億(前年度比+4%)、その他が0.74億(前年度比+2%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の調整後EBITDAは144億ポンドと、前年度比▲3.3%、過去5年間で年率+0.3%となりました。
調整後EBITDAマージンは32.8%と、前年度の33.1%とほぼ同水準となりました。
セグメント別の調整後EBITDAマージンは、以下の通りです。
FY2020の非GAAP EPSは0.081ポンドと、前年度比+44.3%、過去5年間で年率+3.3%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは172億ポンドと、前年度比▲0.9%、過去5年間で年率+3.7%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は39.3%と、前年度の38.6%から改善しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは86億ポンドと、前年度比▲12.3%、過去5年間で年率+80.1%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は19.6%と、前年度の21.7%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに消極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は0.3%、フリーキャッシュフロー利回りは21.9%です。
FY2020の配当利回りは6.8%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向(キャッシュフロー)は、約30%です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは0.09ポンドと、前年度比+0.0%、過去5年間で年率▲9.1%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+2.1%となりました。
株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+16.7%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を下回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率▲9.8%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく下回りました。
競合他社(電気通信サービス)の株価上昇率(9984.T、9432.T、9433.T、9434.Tは日本円建て、0941.HKは香港ドル建て、DTE.GEはユーロ建て)は、以下の通りです。
ボーダフォン・グループ(VOD、USドル建て)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲15%と、12社平均(+2%)を下回り、12社中第10位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲48%と、11社平均(+6%)を下回り、11社中第11位となりました。
過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
2015年6月からドローダウン(最大▲60%)が続いています。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
下降トレンドを脱出するまで様子見が良さそうです。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.9%、金利が1%上昇した場合は5.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ポンド)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目▲7%、6年目〜10年目▲5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目▲5%、6年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目▲10%、7年目〜10年目▲5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は1.33ポンドとなります。
ボーダフォン・グループ(Vodafone Group PLC、VOD.L、VOD)への投資について
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は438億ポンド(前年度比▲2.6%)、非GAAP EBITDAは144億ポンド(前年度比▲3.3%)となりました。
DCF法による目標株価は1.33ポンドのため、2021年5月末時点の株価1.28ポンドとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が0.8倍(年率▲2%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが13%まで低下することを想定したので、売上高またはフリーキッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
業績が苦戦していることから株価が絶不調ですが、何かのきっかけで業績回復がみえれば、株価の急騰が期待できます。