過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とトゥイリオへの投資についてコメントします。
会社概要
トゥイリオ(Twilio、TWLO)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:インターネットサービスおよびインフラストラクチャー
株式時価総額:470億ドル(2021年12月末)
トゥイリオは、アメリカに本拠を置く、電話やチャット、SNSなどのコミュニケーションツールをアプリケーションに組み込むことができるAPI(ソフトウェアの機能を共有できる仕組み)を、サブスクリプション形態を中心にクラウド上で提供するCPaaS(Communication Platform as a Service)のトップ企業です。
数行のコードを書くだけで、簡単に電話等の様々な機能が実装でき、低コストでコールセンターの構築も可能です。
(参考)競合他社(インターネットサービスおよびインフラストラクチャー)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
ショッピファイ(SHOP) | 1,724億ドル |
スノーフレーク(SNOW) | 1,038億ドル |
トゥイリオ(TWLO) | 470億ドル |
モンゴDB(MDB) | 353億ドル |
オクタ(OKTA) | 349億ドル |
ベリサイン(VRSN) | 282億ドル |
アカマイ・テクノロジーズ(AKAM) | 190億ドル |
ゴーダディ(GDDY) | 141億ドル |
ウィックス(WIX) | 90億ドル |
GDSホールディングス(GDS) | 88億ドル |
ファストリー(FSLY) | 42億ドル |
キングソフト・クラウドHD(KC) | 38億ドル |
売上高の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は28.4億ドルと、前年度比+61.3%、過去5年間で年率+59.3%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は8.4億ドル(前年同期比+53.8%)と、コンセンサス(7.7億ドル)を上回りました。
2021Q4の1株あたり売上高は前年同期比+36.1%、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は14.0倍となりました。
地域別の売上高構成比は、アメリカが66%、海外が34%を占めます。
顧客数、ネットエクスパンションレートの推移
顧客数は25.6万件(前年同期比+16%)となりました。
ネットエクスパンションレート(既存顧客からの追加売上)は126%と、100%を大きく超えて推移しており、追加的なサービス等により既存顧客の支払いが増加していることを意味します。
利益の推移
2021Q4の非GAAP 営業利益は▲0.3億ドル(前年同期比赤字転落)となりました。
2021Q4の非GAAP EPSは▲0.20ドルと、コンセンサス(▲0.22ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは▲0.6億ドルと、前年度比赤字転落となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は▲2.0%と、前年度の1.9%から悪化しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは▲0.4億ドル(前年同期比赤字転落)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+26.8%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、11勝です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、11勝です。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 2.8 | 2.6 | ○ | 0.03 | 0.02 | ○ |
2019Q3 | 3.0 | 2.9 | ○ | 0.03 | 0.01 | ○ |
2019Q4 | 3.3 | 3.1 | ○ | 0.04 | 0.01 | ○ |
2020Q1 | 3.6 | 3.3 | ○ | 0.06 | -0.11 | ○ |
2020Q2 | 4.0 | 3.7 | ○ | 0.09 | -0.08 | ○ |
2020Q3 | 4.5 | 4.1 | ○ | 0.04 | -0.04 | ○ |
2020Q4 | 5.5 | 4.5 | ○ | 0.04 | -0.07 | ○ |
2021Q1 | 5.9 | 5.3 | ○ | 0.05 | -0.10 | ○ |
2021Q2 | 6.7 | 6.0 | ○ | -0.11 | -0.13 | ○ |
2021Q3 | 7.4 | 6.8 | ○ | 0.01 | -0.14 | ○ |
2021Q4 | 8.4 | 7.7 | ○ | -0.20 | -0.22 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は▲22.2%と、S&P500(+26.9%)を下回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+55.6%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。
2021Q4の株価上昇率は▲17.5%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。
競合他社(インターネットサービスおよびインフラストラクチャー)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
トゥイリオ(TWLO)の株価上昇率は、2021年の1年間で▲22%と、12社平均(▲10%)を下回り、12社中第8位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+195%と、9社平均(+249%)を下回り、9社中第4位となりました。
2016年6月から2022年2月までののドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
足もと50%超のドローダウンです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを9.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目3億ドル、3年目+100%、4年目〜5年目+50%、6年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目3億ドル、3年目+100%、4年目〜10年目+50%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目3億ドル、3年目+100%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は212ドルとなります。
・メインシナリオ:212ドル
・アップサイドシナリオ:379ドル
・ダウンサイドシナリオ:112ドル
トゥイリオ(Twilio、TWLO)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は8.4億ドル(コンセンサス7.7億ドル)、非GAAP EPSは▲0.20ドル(コンセンサス▲0.22ドル)と、これまで通りコンセンサスを上回る実績となりました。
2022Q1のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:8.55〜8.65億ドル(コンセンサス8.04億ドル)
・非GAAP EPS:▲0.26〜▲0.22ドル(コンセンサス▲0.05ドル)
DCF法による目標株価は212ドルのため、2022年2月末時点の株価175ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が8.5倍(年率+24%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
これまで高い増収率だったものの、今後は減速が想定され、利益の黒字化はまだまだ先です。