過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と中国平安保険への投資についてコメントします。
会社概要
ピン・アン・インシュアランス/中国平安保険(Ping An Insurance (Group) Company of China Limited、中国平安保険(集団)股分有限公司、2318.HK)
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国:中国
セクター:金融
産業グループ:保険
サブ産業グループ:生命保険・健康保険
株式時価総額:2,336億ドル(世界ランキング第35位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:730億ドル(2020年12月末、MSCI)
中国平安保険は、中国に本拠を置く、保険や銀行、投資、インターネット金融サービスを手掛ける、世界最大の生命保険会社です。
中国平安保険は、テクノロジーに強みをもち、例えばグッドドクター(平安好医生)という無料アプリでは、オンライン上で問診を受けることができます。
病院に行くべきなのか、また何科に行けばいいのかがわかったり、病院ではなく医師単位で口コミを確認し、診療を予約することができます。
医師単位で予約しているため、日本のように病院で長時間待たされることもなく、診察後はアプリで処方薬を購入・支払いすることができ、配送もしてくれるので、薬局に行く必要もありません。
生命保険・健康保険に占める中国平安保険の浮動株調整後株式時価総額比率は10%です。
なお、中国平安保険は、浮動株比率が低い(大株主は、CPグループ🇹🇭や深圳投資会社等)ため、浮動株ベースで算出される株式指数(インデックス)の時価総額は、通常の株式時価総額と比較して小さくなります。
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は1兆3,214億人民元と、前年度比+3.8%、過去5年間で年率+13.8%となりました。
正味収入保険料は、以下の通りです。
・全体:7,748億ドル、前年度比+0%
・生命保険:5,053億ドル、前年度比▲3%
・損害保険全体:2,692億ドル、前年度比+6%
2020年12月末の個人契約顧客数は2.18億(前年度比+9%)、うち複数の契約(同一部門の複数契約は除く)顧客数は、全体の38.0%を占めます。
投資利息等収入は1,635億人民元(前年度比+13%)、利回り(税引前)は6.2%となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の純利益は1,432億人民元(前年度比▲4.2%)、EPSは8.04人民元と、前年度比▲4.1%、過去5年間で年率+22.0%となりました。
セグメント別(その他等除く)の純利益は、以下の通りです。
・生命保険:950億人民元、前年度比▲7%
・損害保険:161億人民元、前年度比▲29%
・銀行:168億人民元、前年度比+3%
・信託:25億人民元、前年度比▲5%
・証券:30億人民元、前年度比+28%
・その他資産管理:57億人民元、前年度比+23%
・テクノロジー:79億人民元、前年度比+128%
セグメント別の純利益構成比は、生命保険が65%を占めます。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは3.121億人民元と、前年度比+25.1%、過去5年間で年率+18.1%となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
過去2年間は、自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は10.1%と、バリュエーション面で割安感があります。
過去5年間の配当利回りは2.5%前後です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、30%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは2.20人民元と、前年度比+8.9%、過去5年間で年率+32.9%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.4%となりました。
ROEの推移
FY2020のROEは20%となりました。
株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+3.3%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+14.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+17.2%と、S&P500(年率+9.9%)を大きく上回りました。
競合他社(生命保険・健康保険)の株価上昇率(2318.HK、1299.HKは香港ドル建て、6178.T、8750.Tは日本円建て、GWO.TOはカナダドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
中国平安保険(2318.HK)の株価上昇率は、2020年の1年間で+3%と、12社平均(▲9%)を上回り、12社中第2位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+17%と、12社平均(▲10%)を上回り、12社中第2位となりました。
過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から20%程度、次に40%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBRの推移となります。
FY2020のBPSは49.6香港ドルと、前年度比+20.6%となりました。
目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2020年12月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.857と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。
メインシナリオの予想ROEを15%、アップサイドシナリオの予想ROEを20%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを10%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は156香港ドルとなります。
ピン・アン・インシュアランス/中国平安保険(Ping An Insurance (Group) Company of China Limited、中国平安保険(集団)股分有限公司、2318.HK)への投資について
FY2020の売上高は1兆3,214億人民元(前年度比+3.8%)、純利益は1,431億人民元と、増収減益となりました。
目標株価は156香港ドルのため、2021年5月末時点の株価84香港ドルより高い水準です。
テクノロジーに強みがあり、かつ経済成長率が高く市場規模拡大が期待できる中国平安保険は、金融セクターの中では相対的に魅力的です。
他の大手中国株にも言えることではありますが、高い投資効率の割にはバリュエーションが割安です。