過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とチャブ(Chubb)への投資についてコメントします。
会社概要
チャブ(Chubb Limited、CB)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:スイス(MSCI:アメリカ)
セクター:金融
産業グループ:保険
サブ産業グループ:動産保険・損害保険
浮動株調整後株式時価総額:713億ドル(2021年3月末、MSCI)
チャブは、スイスに本拠を置く、世界最大級の損害保険会社です。
ニューヨーク証券取引所に上場しています。
保険に占めるチャブの浮動株調整後株式時価総額比率は16%です。

売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は360億ドルと、前年度比+5.3%、過去5年間で年率+13.6%となりました。

正味収入保険料は、以下の通りです。
・全体:338億ドル、前年度比+5%
・北米商業損害保険:145億ドル、前年度比+8%
・北米個人損害保険:49億ドル、前年度比+3%
・北米農業損害保険:18億ドル、前年度比+2%
・海外:93億ドル、前年度比+1%
・再保険:7億ドル、前年度比+13%
・生命保険:25億ドル、前年度比+5%

セグメント別の正味収入保険料構成比は、北米商業損害保険が43%、海外が28%、北米個人損害保険が15%を占めます。

投資利息等収入は33.8億ドル(前年度比▲1.5%)、平均利回り(税引前)は3.07%となりました。

コンバインド・レシオの推移
コンバインド・レシオ(保険料収入に対する支払保険金等の割合である損害率+保険料収入に対する保険引受に係る経費等の割合である事業費率)の推移は、以下の通りです。

北米商業損害保険のコンバインド・レシオの推移は、以下の通りです。

北米個人損害保険のコンバインド・レシオの推移は、以下の通りです。

北米農業損害保険のコンバインド・レシオの推移は、以下の通りです。

海外のコンバインド・レシオの推移は、以下の通りです。

再保険のコンバインド・レシオの推移は、以下の通りです。

利益の推移
FY2020の純利益は35億ドル(前年度比▲20.7%)、EPSは7.79ドルと、前年度比▲19.8%、過去5年間で年率▲2.0%となりました。

セグメント別の純利益は、以下の通りです。
・北米商業損害保険:29億ドル、前年度比▲26%
・北米個人損害保険:7億ドル、前年度比+3%
・北米農業損害保険:1億ドル、前年度比+64%
・海外:9億ドル、前年度比▲29%
・再保険:4億ドル、前年度比▲5%
・生命保険:4億ドル、前年度比+10%

セグメント別の純利益構成比は、北米商業損害保険が54%、海外が17%、北米個人損害保険が13%を占めます。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは98億ドルと、前年度比+54.3%、過去5年間で年率+20.4%となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は5.1%です。
過去5年間の配当利回りは2.0%前後です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、40%以下となりました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは3.09ドルと、前年度比+3.7%、過去5年間で年率+3.0%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+6.6%となりました。

ROEの推移
FY2020のROEは6.2%となりました。

正味経過保険料およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、正味経過保険料のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、8勝です。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、5勝、3敗です。

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、6勝、2敗です。

株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+2.5%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+4.5%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく下回りました。

競合他社(動産保険・損害保険)の株価上昇率(8766.T、8725.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
チャブ(CB)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲1%と、12社平均(▲5%)を上回り、12社中第3位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+5%と、12社平均(+9%)を下回り、12社中第5位となりました。

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場が大きく下落する局面では、より大きなドローダウンが発生しており、下落相場に弱いと言えます。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBRの推移となります。
FY2020のBPSは132ドルと、前年度比+7.7%、過去5年間で年率+8.0%となりました。

目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2020年12月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.857と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

メインシナリオの予想ROEを8%、アップサイドシナリオの予想ROEを10%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを6%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は176ドルとなります。

チャブ(Chubb Limited、CB)への投資について
FY2020の売上高は360億ドルと、前年度比+5.3%、過去5年間で年率+13.6%となりました。
営業キャッシュフローは98億ドルと、前年度比+54.3%、過去5年間で年率+20.4%となりました。
目標株価は176ドルのため、2021年4月末時点の株価172ドルとほぼ同水準です。
過去5年間のROEは1桁後半と相対的に低いですが、BPSは過去5年間で年率+8.0%となっており、仮にPBRが横ばいに推移した場合、BPSの増加に伴い株価の切り上げは期待できます。
ただし、さらにROEが低下した場合には、PBRが切り下がる可能性は十分あります。

