過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とコストコへの投資についてコメントします。
会社概要
コストコ・ホールセール(Costco Wholesale Corporation、COST)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:生活必需品
産業グループ:食品・生活必需品小売り
サブ産業グループ:大型スーパーマーケット・スーパーマーケット
株式時価総額:1,749億ドル(世界ランキング第71位、2021年6月末)
コストコは、アメリカに本拠を置く、世界最大の会員制倉庫型店(ウェアハウス・クラブ)です。
世界中に800を超える倉庫店があり、会員数は1億人超です。
売上高(地域別)の推移
FY2021(2020年9月-2021年8月期)の売上高は1,959億ドルと、前年度比+17.5%、過去5年間で年率+10.5%となりました。
2021Q4(2021年6−8月期)の売上高は627億ドル(前年同期比+17.4%)と、コンセンサス(615億ドル)を上回りました。
会費は12.3億ドル(前年同期比+11.6%)と、売上高に占める比率は1.97%です。
地域別の売上高は、以下の通りです。
・アメリカ:452億ドル、前年同期比+16.2%
・カナダ:90億ドル、前年同期比+22.2%
・その他:85億ドル、前年同期比+19.3%
地域別の売上高構成比は、アメリカが72%を占めます。
アメリカeコマースの売上高は、前年同期比+11.2%となりました。
利益(地域別)の推移
FY2021の営業利益は67億ドルと、前年度比+23.4%、過去5年間で年率+12.8%となりました。
営業利益率は3.4%と、前年度の3.3%から改善しました。
2021Q4の営業利益は23億ドル(前年同期比+17.9%)、営業利益に占める会費は54%です。
地域別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2021のEPSは11.27ドルと、前年度比+24.9%、過去5年間で年率+16.2%となりました。
2021Q4のEPSは3.76ドル(前年同期比+20.1%)と、コンセンサス(3.58ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは90億ドルと、前年度比+1.1%、過去5年間で年率+22.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は4.6%と、前年度の5.3%から悪化しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは29億ドル(前年同期比▲30.7%)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは54億ドルと、前年度比▲11.3%、過去5年間で年率+52.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は2.7%と、前年度の3.6%から悪化しました。
2021Q4のフリーキャッシュフローは18億ドル(前年同期比▲45.5%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2017、FY2021は特別配当の支払いがありました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点、特別配当除く)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は2.5%、フリーキャッシュフロー利回りは2.7%です。
配当利回り(特別分配除く)は0.7%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向(特別配当除く)
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、40%を下回っています。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは2.98ドルと、前年度比+10.4%、過去5年間で年率+11.9%となりました。
別途、FY2015に5.0ドル、FY2017に7.0ドル、FY2021に10.0ドルの特別配当がありました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
過去5年間の発行済株式数は、ほぼ横ばいです。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、7勝、2敗、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、7勝、2敗、1引き分けです。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 347 | 347 | ▲ | 2.05 | 1.82 | ○ |
2019Q4 | 475 | 477 | × | 2.47 | 2.55 | × |
2020Q1 | 370 | 374 | × | 1.90 | 1.71 | ○ |
2020Q2 | 391 | 383 | ○ | 2.10 | 2.06 | ○ |
2020Q3 | 373 | 367 | ○ | 1.89 | 1.89 | ▲ |
2020Q4 | 534 | 524 | ○ | 3.13 | 2.81 | ○ |
2021Q1 | 432 | 423 | ○ | 2.62 | 2.07 | ○ |
2021Q2 | 448 | 437 | ○ | 2.14 | 2.44 | × |
2021Q3 | 453 | 438 | ○ | 2.75 | 2.34 | ○ |
2021Q4 | 627 | 615 | ○ | 3.76 | 3.58 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+31.0%と、S&P500(+29.2%)を下回りました。
過去5年間(2016年9月から2021年8月末)の株価上昇率は年率+23.0%と、S&P500(年率+15.8%)を上回りました。
2021Q4の株価上昇率は+20.4%と、S&P500(+7.6%)を上回りました。
株式市場全体の下落局面における株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
コストコは、下落相場に比較的強いと言えます。

過去10年間(2011年10月から2021年9月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜7年目+10%、8年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は465ドルとなります。
・メインシナリオ:465ドル
・アップサイドシナリオ:517ドル
・ダウンサイドシナリオ:348ドル
コストコ・ホールセール(Costco Wholesale Corporation、COST)への投資について
2021Q4(2021年5−8月期)の売上高は627億ドル(コンセンサス615億ドル)、EPSは3.76ドル(コンセンサス3.58ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は465ドルのため、2021年9月末時点の株価449ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.1倍(年率+7.5%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが3%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。


