セブン&アイHD(3382)決算分析と目標株価 国内市場は飽和状態だが、北米市場のコンビニ事業拡大が今後の成長戦略

セブン&アイ生活必需品流通・小売り

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とセブン&アイへの投資についてコメントします。

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会社概要

セブン&アイ・ホールディングス(Seven & I Holdings Co., Ltd.、3382.T)

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国:日本

セクター:生活必需品

産業グループ:食品・生活必需品小売り

サブ産業グループ:食品小売り

株式時価総額:3.2兆円(日本ランキング第41位、2020年12月末)

浮動株調整後株式時価総額:304億ドル(2021年3月末、MSCI)

セブン&アイは、日本に本拠を置く、コンビニエンスストア(セブンイレブン等)、スーパーストア(イトーヨーカ堂、ヨークベニマル等)、百貨店(そごう・西武等)、金融関連(セブン銀行等)、専門店(赤ちゃん本舗等)等の事業を展開する企業を傘下に持つ持株会社です。

2021年5月に、マラソン・ペトロリアムから、ガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストアである業界第3位のスピードウェイ(Speedway)の株式を210億ドルで完全取得したことを発表しました。

生活必需品セクターの食品・生活必需品小売りで第7位の浮動株調整後株式時価総額で、食品小売りに占めるセブン&アイの浮動株調整後株式時価総額比率は10%です。

(参考)競合他社(食品小売り)の株式時価総額

営業収益(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年3月-2021年2月期)の営業収益は5兆7,667億円と、前年度比▲13.2%、過去5年間で年率▲0.9%となりました。

 

セグメント別の営業収益は、以下の通りです。

・国内コンビニエンスストア:9,208億円、前年度比▲5%

・海外コンビニエンスストア:2兆1,914億円、前年度比▲20%

・スーパーストア:1兆8,109億円、前年度比▲2%

・百貨店:4,252億円、前年度比▲26%

・金融関連:1,990億円、前年度比▲8%

・専門店:2,638億円、前年度比▲22%

・その他:220億円、前年度比▲13%

 

セグメント別の営業収益構成比は、海外コンビニエンスストアが38%、スーパーストアが31%、国内コンビニエンスストアが16%を占めます。

 

国内コンビニエンスストアにおいて、既存店売上伸び率は▲2.4%、うち客数は▲9.9%、客単価は+8.4%となりました。

 

海外コンビニエンスストアにおいて、直営店商品等営業収益は4,598億円(+2%)、ガソリン営業収益は1兆4,528億円(▲27%)、加盟店等営業収益は2,788億円(▲5%)となりました。

 

地域別の営業収益構成比は、日本が60%、北米が39%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は3,663億円と、前年度比▲13.7%、過去5年間で年率+0.8%となりました。

営業利益率は6.4%と、前年度の6.4%とほぼ同水準となりました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは203円と、前年度比▲17.8%、過去5年間で年率+13.2%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは5,400億円と、前年度比▲6.4%、過去5年間で年率+2.0%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/営業収益)は9.4%と、前年度の8.7%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは1,902億円と、前年度比▲19.9%、過去5年間で年率+6.1%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/営業収益)は3.3%と、前年度の3.6%から悪化しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いには消極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は5.0%、フリーキャッシュフロー利回りは5.3%です。

FY2020の配当利回りは2.4%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去2年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、50%を下回りました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは98.5円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+3.0%となりました。

FY2021のDPSは98.5円(前年度比+0.0%)の予定です。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.0%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは概ね10%程度です。

 

BPSとPBRの推移

以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。

FY2020のBPSは3,023円と、前年度比+2.6%、過去5年間で年率+2.4%となりました。

FY2020のPBRは1.3倍です。

 

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2020年12月末、MSCI)の散布図となります。

ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.857と、説明力は非常に高い)。

金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

ROE8%であれば、PBRは1.3倍程度となり、ROEとPBRの関係では適正な株価と言えます。

 

株価上昇率

過去5年間(2016年3月から2021年2月末)の株価上昇率は年率▲2.5%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(年率+12.1%)を大きく下回りました。

 

競合他社(食品・生活必需品小売り)の株価上昇率(Woolworthはオーストラリアドル建て、Ahold Delhaizeはユーロ建て、Seven & i、Aeonは日本円建て、Alimentation Coucheはカナダドル建て、Tescoはポンド建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。

セブン&アイ(Seven & i)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲9%と、11社平均(+5%)を下回り、11社中第8位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では▲22%と、11社平均(+29%)を下回り、11社中第10位となりました。

 

過去10年間(2011年5月から2021年4月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

2015年7月末の最高値から最大40%超下落した後は、現在株価は回復中です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.6%、金利が1%上昇した場合は5.5%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜3年目+5%、4年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は4,602円となります。

 

セブン&アイ・ホールディングス(Seven & I Holdings Co., Ltd.、3382.T)への投資について

FY2020(2020年3月-2021年2月期)の営業収益は5兆7,667億円(前年度比▲13.2%)、EPSは203円(前年度比▲17.8%)と、減収減益となりました。

Speedway買収の不透明から、FY2021のガイダンスは延期されました。

DCF法による目標株価は4,602円のため、2021年4月末時点の株価4,699円とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の営業収益が1.5倍(年率+4%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである3.3%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

国内のコンビニ・スーパー・百貨店は、人口減少等により大きな市場拡大は期待できないことから、海外事業に注力する戦略は妥当と言えます。

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