過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とドキュサインへの投資についてコメントします。
会社概要
ドキュサイン(Docusign、DOCU)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:アプリケーション・ソフトウェア
株式時価総額:301億ドル(2021年12月末)
ドキュサインは、アメリカに本拠を置く、デジタル署名に加え、契約書を交わす全プロセスの自動化をサポートする「ドキュサイン・アグリーメント・クラウド」を、サブスクリプション形態を中心にクラウド上で提供する、電子署名市場世界シェアトップ企業です。
(参考)競合他社(情報処理・外注サービス)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
アドビ(ADBE) | 2,698億ドル |
セールスフォース(CRM) | 2,503億ドル |
イントゥイット(INTU) | 1,821億ドル |
SAP(SAP) | 1,670億ドル |
アトラシアン(TEAM) | 964億ドル |
ダッソー・システムズ(DSY.PA) | 779億ドル |
ワークデイ(WDAY) | 683億ドル |
オートデスク(ADSK) | 619億ドル |
シノプシス(SNPS) | 565億ドル |
データドッグ(DDOG) | 556億ドル |
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM) | 548億ドル |
ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS) | 516億ドル |
トレードデスク(TTD) | 440億ドル |
ユニティ・ソフトウェア(U) | 418億ドル |
コンステレーション・ソフトウェア(CSU.TO) | 394億ドル |
パランティアテクノロジーズ(PLTR) | 365億ドル |
アンシス(ANSS) | 350億ドル |
ハブスポット(HUBS) | 311億ドル |
ドキュサイン(DOCU) | 301億ドル |
ナイス(NICE) | 192億ドル |
スプランク(SPLK) | 184億ドル |
リングセントラル(RNG) | 174億ドル |
売上高(セグメント別)の推移
FY2022(2021年2月-2022年1月期)の売上高は21.1億ドルと、前年度比+45.0%、過去5年間で年率+40.8%となりました。
2023Q1(2022年2-4月期)の売上高は5.9億ドル(前年同期比+25.5%)と、コンセンサス(5.8億ドル)を上回りました。
2023Q1の1株あたり売上高は前年同期比+22.2%、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は6.9倍となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サブスクリプション:5.7億ドル、前年同期比+26%
・その他:0.2億ドル、前年同期比+13%
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプションが97%を占めます。
顧客数、請求額、ネットリテンションレートの推移
顧客数は124万件(前年同期比+26%)となりました。
年間契約金額30万ドル超の顧客数は886件(前年同期比+32%)です。
請求額(会計上未認識だが顧客と契約済みの案件も含めた売上高)は6.1億ドル(前年同期比+16%)となりました。
ネットリテンションレート(既存顧客の売上継続率)は114%と、100%を超えて推移しており、追加的なサービス等により既存顧客の支払いが増加していることを意味します。
利益の推移
2023Q1の非GAAP 営業利益は1.0億ドル(前年同期比+9.6%)となりました。
2023Q1の非GAAP EPSは0.38ドル(前年同期比▲13.6%)と、コンセンサス(0.46ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2022の営業キャッシュフローは5.1億ドルと、前年度比+70.6%、過去3年間で年率+88.1%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は24.0%と、前年度の20.4%から改善しました。
2023Q1の営業キャッシュフローは2.0億ドル(前年同期比+44.8%)となりました。
FY2022のフリーキャッシュフローは4.5億ドルと、前年度比+107%、過去3年間で年率+114%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は21.1%と、前年度の14.8%から改善しました。
2023Q1のフリーキャッシュフローは1.7億ドル(前年同期比+41.9%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
配当、自社株買いの実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去3年間で年率+27.4%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、12勝です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、9勝、2敗、1引き分けです。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q2 | 2.4 | 2.2 | ○ | 0.01 | 0.04 | × |
2020Q3 | 2.5 | 2.4 | ○ | 0.11 | 0.04 | ○ |
2020Q4 | 2.7 | 2.7 | ○ | 0.12 | 0.05 | ○ |
2021Q1 | 3.0 | 2.8 | ○ | 0.12 | 0.10 | ○ |
2021Q2 | 3.4 | 3.2 | ○ | 0.17 | 0.08 | ○ |
2021Q3 | 3.8 | 3.6 | ○ | 0.22 | 0.13 | ○ |
2021Q4 | 4.3 | 4.1 | ○ | 0.37 | 0.22 | ○ |
2022Q1 | 4.7 | 4.4 | ○ | 0.44 | 0.28 | ○ |
2022Q2 | 5.1 | 4.9 | ○ | 0.47 | 0.40 | ○ |
2022Q3 | 5.5 | 5.3 | ○ | 0.58 | 0.46 | ○ |
2022Q4 | 5.8 | 5.6 | ○ | 0.48 | 0.48 | ▲ |
2023Q1 | 5.9 | 5.8 | ○ | 0.38 | 0.46 | × |
株価上昇率
FY2022(2021年2月から2022年1月末)の株価上昇率は▲46.0%と、S&P500(+21.6%)を下回りました。
2023Q1の株価上昇率は▲35.6%と、S&P500(▲8.5%)を下回りました。
競合他社(アプリケーション・ソフトウェア)の株価上昇率(DSY.PAはユーロ建て、CSU.TOはカナダドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ドキュサイン(DOCU)の株価上昇率は、2021年の1年間で▲31%と、22社平均(+16%)を下回り、22社中第19位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+280%と、18社平均(+217%)を上回り、18社中第6位となりました。
2018年4月から2022年6月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを8.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜5年目+20%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+30%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+20%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は95ドルとなります。
・メインシナリオ:95ドル
・アップサイドシナリオ:155ドル
・ダウンサイドシナリオ:54ドル
ドキュサイン(Docusign、DOCU)への投資について
2023Q1の売上高は5.9億ドルと、コンセンサス(5.8億ドル)を上回りましたが、非GAAP EPSは0.38ドルと、コンセンサス(0.46ドル)を下回る実績となりました。
FY2023のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:24.70億ドル〜24.82億ドル
DCF法による目標株価は95ドルのため、2022年6月末時点の株価57ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.0倍(年率+12%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%まで上昇することを想定したので、フリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
成長性は鈍化していますが、コロナが収束したとしても、デジタル署名は利便性が高いことから、長期的にみて市場拡大が期待できます。
株価急落により、割高感が大きく解消されました。