過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とスポティファイ・テクノロジーへの投資についてコメントします。
会社概要
スポティファイ・テクノロジー(Spotify Technology SA、SPOT)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:スウェーデン
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:映画・娯楽
株式時価総額:526億ドル(2021年6月末)
スポティファイ・テクノロジーは、スウェーデンに本拠を置く、音楽ストリーミングサービスを提供する企業です。
無料会員(広告付き)と有料会員のプランを設けており、フリーとプレミアムを組み合わせた造語であるフリーミアム(Freemium)戦略で成功している企業として有名です。
利用者の4割超を占める有料会員からのサブスクリプション収入が売上高全体の約9割を占めます。
(参考)競合他社(映画・娯楽)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ウォルト・ディズニー(DIS) | 3,194 |
ネットフリックス(NFLX) | 2,342 |
ロク(ROKU) | 608 |
スポティファイ・テクノロジー(SPOT) | 526 |
ヴィヴェンディ(VIV.PA) | 356 |
テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME) | 262 |
ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV) | 192 |
ワーナー・ミュージック・グループ(WMG) | 185 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は78.8億ユーロと、前年度比+16.5%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は23.3億ユーロ(前年同期比+23.4%)と、コンセンサス(22.9億ユーロ)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サブスクリプション収入:20.6億ユーロ、前年同期比+17%
・広告収入:2.8億ユーロ、前年同期比+110%
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプション収入が88%、広告収入が12%を占めます。
月間アクティブユーザー数は3.65億人(前年同期比+22%)、うち広告付き無料プランの月間アクティブユーザー数は2.10億人(前年同期比+24%)となりました。
有料会員数は1.65億人(前年同期比+20%)となりました。
ARPU(1有料会員あたり平均売上高)は4.29ユーロ(前年同期比▲3%)となりました。
利益の推移
FY2020の粗利益は20.2億ユーロと、前年度比+17.0%となりました。
粗利益率は25.6%と、前年度の25.5%とほぼ同水準となりました。
2021Q2の粗利益は6.6億ユーロ(前年同期比+38.4%)となりました。
FY2020のEPSは▲3.10ユーロと、前年度比赤字幅拡大となりました。
2021Q2のEPSは▲0.19ユーロ(前年同期比赤字幅縮小)と、コンセンサス(▲0.41ユーロ)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは2.6億ユーロと、前年度比▲54.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は3.3%と、前年度の8.5%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは0.5億ユーロ(前年同期比+38.5%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは1.8億ユーロと、前年度比▲58.7%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は2.3%と、前年度の6.5%から悪化しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは0.3億ユーロ(前年同期比+36.0%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、前年度比+3.7%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、3勝、4敗、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、4勝、4敗です。
売上高(ユーロ) | GAAP EPS(ユーロ) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 17.3 | 17.2 | ○ | 0.36 | -0.29 | ○ |
2019Q4 | 18.6 | 18.9 | × | -1.14 | -0.36 | × |
2020Q1 | 18.5 | 18.6 | × | -0.20 | -0.48 | ○ |
2020Q2 | 18.9 | 19.3 | × | -1.91 | -0.36 | × |
2020Q3 | 19.8 | 20.0 | × | -0.58 | -0.55 | × |
2020Q4 | 21.7 | 21.5 | ○ | -0.66 | -0.55 | × |
2021Q1 | 21.5 | 21.5 | ▲ | -0.25 | -0.43 | ○ |
2021Q2 | 23.3 | 22.9 | ○ | -0.19 | -0.41 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+110.4%と、世界株式を投資対象とするVT(+14.3%)を上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+2.9%と、VT(+6.5%)を下回りました。
競合他社(映画・娯楽)の株価上昇率(VIV.PAはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
スポティファイ(SPOT)の株価上昇率は、2020年の1年間で+110%と、7社平均(+60%)を上回り、7社中第2位となりました。

2018年4月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを7.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+60%、2年目〜4年目+50%、5年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+60%、2年目〜8年目+50%、9年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+60%、2年目〜4年目+50%、5年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は261ドルとなります。
・メインシナリオ:261ドル
・アップサイドシナリオ:387ドル
・ダウンサイドシナリオ:175ドル
スポティファイ・テクノロジー(Spotify Technology SA、SPOT)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は23.3億ユーロ(コンセンサス22.9億ユーロ)、EPSは▲0.19ユーロ(コンセンサス▲0.41ユーロ)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
2021Q3のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:23.1〜25.1億ユーロ
2021Q4のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:24.8〜26.8億ユーロ
DCF法による目標株価は261ドルのため、2021年8月末時点の株価234ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が4.0倍(年率+15%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
音楽ストリーミングサービスでは勝ち組企業で、ポッドキャストに注力するなど徐々に業績は拡大しており、ネットフリックスのようになれるか注目しています。
投資を検討したいと思います。

